聖ワシリイ大聖堂の「そっくりさん」6つ

Shchipkova Elena, Tsy1980 (CC BY-SA 4.0); Legion Media
 ロシアでもっとも有名な建物にはいくつかの「そっくりさん」がある。そのいくつかはあまりにも似すぎている。

 現在、聖ワシリイ大聖堂はモスクワとロシアでもっともよく知られる建物の一つであり、一種のモスクワの代名詞とも言えるものである。大聖堂は16世紀の半ばにイワン雷帝の命により建設された。建設は、ロシア軍のカザン征服とカザン=ハン国のモスクワ公国への併合に合わせて行われた。

 この大聖堂を誰が設計したのかは正確には分かっていないが、ロシア人設計者のバルマとポストニクだという説もあれば(あるいはバルマというニックネームのポストニクという誰か)、クレムリンの塔や聖堂の設計を手がけた数多いイタリア人設計者の一人だという説もある。

 他でもないこの聖ワシリイ大聖堂が19世紀末のいわゆる「ロシア様式」の流行を決定づけた。赤レンガの多用、色鮮やかな装飾要素、ココシニクと呼ばれる外装装飾、木彫装飾などである。現代の建築家らは、大聖堂の外観は、すべてのロシア人によく知られており、文字通り、美的嗜好(色鮮やかなものが好きである)を決定づけたと考えている。

 そして当然のことながら、このような代表的な建物とよく似た建物が作られないわけがない。少なくともロシアの三つの建物はこの聖ワシリイ大聖堂から明確な影響を受けている。

1. サンクトペテルブルクの血の上の教会

 カラフルないくつもの丸屋根、木彫りの框、円錐形の塔、そしてココシニク。写真をさまざまな角度から一見すると、このサンクトペテルブルクの教会とモスクワの聖ワシリイ大聖堂は見間違えてしまいそうである。

 血の上の教会は、サンクトペテルブルクのバロック様式の概観の中で、際立っている。教会は1883年から1907年にかけ、アレクサンドル2が乗っていた馬車が革命家たちに爆破され、亡くなった場所に建設された。

 アレクサンドル2世の息子で新たな皇帝の座についたアレクサンドル3世が個人的に、古いロシアの教会建築に近い教会を作るよう依頼した。彼にとって、この教会の建築は特別な意味があり、ロシア様式の建築プロジェクトを自ら指揮した。

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2. サラトフの「ウトリ・マイヤ・ペチャリ(悲しみを癒したまえ)」教会

 教会は聖母を描いた地元の聖像画「わたしの悲しみを癒したまえ」に捧げられたもので、1904年から1906年にかけて建設された。ロシアには半円形に仕上げられた壁がたくさんついた装飾が施された教会が多くあるが、色の異なる小さな丸屋根がたくさんついているこのデザインが聖ワシリイ大聖堂を思わせる。

 他の教会では、丸屋根の数は祭壇の数と合致しているものだが、ここでは、もっぱら装飾的な機能しか果たしていない。教会の祭壇は常に一つしかなかった(1990年代になって、二つ目が作られた)。ちなみにソ連時代、この教会はプラネタリウム(!)として使われていた

3. モスクワの聖イーゴリ・チェルニゴフスキー教会

 ノヴォ・ペレジェルキノにあるこの教会は、2009年から2012年にかけて建設されたもので、まったく新しいものである。総主教の夏の住まいの近くにある。教会はネオロシア様式で建設され、教会建築のさまざまなスタイルの要素を含んでおり、おとぎ話の御殿を思わせる。

 色とりどりの丸屋根は陶器でできており、大きな十字架が付けられている。建築家らは聖ワシリイ大聖堂を模倣しようとした訳ではなく、ここにはほとんど木彫装飾は見られず、ココシニクもない。しかしそれでも聖ワシリイ大聖堂を意識して作られたものであることは明白である。

4. ヨシュカル・オラの生神女福音大聖堂

 2016年、マリ・エル共和国の首都に、生神女福音大聖堂が開基された。その丸屋根は色鮮やかではなく、黄金色であるが、しかし全体的な建物の外観は聖ワシリイ大聖堂と血の上の教会をすぐに想起させる。

 ヨシュカル・オラという街は、概して、レプリカが有名である。ここにはモスクワ・クレムリンのスパスカヤ塔、クレムリンの壁のコピーがあるほか、ベルギーのブルッヘによく似た河岸通りがある。

5. タンボフの復活教会

 タンボフにあるヴォズネセンスキー修道院のこの主要な教会は、ソ連時代に破壊されたが、2007年、同じ場所に、高さ70メートルの鐘楼を備えたこのような鮮やかな教会が新たに作られた。外国人は、本物の聖ワシリイ大聖堂をディズニーランドのようだと評しているが、こちらの派手な教会は、さらにディズニーランドらしいと言える。

6. カレリアのプレオブラジェンスキー(変容)教会

 想像力を働かせれば、カレリア共和国のキジ島にあるロシアでもっとも有名な木造の教会であるプレオブラジェンスキー教会にも、聖ワシリイ大聖堂との共通点を見つけることができる。この驚くほど素晴らしい教会は、18世紀初頭に、釘を1本も使わずに建設された。

 ちなみに、この教会には丸屋根が22個あり、その数、聖ワシリイ大聖堂の2倍である。それぞれの丸屋根が異なる段に取り付けられており、丸屋根の基礎となっているのは、玉ねぎあるいはココシニクを思わせるような「樽」状の屋根である。

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おまけ:他の国で作られているレプリカ

聖ワシリイ大聖堂(左)、トルコ、アンタルヤのホテル「クレムリン・パレス」(右)

 聖ワシリイ大聖堂のコピー(正確にはパロディー)はトルコにもある。アンタルヤにあるホテル「クレムリン・パレス」は、文字通り、モスクワの赤の広場にいるかのような気分にさせてくれる。ここには、クレムリン、歴史博物館、そして聖ワシリイ大聖堂のレプリカがある。

中国、満州のマトリョーシカ広場

 派手な色合いの聖ワシリイ大聖堂の丸屋根は、ロシアとの国境に近い中国、満州のマトリョーシカ広場にもある(かなり自由な感じである)。

中国、ジャライノール市の科学博物館

 またその隣の中国、ジャライノール市にも。

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