「シチーとカーシャ」はロシアの食卓に上る主な料理であった。最近のシチーは、ビーフブイヨンにジャガイモ、キャベツ、ニンジン、タマネギ、牛肉、トマトペーストを入れて作るが、シチーの種類は10以上ある。伝統的なロシアのスープの一つに、「ヴァルラームのシチー」というものがある。この名前はロシア北部にあるカレリア共和国にある、修道士たちが住んだヴァルラーム島にちなんだものである。このシチーは「キノコのシチー」とも呼ばれている。というのも、これは精進料理であり、肉を入れずに作られるからである。また「ヴァルラーム・シチー」にはジャガイモとトマトは使われない。このシチーが考案されたのは400年前のことで、当時ロシアにはこうした野菜はなかったからである。
このキノコのシチーについては、レフ・トルストイの最後の手記にも記されている。1910年の秋、トルストイはヤースナヤ・ポリャーナの領地を出て、男子修道院に向かった。よく知られているように、修道院に入ることはなかったが、修道院付属のホテルで、「キャベツとキノコ、ひまわり油のかかった根菜の入った」シチーとそばの実のカーシャ(粥)で昼食をとった。
ヴァルラームのシチーは季節によって、新鮮なキノコ、乾燥キノコ、塩漬けのキノコを使い分ける。レストラン「マトリョーシカ」のシェフ、ウラジスラフ・ピスクノフは、酸味のあるキャベツと乾燥させたヤマドリタケの出汁は中でももっともよく合う組み合わせだと話している。冷暗所で一晩置いておけば、最高においしいものになること間違いない。
ウラジスラフ・ピスクノフが作るヴァルラーム・シチーのレシピ
1. 鉄製の器におろしたニンジンを加えた酢漬けのキャベツを入れ、水、塩を加え蓋をしてオーブンに入れ(鉄製の器がなければ、鍋に入れ、弱火にかけ)、2〜3時間煮る。水が沸騰しても、キャベツがまだ十分柔らかくなっていなければ、熱湯を足す。最低限の量の水でキャベツが完全に柔らかくなるようにする。こうすることで、キャベツは柔らかくなり、余分な酸味を取り除いてくれる。
2. キノコはきれいにして、冷水に10〜15分浸す。水を捨てて、鍋に入れる。冷水を注ぎ、塩を加え、中火にかけ、20分煮る。キノコをざるにあけ、出汁は器に注ぐ。キノコは軽く水を切る。
3. スープに砂が入らないよう、出汁をガーゼで濾す。出汁は鉄製の器または鍋に注ぐ。
4. キノコは小さく刻む。タマネギはみじん切りにし、植物油を引いたフライパンで炒める。キノコを加え、キノコが茶色く色づくまで中火で炒める。(さらに伝統的なシチーにしたい場合は、タマネギとキノコを炒める工程は飛ばしても良い。その場合、タマネギはキャベツを煮るときに投入する)。
5. 炒めたキノコを鉄製の器、またはフライパンに入れる。
6. ローリエの葉、乾燥ディル、ブイヨンに溶かした小麦粉、潰したニンニクを加える。
7. スープを入れた鉄製の器(または耐熱器)をオーブンに入れ、120〜150℃で2時間焼く。そばの実のカーシャを散らして盛り付ける。
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