ロストフ・ヴェリーキー:美しいクレムリンのある古都で何を見るか?

Legion Media
 これは、ヤロスラヴリ州の中でも最も旅しやすい快適な街で、ツーリストの憧れの古都だ。驚くほど美しい名所の数々が、わずか230平方メートルの範囲に集中している。

モスクワからのアクセス:

 バスなら、モスクワ市内の各ターミナルから出ているし、ドモジェドヴォ空港とシェレメーチェヴォ空港からの直行便も何本かある。所要時間は35時間。

 電車は、ヤロスラヴリ駅から出ており、 所要時間は2時間40分~3時間40分。

訪問すべきでない時:

 1月と5月の最初の週(この時期は、ロシアの祝祭日が続くから、大渋滞に巻き込まれる)

  我々は、ロストフっ子を侮辱するつもりはさらさらないが、ロストフのクレムリンを見れば、観光プログラムは最大限達成されたとみなし得る。ちなみに、ロストフ・ヴェリーキーとロストフ・ナ・ドヌを混同しないように。後者は、ここから1500キロメートルの彼方にある。 

次は、ロストフ・ヴェリーキーですべきことの簡単なチェックリストだ。

・ウスペンスキー聖堂(生神女就寝聖堂)を訪れる。

・鐘の音に耳を傾ける。

・ロシア版七宝焼きの「フィニフティ」を買う。

・前もってソ連映画『イワン・ワシーリエヴィチは職業を変える』を見ておく。イワン雷帝がタイムマシーンで現代のモスクワに現れるという設定の人気コメディだ。この映画では、ロストフのクレムリンが舞台になっている。

・ロストフを訪れたら、その城壁に沿ってぐるりと回ってみる。現代人と入れ替わってしまった雷帝と泥棒のジョルジュ・ミロスラフスキーが、ロストフのクレムリンで銃兵に追いかけられてあたふた逃げ回る様子を想像する。

・府主教の邸宅の傍の池で、鴨を眺める(冬はここでスケートで滑る)。

・府主教のリンゴ園でメドヴーハ(蜜酒)かスビテン(ロシアで伝統的に冬に飲まれてきた温かい飲み物)を飲む。教会の焼き菓子を味わう。

・ネロ湖を背景に自撮りする。

なぜロストフのクレムリンは「フェイク」なのか?

 ロシアの古都の多くには、クレムリン(城塞)がある。かつて人々の生活は、主にこの城塞の中で営まれていた。クレムリンと言えば、銃眼のある高い城壁、物見櫓の役割を果たす塔など、本格的な防衛施設であり、ここに籠って敵から身を守ることを意図していた。

 ところが、ロストフのクレムリンは、17世紀後半、つまり、もはや外敵から防御する必要がなくなった時期に建てられている。だから、城壁の重厚さや全体的な力強さは、実用よりも様式を追求した結果だ。例えば、ここの門は広すぎて、実際に外敵の脅威にさらされた場合には、攻囲を持ちこたえられなかっただろう。

 また、このクレムリンの機能自体も、防衛にはなかった。これは、ロストフ府主教イオナ・シソエヴィチが1650年代~80年年代に自らのために建てた邸宅だったのだ。

 今となっては驚きだが、ロストフの主教座は、ルーシ(ロシアの古名)にキリスト教が国教として導入された直後の991年に、初代キエフ府主教ミハイルによって置かれている。ということは、ロストフ主教座は、ノヴゴロドとならんでロシアで最も古いものの一つであるということだ。

 だから、ロストフは、ロシア正教会のヒエラルキーにおいて極めて有力だった。当時のヤロスラヴリ、モスクワ、ウラジーミル・スーズダリ、その他近隣の地域の教会は、ロストフに従属していたのである。

 16世紀末に、モスクワには、コンスタンティノープルから独立した総主教座が置かれ、ロストフ主教座は府主教に格上げされた。府主教には立派な邸宅が必要であった。

クレムリンの中には何がある?

 ロストフのクレムリンは、城壁により実質的に三区画に分かれている。

クレムリン・マップ

А - 聖堂広場

 聖堂広場の中央には、ウスペンスキー聖堂(生神女就寝聖堂)がある。このクレムリンで最古の建造物だ。府主教の邸宅より100年も前に、1510年代に建立されている。ちなみに、その建築様式は、モスクワのクレムリンのウスペンスキー大聖堂によく似ている。

 20世紀に修復師たちは、12世紀のフレスコ画の断片を発見している。かつて、この場所には白亜の別の聖堂があったのだが、火災で焼失した。おそらく、その壁の一部が残り、新たな聖堂はその上に建てられたのだろう。

 聖堂内部では、フレスコ画だけではなく、イコノスタシスにも注目してほしい。これは、18世紀にバロック様式で作られ、現存している。

 なお、聖堂には、巨大な鐘楼が隣接している。

B  - 主教公邸

 これが、「僧正様」つまり府主教の公邸だ。府主教イオナ・シソエヴィチは、一群の建築が庭園と池の周りに配置

されるように、特別に構想した。

 早くも1883年に、「白い館」(マップの№12)に、博物館「教会の昔」が開設され、今日まで活動している。

 サムエル館(№10)には現在、美術館があり、中世ロシアの美術品も展示されている。最も大きな館「赤い館」(№13)には、歴史に関する展示物と、ロシア料理のレストランがある。

左側にある建物はホテル。

 クレムリンにレストランがあるなんて想像し難い? それならあなたは、ここにホテル(№ 8)があると知ったら、もっと驚くだろう! それは、17世紀に造られた建物で、一階が石造りで、二階が木造。長きにわたり府主教の訪問客を受け入れてきた。そして今、それはホテルとして、Booking.comで予約できる。しかも、ごく手頃なお値段でだ。 

 フィニフティは、ロシア版七宝焼きだ。博物館「ロストフのフィニフティ」も訪れてみよう。これは、地元の美術工芸で、白いエナメルに繊細な絵付けをしたものだ。伝統の絵柄は花である。ペンダント、指環、イヤリングその他多くの品に、この技が用いられている。

С - 府主教の庭園

 おそらくここが、クレムリンでいちばん居心地の良い場所だろう。ゆったりとベンチに腰かけ、リンゴの木と小さな池を眺めるとよい。この場所は、エルサレムの「ゲッセマネの園」を彷彿とさせる。

 ちなみに、府主教イオナは、全体として、邸宅の構想を練ったときに、聖地エルサレムを念頭に置いていた。ウスペンスキー聖堂の鐘楼の傍にある教会は、キリストのエルサレム入城を記念している。

 また、この庭園には、教会の焼き菓子を売るテントもある(カッテージチーズ入りのピロシキ〈ソーチニク〉をおすすめする!)。

 それから、やはり教会で作っている飲料も。ハーブ系のスビテン(ロシアで伝統的に冬に飲まれてきた温かい飲み物)や、微量のアルコールを含んだメドヴーハ(蜜酒)を試してみよう。このメドヴーハは、府主教もまんざらではなかっただろう!

*クレムリンの入場料は70ルーブル(約120円)。ウスペンスキー聖堂の拝観料は無料。その他の博物館と教会は、それぞれ個別の入場券の購入が必要になる。すべて見学できる統一入場券は、800ルーブル(約1370円)だ。

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