英EU離脱で見えた露経済の強み

ロンドン、6月24日=

ロンドン、6月24日=

Rex/Fotodom撮影
 「Brexit(イギリスのEU離脱)」は、ロシア経済が世界の混乱に巻き込まれにくいという側面をあらわにした。ロシア市場からの大規模な資本流出および対ロシア経済制裁によって、ロシア市場は「投資家の楽園」になった。

 イギリスで欧州連合(EU)残留・離脱を問う国民投票の開票が行われた6月24日以降の世界市場でのできごとは、ロシアが世界の混乱に巻き込まれにくい数少ない国の一国であることを示した。「世界で悪いことばかり起きているのに、ロシアでさほど悪いことが起きていないという状況は珍しい。ロシア国債は下落せず、株式も下限に近いとはいえ、通常通り。ルーブルも確固不動に見える」と、ロシアの投資会社「ルネッサンス・キャピタル」のチーフトレーダー、アレクセイ・バチュリン氏は分析レポートに書いている。他の新興市場とともに、ロシアは新たな「投資家の楽園」になったと、アメリカ系金融情報通信社「ブルームバーグ」は書いている。

 

嵐の中の楽園

 イギリス系経済紙「フィナンシャル・タイムズ」によると、離脱派が勝利した後の2営業日で世界の株式市場は3兆ドル(約300兆円)を失い、うち2.8兆ドル(約280兆円)は先進国の株式市場だったという。S&Pグローバル総合指数は投票後、6.9%下落した。2日間としては、2008年11月の金融危機の暴落以来、最大の下げ幅であった。「S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス」によると、この結果は観測史上12番目に大きな暴落であった。S&P500種は2日間で1兆ドル(約100兆円)下落。金額ベースで史上3番目の損失である。

 ちなみに、ロシアでは離脱決着後の24日、モスクワ証券取引所はMICEX指数3.28%マイナス(~1856.3ポイント)で寄り付いたが、終わりに向けて部分的に戻り、28日からは上昇を始めた(主要な立会い終了までに0.84%プラス、~1857.23ポイント)。28日はロンドンの証券取引所でもロシア関連株が上昇。ルクオイルは1.25%プラス、ノヴァテクは1.27%プラスだった。同様の状況は債券市場でもあった。28日のモスクワ証券取引所の国債指数は0.2%、社債は0.08%伸びた。

 対ロシア経済制裁で孤立したロシアは、欧米の銀行への依存を減らし、それに順応したと、イギリス系「アシュモア・グループ」株式調査下部組織のヤン・デン代表は、ロシア市場の安定性を説明した。「ロシア連邦貯蓄銀行(ズベルバンク)」の子会社「ズベルバンクCIB」のアナリストも同様の考えである。「24日の市場の振れが何かを示しているとしたら、何よりもウクライナ問題が発生した後にロシア市場が得た一定の保護特性であろう」と、リポートに記されている。主に、制裁後に起こった大規模な資本流出、また対外債務への依存縮小によって、そのような状態になった。ロシアの資産に対する投資家の関心を制限した制裁は、現在の乱流からロシアをある程度救ったと、ズベルバンクCIBのアナリストは書いている。イギリスのEU離脱の影響はロシアにとってプラスにさえなるかもしれないという。例えば、対ロシア経済制裁についてのEU諸国の立場が崩れ、緩和される可能性もある。

 

より少ないリスク

 専門家はまた、ロシアの債券価格の上昇の理由として、イギリスとヨーロッパの資産からより確実な資産へと移し替えようとしている投資家からの、注目の高まりをあげる。「イギリスの国民投票の結果に起因する不安は、27日にもイギリスおよびリスクの高い資産の売りにつながった。投資家は保護された資産に向いた」と、ズベルバンクCIBのアナリスト、アレクサンドル・ゴルィンスキー氏は28日にリポートに書いた。特に、投資家はロシアのユーロ債の取り引きを積極的に行っていたという。

 「現状で先進市場は投資家にとって、より高いリスクのある市場と見なされる可能性がある。ここ数年、著しい成長を示していたため。投資家には、ヨーロッパにさらなる激震が走った場合、大きな下落を示す可能性があるという懸念がある」と、ロシアの投資会社「アトン」のトレーディング責任者、ヤロスラフ・ポトセヴァトキン氏は話す。投資家はユーロ圏の問題により焦点を当てており、この観点から、ロシアや他の新興市場は投資にとってより興味深いものになっている。

 投資家のロシアへの関心は主に、価格の低い資産に向けられている。「2014年にもロシアの株式の価格は低かったが、経済の展望を見出せず、投資家で関心を持った人はいなかった。現在、経済は回復しており、インフレ率が低下し、原油価格は安定し、制裁緩和の可能性もある」とポトセヴァトキン氏。

 さらに、ロシアの資産への投資から得られる高い収益が投資家をひきつけている。「大きなファンド、銀行は、ロシアの株式を少しずつ購入し始めている。額は小さいが、ロシアの指標を上げるには十分」とポトセヴァトキン氏。

 ロシア市場の安定のもう一つの理由は、原油価格である。北海ブレント原油は29日の日中、0.6%高の1バレル48.37ドルまであがった。このような背景から、ルーブルはユーロとドルに対して強くなった。

記事全文(露語)

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