ロシアを「Brexit(イギリスのEU離脱)」の潜在的な受益国の一国とする意見も見受けられるが、実際には、ロシア経済にとって、これは利益よりも、危険性をはらんでいる。
専門家によると、世界貿易が縮小し、原油価格の下落を招く恐れがある。ロシア企業はロンドン証券取引所で上場をやめるかもしれないし、全般的に株価が下がるかもしれない。その結果、ロシア政府は国営石油大手「ロスネフチ」の株式売却を延期する可能性もある。
一方で、EUがロシアに対する経済制裁を緩和することも考えられる。イギリスは一貫して、緩和に反対していた。
イギリスのEU離脱は貿易縮小を意味する。「イギリスは今日、EUで設定された貿易体制に従っている。EUを離脱すれば、世界貿易機関(WTO)の枠組みの中で新たな貿易規則を決める必要が出てくる」と、国連その他国際機構ジュネーブ事務局ロシア連邦常任代表参事官のイーゴリ・クパロフ氏はロシアNOWに話した。
「イギリスがEUを離脱した場合、協定、規制、関税または税のない、白紙状態になる」と、WTOのキース・ロックウェル広報官は、ジュネーブでロシアの記者団に話した。
ロシアの大手企業はロンドン証券取引所に上場するのが一般的である。「離脱で上場をやめる会社も出てくるだろう」とニグマトゥッリン氏。
ロスネフチもそこに加わるかもしれない。政府は今年、ロスネフチの株式の19%を売却することを決定した。買い手は常に、公の企業価値を重視する。このような状況で、ロスネフチは株式の売却を延期するか、ロンドン証券取引所から完全に撤退する可能性がある。
離脱によって、ロシア企業の価値は10%落ちる可能性もあると、ロシアの大手国営銀行「ズベルバンク」の総裁で元経済開発貿易大臣であるゲルマン・グレフ氏は、アメリカ系金融情報通信社「ブルームバーグ」に話した。ロスネフチ以外に、政府はダイヤモンド採掘・生産独占最大手「アルロサ」の株式の売却も検討している。アルロサもロンドン証券取引所に上場している。
イギリスの国民投票の結果が発表された後の6月24日、モスクワ証券取引所では株価指数の下落で寄り付き、主要なRTS指数の下げ幅は5%以上に広がった。
ズベルバンクの株価は離脱の可能性だけで10%下落したため、さらに10%下がる可能性もあると、グレフ総裁は予測した。「今後2~3週間で、ロシアのすべての企業が5~10%下がるかもしれない。そのため、ロシア政府内で、離脱を歓迎している人は一人もいない」とグレフ総裁。ロシアは、貿易相手として、EUの結束の維持を望んでいるという。
ロシア経済にとって、唯一の正の結果となり得るのは、制裁の緩和である。2014年にウクライナ情勢を理由に発動された対ロシア経済制裁を、より柔軟な姿勢をとるフランスやイタリアなどとは異なり、イギリスは一貫して支持してきた。
イギリスがEUから離脱すると、制裁は緩和される可能性もあると、モスクワのセルゲイ・ソビャニン市長は短文投稿サイト「ツイッター」の自身のアカウントで述べている。「イギリスが抜けると、EUでは我々に対する制裁にあのように強くこだわる国がなくなる」イギリスのフィリップ・ハモンド外相は、EU諸国に、制裁の維持を呼びかけたが、イギリスのEUからの離脱は理論的に制裁の緩和を意味するかもしれないと話した。
とはいえ、制裁緩和自体がロシア経済にプラスになるとは限らない。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。