沼の貴族、ロシアン・スパニエル

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小型で垂れ耳の長毛種のこの犬種は、ロシアで作り出された犬種としては唯一の、野鳥狩猟用(鉄砲を使用する狩猟)の犬である。

 この品種の誕生には、ニコライ2世の叔父であるロシア大公ニコライ・ニコラエヴィチJr.が関わっている。彼は有名なペルシノ大公猟場を開き、ズナメンスキー雉狩場を所有していたこともあり、スパニエル犬種の有用性にも早くから注目していた。

 スパニエル犬種はカモや雉、ヤマシギ狩りに威力を発揮する。19世紀末、ニコライ・ニコラエヴィチは黒いコッカー・スパニエルのダーシャ(恐らく、イギリス産)を献上された。続いて、宮廷の狩猟係だったヴラジーミル・ディッツも同種の犬を購入したが、これが後のロシアン・スパニエルの祖だと考えられている。

 ロシアでは品種改良にあたって、脚の長い個体が選ばれた。これにより、より現地の環境に適応して鳥を狩る事が可能で、また、より活発に狩場で動けた。1930年代には、ロシア独自のスパニエル犬種の個体群が誕生していた。1951年には、初めて犬種標準も定められた。

 ロシアン・スパニエルは1960~1980年代に一気にブームを迎える。この犬種は狩猟犬として優れているのみならず、パートナーとしても素晴らしい存在だった。ロシアン・スパニエルを大変愛した作家ミハイル・プリーシヴィンの作品には、次のような一節がある:

「僕は珍しいスパニエル犬種の犬をプレゼントされた。大きさは猫2匹ぶん、耳は地面まで垂れている。食べる時は耳が濡れるほどで、地面の匂いを嗅ぐ時は、前足で自分の耳を踏んでしまう」。

 エヴゲーニー・チャルーシンも、トムカという名のロシアン・スパニエルの仔犬の物語集を書いている。

 ロシアン・スパニエルは、特にカモ狩りでは卓越したハンターである。臭いで獲物を探すタイプの猟犬と違って、獲物の前で静止せず、あらゆる鳥を追跡する。

 体高は38~45㌢と、比較的小型。毛色は黒、茶色、赤毛、こげ茶に斑点混じりなど。白と黒のまだらや斑点模様、小斑点が散らばる場合もある。トリミングは必要無い。持久力があり賢く、負傷した獲物の鳥を追って水にも飛び込む。活発で陽気な性格で、ノリが良く、子供たちとの遊びに積極的だ。

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