ソ連時代には、数日から数週間かけて、ウラルやシベリア、極東の河川を下り、北極海から黒海まで旅できるクルーズ旅行がさまざまな河川や海で楽しむことができた。このため、全国の河川や海岸に近代的なターミナルが整備された。そしてそのターミナルがそれぞれの都市の新たな見どころとなっていった。
1. モスクワのノース・リバー・ターミナル
スターリン様式でつくられた最初の建築物のひとつ、ノース・リバー・ターミナルは、ヴォルガ川やドン川、黒海やカスピ海に船旅する人たちの玄関口であった。遠目に見ると、27㍍の尖塔を持つ巨大な船のように見えるこのターミナル・ビルは、海軍にちなんだ記念碑やカフェがある美しい公園に囲まれている。ちなみに、このターミナルは今でも使用されている。
2. ヴォルゴグラードのリバー・ポート
ヴォルガ川を下ればヤロスラヴリ、コストロマ、ニジニノヴゴロド、サマラを巡り、ロシア南部のヴォルゴグラートやアストラハンまで旅が出来る。モスクワからヴォルゴグラートまで行くと一週間以上かかるが、川からの風景や通り行く新しい町を眺めていると決して飽きることはない。
3. ニジニ・ノヴゴロドのリバー・ターミナル
空からニジニノヴゴロドのターミナルを見ると、船のような形をしていることに気づくだろう。ソ連時代の1964年にオカ川とヴォルガ川の合流点に作られた、毎日何百人もの旅行客が利用する、このルートで最も混雑する河川港のひとつである。クルーズ旅行だけではなく、近隣の場所に船で手軽に行くこともできる。
4. トヴェリのリバー・ターミナル
モスクワと同様に、トヴェリのターミナル・ビルもスターリン様式で作られている。ソ連の建築家が1938年に設計し、19世紀の建築群の中にそれを建設した。市中心部に近いため、(一日に500人の乗客が利用する)ハブ港としての役割だけでなく、人気のある名所となっている。
5. ウグリチのリバー・ポート
ウグリチはモスクワからもっとも近い河川港(両市の距離はわずか160キロ)で、有名な黄金の環を巡る観光コースでもっとも訪れる人の多い都市だ。モスクワからヴォルガ川を旅してくる船のほとんどがここに寄港する。伝統的ロシア建築の粋を集めた古い町並みを目当てに毎年1000を超える船がここを訪れている。
6. クラスノヤルスクのリバー・ポート
シベリアのエニセイ川も船旅をすることができる。ソ連時代には、何十もの河川港がつくられ、大型船や小型船が行き来していた。その中で最大のハブ港のひとつが、シベリアの都市、クラスノヤルスクにあり、これがモスクワのターミナル港に似ている。この建物は1958年にブラッセルで開かれた万国博覧会で銀賞を得た。
7. サレハルドのリバー・ターミナル
マンモスやオーロラのふるさとである北極圏内にある唯一の都市にも客船が寄港するリバー・ターミナルがある。船旅のシーズンはとても短いが、旅行者は、オムスク、スルグト、ニジネヴァルトフスクなど、シベリアの大きな都市を訪れることができる。
8. オムスクのリバー・ターミナル
このターミナル・ビルの中には切符売り場や待合室だけでなく、カフェやショップがある。これはシベリアの都市オムスクのリバー・ターミナルの中にあるメイン・レストランを上空からみたものである。ホールには椰子の木まで置かれている。
9. ハバロフスクのリバーターミナル
ソ連時代、ハバロフスクは極東における船旅の中心的なハブの役割を果たしていて、アムールの川旅を楽しむことができた。今でも地元旅行者だけでなく、日本や中国からも観光客が訪れている。
10. ソチのターミナル港
この港は厳密にいえば河川港ではないが、ソチ川を航行する船舶のターミナル港である。ターミナル・ビルの巨大な尖塔は黒海沿岸のリゾート地であるソチのランドマークになっている。ソ連時代、国内外からガイドツアーでソチを訪れるとこのターミナル港観光が入っていたものだ。1955年に建設されたが、今でも人気の場所であり、休暇を過ごしに来た人が夕涼みを楽しんでいる。