スターリン様式の高層ビルの1つで、700戸の住宅が入ったアパートであるが、主に芸術界のインテリたちが住んでいた。
住宅は1938年から1952年にかけて、ユニークな実験的住宅として建てられた。この高層ビルからは最寄りのベーカリーまで1キロも歩かなくてよかった。つまりこれは「街の中の街」だったのである。すべてのインフラが1階に設置されたが、重要なのは、食料品店だけでなく、映画館(住人たちのステータスを強調するものであった)なども作られたことである。ちなみに、映画館「イリュージョン」は今でも営業しており、最近、改修工事が行われた。
家賃:1ヶ月平均15万ルーブル(およそ23万円)
モスクワ初のブロック建築の一つで、戦前の1940年にレニングラード大通りに作られた。「編み目模様の」あるいは「レース模様の」家と呼ばれるのは、キッチンの開廊を飾りつつ、そこにあるものを隠せる蔦のような窓飾りによる。以降、これは不要物でいっぱいのバルコニーによってあらゆる美しい景観が損なわれるという問題を解決する一つの手法となった。
編み目模様の家はごく普通のソ連市民のために建てられ、同様の建物がいくつも建てられることになっていた。いつも職場にいる住人たちが、1階にあるレストランで夕食を取るという構想であった。そこで、建物の中には、広い共有の廊下があったが、部屋自体は大きくなく、キッチンはまったく小さかった。しかし、この計画は戦争によって頓挫したため、完成したのはこの1棟だけであった。この住宅に最初に入ったのは高位の軍人たちであった。
家賃:2部屋のアパート、1ヶ月6万ルーブル(9万円)
ロシアの大富豪、ウラジスラフ・ドローニンのために、世界的な建築家ザハ・ハディッドが、高級住宅街バルヴィハに設計した住宅。ドローニンがアメリカ人モデルのナオミ・キャンベルへの結婚の記念にプレゼントする予定にしていたものだが、2019年に、専門家らによれば「非現実的な」値段で売りに出された。
テラスは22㍍の高さで、宇宙船を思わせるような形になっており、中には、住居の他に、20㍍プール、スパ、ジム、日本庭園、ナイトクラブが作られている。
価格:64億ルーブル(およそ90億円)
モダニズム建築のこの建物は現在のモスクワでもっとも高級な通りの一つ、オストージェンカ通りにある。1899年に銀行家で住宅建築会社の所有者であったヤコフ・レックが建設した。ヤコフ・レックには、モスクワに、西欧風のあらゆる設備を備えたスタイリッシュなコテージをいくつも建てるという構想があった。
のちに、この住宅は商人のイサコフが購入し、革命が起こるまで所有していた。1925年、ボリシェヴィキはこの住宅を組合のものにしたところ、ここには300人以上が移り住んだ。家は現在も住宅地として使われている。
家賃:1ヶ月60万ルーブル(およそ90万円)
20世紀初頭に建てられた保険協会の建物は裕福な人々のために作られた住宅であるが、まもなく芸術界のインテリたちが目をつけ、ソ連時代には、文学者、音楽家の住宅、画家の工房などが入っていた。これらの工房は、モスクワのアンダーグラウンドの中心地となった。またその作品にもっとも高価な値がつく現代ロシアの画家イリヤ・カバコフもここで創作活動を行なっていた。
ロシア保険協会の家のアパートに設置されている暖炉
Gerarus (CC BY-SA 4.0)現在、建物はエリート住宅とされている。大手石油企業「ルクオイル」の本社前にあり、ヴァギト・アレクペロフ社長が移り住んだという情報もある。
価格:平均1億ルーブル(およそ1億6,000万円)
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フランスのボザール様式の6つのタウンハウスから成る複合住宅。ニューヨークのラルフ・ローレン社との協力の下、建設された。モスクワの高級新興住宅地「ゾロタヤ・ミリャ」の中心部に立っており、長年にわたり、住宅市場の価格で記録を塗り替えている。
住宅の構想は、1家庭で1棟を使うというもので、それぞれに玄関と中庭があり、テラスからはクレムリンと救世主ハリストス聖堂が眺望できる。
価格:タウンハウス2,600万ドル(28億円)
「家」と名付けられているが、実際には53階建て(213㍍)と34階建て(132㍍)の2つの高層ビルから成る巨大複合住宅である。しかし巨大でありながら、モスクワのパノラマ風景の中では、すっきりと優雅な建物である。2012年、エンポリス・スカイスクレイパー賞が選ぶ世界最高の高層ビル上位5位に入った。
家賃:1ヶ月45万ルーブル(およそ68万円)
モスクワのビジネスクラスターであるモスクワ・シティには、オフィス以外に、レストランやショップ、そして高級アパートが入っている。たとえば、モスクワ・シティの主要な建物で、もっとも高い「フェデレーション」タワー(96階建て、374㍍)には公式にロシアでもっとも高価な物件が入っている。
価格:区画により、数千万ルーブル(数千万円)から22億ルーブル(およそ33億円)まで
有名なスターリン様式の高層建築に似ているが、2000年代半ばに完成した新しい建築物。しかし、設計士らは、高い天井様式、広々とした空間、尖塔(ヘリコプターを使って上から設置された)、内部で多用されている大理石、大きなホールなど、スターリン建築の基本的なスタイルを踏襲している。現在、ここに住んでいるのは、ショービジネスのスターや監督、ビジネスマンなどである。
家賃:18万ルーブル(およそ28万円)より
モスクワの伝説によれば、レーニン大通り30の家は「自殺者の家」と呼ばれている。その理由は、建物の上に人間の身長ほどの大きさのある16体の彫刻が飾られており、遠くから見ると、人が建物の端に立っているように見えるからである。
実際は、この16体の彫刻は勝利の戦士と勝利の少女たちである。この住宅は1940年代の末に建てられ、建物の間に大通りがあり、モスクワへの表玄関のようなものであった。
家賃:15万ルーブル(およそ22万円)より
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