魚卵は魚の種類、そしてその捕獲方法によって異なる。もっとも多く採取されているのが、キャビア、イクラ、そして一つのグループとして分けられている目の細かい網で採る魚の魚卵である。
キャビア
キャビアを食べる文化は少なくとも800年前から続いている。ジョチ・ウルス第2代ハン、バトゥの書記官は、1240年にこのおいしい食べ物について書いている。また15世紀には、ヴォルガのキャビアはモスクワの公たちの食卓に乗せられるようになった。そのキャビアは、オオチョウザメ、チョウザメ、ホシチョウザメ、コチョウザメなど、チョウザメ属の魚卵であった。
キャビアは高級食で、冷やして、たとえばシャンパンなどとともに、ゆっくりと味わうとよい。キャビアはスプーンで口に運ぶか、トーストやタルトレット、またはキュウリ、ゆで卵に乗せたりしていただく。ブリヌィ(ロシアのパンケーキ)に乗せたり巻いたりするのも伝統的な食べ方。
1. オオチョウザメの魚卵
オオチョウザメの魚卵は美食愛好家の間で人気があり、もっとも高級で、味で見てももっとも価値のある魚卵の一つ。オオチョウザメの魚卵は、軽くて、ナッツのような味がし、金色がかった色がする。魚の年齢が高ければ高いほど、魚卵がおいしいとされる。魚卵の粒の大きさはおよそ3.5 ㍉。
2. チョウザメの魚卵
チョウザメの魚卵はオオチョウザメの魚卵よりもサイズが小さく、粒の大きさは最大で2.5㍉。色は黄色っぽい茶色で、海藻の香りがする。特徴は、塩味が薄いことで、それを優位性だとする人もいる。一風変わった海の風味を残すため、オオチョウザメのものよりも薄く希釈した塩水を使う。
3. ホシチョウザメの魚卵
ホシチョウザメの魚卵はかなり小さめで、粒のサイズは直径1㍉しかないが、オオチョウザメの魚卵よりも弾力がある。キャビアの中ではそれほどおいしくないとされているが、脂肪分の質が高いことで知られる。
4. コチョウザメの魚卵
コチョウザメの魚卵の粒の大きさは直径2.5㍉。色は黒か濃いグレーで、皮が薄い。コチョウザメの魚卵も海の味がするが、オオチョウザメの魚卵よりも柔らかい。食べたあと、魚の後味がある。コチョウザメの魚卵はオオチョウザメやチョウザメの魚卵よりも安いため、一見の価値がある。
5. ダウリアチョウザメの魚卵
ダウリアチョウザメの魚卵は、オオチョウザメとチョウザメの掛け合わせであるダウリアチョウザメから採れる。チョウザメ属の中でもっとも大きな魚の一つで、その重量は1000キロにも達する。ダウリアチョウザメの魚卵の味は、オオチョウザメのように、クリームをつけたナッツのようである。粒の大きさは2〜3㍉。色は濃いグレーで、ときに緑がかったものもある。
イクラ
赤いイクラは、カラフトマス、シロザケ、ベニザケなどのサケ科の魚卵である。キャビアに比べるとそれほど高価ではなく、より人気がある。ロシアの中央部でイクラがよく食べられるようになったのは19世紀に入ってからである。というのも、イクラが採れる極東からそれを運んでくるのはかなり難しかったからである。
イクラはロシアのお祝いのテーブルに欠かせないものである。オープンサンドやトーストに乗せたり、タルトレットに入れてもおいしい。またサラダやペリメニを飾ったり、ブリヌィに乗せたり、卵に詰めたりする(レシピはこちらから)。瓶詰めのイクラは、お呼ばれのときの手土産にもピッタリだ。
6. カラフトマスの魚卵
ロシアの店でもっともよく売られている魚卵。カラフトマスは繁殖能力が高いことから、新年のお祝いの食卓ではバターを塗ったオープンサンドに乗せたり、サラダに添えたりする。カラフトマスの魚卵は鮮やかなオレンジ色をしていて、心地よい魚介の味がする。
7. シロザケの魚卵
シロザケの魚卵の粒は大きくて、強度があるため、形が崩れない。味はカラフトマスの魚卵に似ているが、若干の苦味があるのが特徴。
8. ベニザケの魚卵
ベニザケの魚卵は粒が小さく、暗い赤色で、皮は柔らかい。味は少し苦味があり、特徴的な魚の香りがするため、あまり好まないという人もいる。ただベニザケは5月末から―つまりサケ科の魚の中では最初に産卵するため、夏の最初の月には買うことができる。
9. ギンザケの魚卵
この魚卵の特徴は濃いボルドー色をしていて、少々苦味がある点である。ギンザケの魚卵はビタミンDや葉酸、カルシウム、リン、脂肪酸、鉄分、ヨードなどを多く含んでいることから、赤いイクラの中ではもっとも体によいとされている。
10. マスの魚卵
鮮やかな赤色をしたマスの魚卵は、塩辛く、少し苦味があるため、オープンサンドには向かない。しかし、クリームチーズ、生クリーム、サワークリームと相性がよい。またかなりどろっとしているので、巻き寿司などにも使われる。
その他
目の細かい網で捕まえた魚の魚卵には、サケ科やチョウザメ属以外のすべての魚が含まれる。目の細かい網で採る魚といえば、ノーザンパイク、ブリーム、スケトウダラなどであるが、これらの魚の魚卵が一つのグループとして分けられている。
このグループの魚卵はイクラと同様、卵やキュウリ、さまざまな水産品とともに前菜とされている。スケトウダラやタイセイヨウダラの魚卵は、サラダやパスタのソースにも加えられている。もちろん、パンにバターと一緒に塗ったり、またオラディ、ブリヌィなど、ロシアのパンケーキの生地に入れる人もいる。ぜひ試してみて。
11. ノーザンパイクの魚卵
ノーザンパイクの魚卵は黄色または琥珀色をしている。粒は小さく、直径は3㍉以下である。現在は、あまり食されていないが、イワン雷帝の時代には、非常に高く評価された。タンパク質が豊富で、脂肪もカロリーも低い。
12. スケトウダラの魚卵
薄いベージュ色または少しピンクがかった色をした魚卵。粒が小さくて、ペースト状に近いもの。魚の香りが強く、やや苦味があるため、オープンサンドにする場合は、香りのある黒パンを選ぶとよい。
13. タイセイヨウダラの魚卵
タイセイヨウダラの魚卵は、味では他の高級な魚卵に劣っていない。色は桃色で、粒はまったく小さい(1.5ミリ)。タイセイヨウダラの魚卵は魚の匂いはしないため、複雑な料理にも使われる。
14. ブリームの魚卵
ブリームの魚卵は黄金色で、粒は小さくパラパラしている。生でまた塩漬けで食べられたり、小麦粉をつけて焼かれたり、ブリヌィの生地に混ぜ合わされたりしている。
15. トビウオの魚卵
やさしい甘さのあるトビウオの魚卵(トビコ)はロシアでは日本食の広まりとともに人気を博するようになった。寿司や巻き寿司に加えられることが多い。色は明るいオレンジ色で、装飾にもよく使われる。