ガス輸出戦略前進

天然ガス輸出量世界第1位のロシアの「西」と「東」両方面でのガス輸出戦略が今月大きく前進している。

まず、2日には李明博韓国大統領がサンクトペテルブルクでメドベージェフ大統領との首脳会談で、年間100億立方メートルの天然ガスを朝鮮半島に供給するパイプライン敷設計画について話し合い、具体化へ向け一定の前進を見た。供給元となるサハリン沖のガス田からウラジオストクまで、全長1350キロメートルのパイプラインが9月に開通済みで、ロシアはすでに液化天然ガス(LNG)を日本と韓国に海路輸出している。次いで8日には、西シベリアからドイツに直結するバルト海海底ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」がEU諸国向けガス供給を開始した。これでEU向けガスの約4分の1に相当する年間550億立方メートルを、ガス供給をめぐる紛争の絶えないウクライナとベラルーシを迂回して直接EU諸国に送る態勢が整った。

 

ヨーロッパに天然ガスを供給するパイプラインの比較。現時点で開通しているのはノルド・ストリームのみ

ヨーロッパに天然ガスを供給するパイプラインの比較。現時点で開通しているのはノルド・ストリームのみ

 
さらに、ロシアは南欧向けの黒海海底ガスパイプライン「サウス・ストリーム」建設計画を進める構えだ。これに対しては、対ロ依存度の高まりを懸念する欧州一部諸国がカスピ海からロシアを迂回するパイプライン「ナブッコ」の建設を計画中だが、肝心のガス供給元が確保できないでいる。

中国との交渉妥結も時間の問題?

中国とは年間680億立方メートルのガスを今年から30年間供給する契約が2006年に締結済みだが、価格で折り合えず、東西シベリアからの2ルートのパイプラインは未着工だ。中国側はガス1千立方メートル当たり最大250ドル、ロ側は350ドル以上を提示して膠着、10月のプーチン首相訪中時にも妥結に至らなかった。

中国はこの6年間に、トルクメニスタンからのガスパイプラインを独自に敷設したり、東シナ海にLNG受け入れ基地を建設するなど立場強化に努めてきた。しかし、巨大なエネルギー需要に対し、ロシア以外の大口供給国は存在せず、妥結は時間の問題とロシアは楽観している。

北朝鮮経由の韓国パイプラインについても、韓国が北朝鮮にガス栓のバルブをゆだねるのを嫌うだろうとの指摘がある。だが、仮に北朝鮮がパイプラインを閉鎖したとしても、北は通過料収入(年間少なくとも1億ドル=約77億円)を失うだけのため、その可能性は小さいとロシアはみている。


アジア単一エネルギー市場形成へ向けて

 専門家によれば、現在ロシアは年間6500億立方メートルのガスを採取しているが、向こう100年分以上の埋蔵量がある。増える一方の需要に、2030年までに年間 1 兆立方メートルを採取する増産計画で対応する構えだという。

「東」方面へのガス輸出は、2015年までに全体の 10 〜 13 %にする計画。徐々にパイプライン網をはりめぐらして行けば、やがてはアジアに単一エネルギー市場が形成され、すべては自由な市場価格によって決まる状況が生まれるとロシアは読んでいるのだが。