クリミアの旅はもちろん、中心都市であるセヴァストーポリから始めるのがよい。セヴァストーポリは、ロシア黒海艦隊が置かれている軍事的栄光の町である。エクスカーション用の船に乗り、グラフスカヤ埠頭からセヴァストーポリ湾を進めば、多くの船を見ることができる。中には現役の戦艦もある。必ず訪れて欲しいのが、巨大なパノラマ館「セヴァストーポリの防衛」。1854年から1855年にかけて行われたクリミア戦争について知ることができる。
町の主要な見どころの一つが、古代ギリシアの植民都市ヘルソネス・タヴリチェスキー。10世紀にはビザンツ帝国の管轄下にあった場所で、伝説によれば、ルーシをキリスト教化したウラジーミル公はここで洗礼を受けたと言われている。
フォロスの復活教会
Igor Derevyagin (CC BY-SA 3.0)フォロスはクリミア南端の町。かつて古代人が暮らした、気候も温暖で、海風が吹き、松林がある美しい岩がちな海岸は、ソ連時代、サナトリウムでの療養や静養のための場所として、共産党の特権階級らに愛された。ちなみに今でもサナトリウムは営業を続けている。
フォロスの主な見どころは19世紀に建てられた復活教会。切り立った岩の上に立っている。教会から山を登ってみよう。峠にあるレストラン「バイダルスキエ・ヴォロータ」(バイダルの門)でクリミアで一番おいしいチェブレキを食べ、もちろん美しい景色を堪能しよう。
バラクラヴァ入り江
Getty Images曲がりくねったバラクラヴァ入り江では信じがたいほどの自然の景観と、さまざまなヨットや船が浮かぶ本物のクリミアの海を目にすることができる。ボートを借りて、湾から海へ漕ぎ出し、岩の洞窟へと向かおう。
軍事歴史博物館がある複合施設
Legion Mediaしかし、バラクラヴァでもっとも面白いのは、軍事歴史博物館だろう。博物館はソ連時代、潜水艦を隠し、修理を行い、また核弾頭の武器庫でもあった地下の複合施設の中にある。
シンフェローポリ空港からヤルタまでの移動はさまざまな方法があるが、できれば世界最長のトロリーバスのルートを体験してみることをお勧めする。全長86キロメートル。海の景色を見ながら、美しい山道を走る。
ヤルタはクリミア南岸の中心都市であり、砂浜が自慢のクリミアでもっとも人気のリゾート地の一つである。また、ヤルタは活気あふれる賑やかな町で、レストランもたくさんあり、新鮮な魚やシーフードを提供している。長い海辺にはいつでも人が溢れ、絵描きや手品師がたくさん立っている。
ロシアの作家、アントン・チェーホフはヤルタで休暇を取り、静養するのが好きで、人生最期の6年をここで過ごした。現在、彼のダーチャは博物館に作り変えられている。海岸にはチェーホフと、ヤルタを舞台にチェーホフが書いた小説の主人公である、犬を連れた奥さんの銅像が立っている。
ツバメの巣城
Legion Media町の近くにはクリミアのシンボルとも言える、ゴシック様式で建てられたツバメの巣城がある。遊覧船でボリシャヤ・ヤルタ海岸を周り、断崖絶壁の天辺に立つお城の外観を楽しむとよい。
クリミアは海だけでなく、山も素晴らしい。もっとも高い山の一つが、アイ・ペトリ山(1,234㍍)。ここにはヨーロッパで最長の支柱のないロープウェイが架かっている。ちなみに、頂上までは普通の道を通っても行くことができ(正確にはかない過酷な九十九折を歩くのだが)、途中でウチャン・スの滝を見ることができる。
頂上に着いたら、クリミア・タタールの民族料理が楽しめるレストランに寄ろう。プロフ、ラグマン、チェブレキなどの代表的な料理のほか、クリミアのワインも試してみるといい。山の上は風が強く寒いので、暖かい格好をするのを忘れずに。
ヴォロンツォフ宮殿
Legion Media英国風の設計で作られたヴォロンツォフ宮殿で有名な小さなリゾート地。
19世紀に宮殿の周りに広さ40ヘクタールという豪華な公園が造られた。この公園は今も、その素晴らしい景観と数多くの彫刻、噴水、テラス、そして世界中から持ち込まれた200種以上の植物で、観光客とリゾート客の目を楽しませている。ちなみに、アルプカからはアイペトリ山と海の絶景が広がっており、有名な海洋画家イワン・アイヴァゾフスキーがここで創作するのが大好きだったことはよく知られ、ここにある崖は彼の名を冠している。
ヤルタのほど近くにクリミアの豪華な宮殿の一つがある。アレクサンドル2世の夏の宮殿である。ロシアの皇帝たちは皆、夏になると家族連れでここを訪れた。のちにニコライ2世は自身のために離れを増築した。
ソ連時代、宮殿は労働者と農業者のためのサナトリウムに改造され、有名な作家マクシム・ゴーリキーもここで療養していた。第二次世界大戦時、リヴァディア宮殿では反ナチス・ドイツ同盟国会議が開かれ、ヨシフ・スターリン、ウィンストン・チャーチル、フランクリン・ルーズヴェルトが出席した。
なお、ジョナサン・リテルの小説「優しい人々」の中に、主人公はこのリヴァディア宮殿に滞在し、静養のための「皇帝の散歩道」を歩いたという描写がある。
マサンドラ村にはもう一つ、素晴らしいフランス庭園を持つ皇帝の夏の屋敷がある。しかし、どの皇帝もこの宮殿には長くは留まらなかった。リヴァディア宮殿をより好んだからである。
クリミアを訪れて、地元のワインを試飲しないのは罪である。マサンドラ・ワイン工場ではクリミア全土に8つある工場で見学と試飲を行なっている。ブドウ畑に行き、ワイン蔵を歩き、ワインの製造工程を見学することができる。
この町は子連れでの休暇に理想的な場所である。ここでは砂浜と小さな暖かい海が楽しめる。エフパトリヤには子ども向けのキャンプ場もたくさんあり、その多くはソ連時代から続いているものである。エフパトリヤにはクリミアで唯一の15世紀から16世紀に建てられたイスラム教修道院、そして16世紀のジュマジャミのモスクがあり、クリミアが何世紀にもわたってオスマン帝国の支配下にあったことを思い起こさせる。
エフパトリヤの近くには奇跡の自然がある。黒海から細い地峡で区切られたサスィク湖。この湖のユニークさは、ピンク色から明るい赤までのさまざまな色に変化する湖水の色にある。その色の秘密は湖水に生息する微生物がβカロチンを作り出していることにある。この湖から古代ギリシア人が塩を作り、後には皇帝の食卓にも運ばれた。湖の塩の層の下には治療泥が隠れている。美しい湖の写真はこちらから。
ケルチはクリミアの東岸に位置しており、クリミア橋から半島に入った人々を出迎える最初の都市である。ケルチはロシアでもっとも古い都市で、紀元前7世紀末に古代ギリシア人によって創建されたと考えられている。
ケルチには、古代遺跡から8世紀のヴィザンチン建築、17世紀末のトルコの要塞、そして19世紀のロシアの要塞など、すべての歴史の時代を物語る証拠が奇跡的な形で残されている。
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