米国のドナルド・トランプ大統領が中国の習近平国家主席とG20大阪サミットで握手をする。2019年6月29日。
AP7月末、モスクワに良い報せが届いた。中国がロシア産大豆の輸入に課していた規制をすべて解除したのだ。これはロシア政府にとって「大きな突破口」となる決定だった。中国政府は長年ロシア産農産物に対して規制をかけてきたからだ。
メディアはすぐさまこの決定を米中間の貿易戦争と結び付けた。米国はここ数年間、主要な対中国大豆輸出国の一つだったからだ。国際貿易センターによると、米中間の大豆取引額は2014年に163億ドルに達したが、昨年には70億ドルにまで減少した。なお対中国大豆輸出国として不動の一位を守っているのはブラジルである(288億ドル)。ロシアが2018年に中国に輸出した大豆の取引額は2億5740万ドルに過ぎなかった。
しかし、ロシアの前に開かれた新たなチャンスと米中貿易戦争とを結び付けることは正しいのだろうか。また、ロシアは米中両国の経済面での睨み合いから本当に利益を得ることができるのだろうか。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席。2019年6月5日。
Reuters米中貿易戦争がロシアの輸出関連企業に(例えば豚肉の分野で)新たなチャンスをもたらすと考える人もいるかもしれない。だが、実際のところ中国の要求は非常に高く、ロシアの全豚肉産業部門がこの要求を満たすことだけに焦点を絞って取り組んでも、目標は達成できないだろう──こう話すのはスコルコヴォ・ビジネススクール中国学科のオレグ・レムィガ主任だ。
「大豆輸出についてもきっと状況は同じだ。中国の規制当局が打ち出した方針によってロシアから中国への農産物の輸出額は目に見えて伸びているが、このプロセスは米中貿易戦争が始まる遥か以前から始まっていた」とレムィガ氏は説明する。むしろこの成長は相互の協力関係を促進しようという中露間の努力の結果だというのが同氏の考えだ。
報道によれば、ロシア当局は米中貿易戦争がロシア経済にとって望ましい展開ではないと強調している。「我が国と中国との取引額は昨年1080億ドルに達したが、我々はこの数値を2000億ドルまで引き上げるつもりだ。これはいかなる制約や貿易戦争とも関わりのないことだ」とロシアのアントン・シルアノフ財相は今年6月に話している。「貿易戦争が起きていようといまいと、我々は我が国の製品を推進する必要がある。」
中国の専門家も同様の見解を示している。中露両国は二国間協力の向上に精力的に取り組んでいるが、これはそれが双方にとって利益となるからであり、第三国との膠着状態が理由ではない──中国社会科学院ロシア東欧中央アジア研究所ロシア外交室副主任の李勇慧氏はこう主張する。
中国に対する米国の好ましくない態度が華為(ファーウェイ)のような中国企業をロシア市場でより活発化させるだろうという観測も誤りだろう。「例えば、華為や小米(シャオミ)はこのところロシアで活動しており、華為は公正なマーケティングと適応力のある発展戦略によってロシアでナンバーワンのスマートフォン・メーカーとなっている」とレムィガ氏は言う。同氏によれば、ロシア市場で華為が成功しているのは主に競争価格や十分な品質といった経済的要因によるものであって、米中間の貿易戦争によるものではないという。
さらにレムィガ氏は、両国の経済的な行き詰まりは実際にはロシアにおける華為の活動を阻害しかねないと考えている。「グーグルは華為のスマートフォンにアンドロイドのOSを搭載しないことを決めたが、これは華為の販売不振につながるかもしれない。多くの顧客がアンドロイドに慣れているからだ」とこの専門家は説明する。「結局戦争というものは、どのような形であれ、経済やビジネスにチャンスよりも多くの問題をもたらすのである。」
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