モスクワの主要な歩行者天国5つ(写真特集)

観光・自然
ロシア・ビヨンド
 モスクワの中心部には大きな歩行者天国はない。しかし、歩いて観光を楽しもうという旅行者たちが訪れるべき場所はある。

1.  赤の広場とニコリスカヤ通り

 モスクワを訪れる人々―とくに初めてモスクワに来る人々―がまず足を運ぶのが赤の広場。広場には、1930年まで、トラム(路面電車)が走っていたが、現在は完全に歩行者天国となっている。歴史博物館側の赤の広場の入り口からクレムリョフスカヤ河岸通りまで、長さ700メートルほどで、レーニン廟やスパスカヤ塔、グム百貨店、聖ワシリイ大聖堂などをバックに自撮り写真を撮りながら、ゆっくり歩いて15分から20分という距離である。

 赤の広場からは、モスクワでもっとも賑やかでもっとも鮮やかなイルミネーションが飾られたニコリスカヤ通りに出ることができる。この通りは夜中でも、数千のライトが明るく照らしており、クリスマスや新年のような雰囲気が夏でも味わえる。

 ニコリスカヤ通りにはバーやレストランが並び、またかつてのフェレイン薬局やネオゴシック様式のモスクワ出版局(現在は歴史記録研究所がある)など、歴史的な建築物が立っている。ちなみに、ニコリスカヤ通りに出版局があったから、通りじゅうに本を売る露天商がいた。

 ニコリスカヤ通りを歩いて、ルビャンカ広場に近づき、アーチに入ると、トレチャコフスキー横丁に出るが、ここも歩行者天国である。この通りに沿っていけば、ボリショイ劇場と有名な子ども用品店「ジェツキー・ミール(子どもの世界)」のすぐ近くまで行くことができる。ちなみに、「ジェツキー・ミール」の屋上には素晴らしい展望台がある。

2.  アルバート通り

 アルバート通りの名称は、歩行者天国の代名詞となっており、ロシアのほぼどの街でも、主要な歩行者天国は「アルバート」通りと呼ばれている。モスクワのアルバート通りは長さ1キロ強で、始まりにも終わりにもちょうど地下鉄駅があるという便利な場所である。

 かつて、アルバート通りには絵描きやミュージシャンが溢れ、それに耳当てのついたロシア帽「ウシャンカ」、レーニンやスターリンの顔が描かれたマトリョーシカといったお土産を並べた露天が所狭しと並んでいたが、現在はお土産は通りの中ほどにある店舗に移され、人々がより広々と歩ける場所となっている。

 アルバート通りには多くの見どころがある。建物はどれも歴史的なものであることから、詩人のアレクサンドル・プーシキンを含むさまざまな有名人の博物館がある。またアルバート通りには、歴史のあるヴァフタンゴフ記念劇場、あらゆる料理のレストラン、またモスクワのアンダーグラウンドにとってもっとも興味深い場所の一つである「ツォイの壁」がある。ここにはヴィクトル・ツォイが率いたバンド「キノー」のファンが自分たちの名前やメッセージを書き記した場所である。アルバート通りの横丁にはロシアのアヴァンギャルド芸術のユニークな記念碑であるコンスタンチン・メリニコフの円筒形の家がある。

 モスクワっ子たちはこの通りを「スタールィ・アルバート(旧アルバート)」と呼ぶ。というのも、1930年代、スターリンのモスクワ再開発計画の中で、もう一つ、「ノーヴィ・アルバート(新アルバート)」が作られたからである。しかし、この「新アルバート」は、細くて快適な「旧アルバート」と異なり、広い自動車道である。この通りは長いこと、カリーニン大通りと呼ばれていたため、ソ連で育った人々は今でもこの通りを古い名称で呼ぶ人もいる。 

3.  ラヴルシェンスキー横丁、クリメントフスキー横丁

 モスクワで必ず訪れるべきもう一つ場所といえば、トレチャコフ美術館である。イリヤ・レーピンの「1581年11月16日のイワン雷帝とその息子イワン」など、ロシア絵画における重要な作品が収蔵されている。(1時間しかないという人のための主要な作品ガイドはこちらから)。さて、美術館を散策したあとは、新鮮な空気を吸うのがよい。

 ラヴルシェンスキー横丁は、美術館の建物沿いの通りである。ゆっくり歩いてヴォドオトヴォドノイ運河まで行き、シメリョフ小公園のカフェでおしゃれなモスクワのラフ・コーヒーを飲み、ボリシャヤ・オルディンカ通りを横切り、文字通り、レストランやオープンカフェが立ち並ぶクリメントフスキー横丁に出ることができる。

 この通りに来たら、モスクワのもっとも美しい教会の一つであるクリメントフスキー教会に立ち寄ってみよう(そのついでに、マクドナルドのハンバーガーと、ロシア版マクドナルド「フクースナ・イ・トーチカ」のハンバーガーの味の違いを確かめてみるのもよいかも)。

4.  ヴォロビヨフスカヤ河岸通りからクルィムスカヤ河岸通りまで

 モスクワの中心部をもっと長く歩いてみたいという人のために、長さ8キロのルートがある。このルートは、地下鉄ヴォロビヨーヴィ・ゴールィ(雀ヶ丘)」からスタートする(ここからはモスクワ川の上に渡されているロープウェイが伸びている)。河岸通りには、歩行者やジョギングする人、自転車で移動する人にとって便利な道が作られている。

 スノッブなモスクワっ子たちですら、休日にはこの地区を散歩するのを好んでいる。ニェスクーチヌィ公園、ゴーリキー公園でコーヒーを飲んだり、現代芸術美術館「ガレージ」に立ち寄ったり、河岸通りに沿って、さらに先にある噴水やベンチが備わったムゼオン公園まで歩いてもよい。

 またここには、カジミール・マレーヴィチなど20世紀のロシア芸術が展示されているトレチャコフ美術館新館がある。もっと先に進み、新しい文化会館「GES–2」と大きなスキャンダルを巻き起こした彫刻「大きな粘土No.4」を見ながら、パトリアルシェ橋を歩いていくこともできる。長い散策は、救世主キリスト大聖堂で終わる。

5.  シコーリナヤ通り

 中心部近くのモスクワ東部にあるシコーリナヤ通りが最近、歩行者天国となった。新しく建てられた高層ビジネスセンターと比較し、この2階建ての通りは印象深い。

 その昔、ここにはロゴシスカヤ・ヤムスカヤ村があった。19世紀、ここは街への入り口の一つであり、多くの商人たちがここで宿泊した。そこで今でも古い建物には、馬や馬車を停めるための門が残っている。17世紀まで、この通りは、馬車を意味するテレジナヤ通りと呼ばれていた。「シコーリナヤ(学校の) 」という通り名はソ連時代に付けられた。

 モスクワの古い時代を感じたいなら、道の向こう側にあるスパソ・アンドロニコフ修道院を訪れてみよう。修道院の中には、モスクワの古代の教会の一つであるスパスキー聖堂があり、その中には有名な中世のイコン画家アンドレイ・ルブリョフのフレスコ画のフラグメントが保管されている。また修道院には、古代ロシア芸術美術館が置かれている。