歌いながらロシアを旅する和歌山県の音楽家:第五章「終結」~モスクワ・サンクトペテルブルク~

Xinhua/Global Look Press
 モスクワと聞いて思い出すのは赤の広場ではない。玉ねぎ屋根の聖堂でもない。美しい教会でもない。ロシア人のマリーナと、光輝く街を彷徨った記憶。 

 日が暮れると同時に至る所にライトアップが施され、建造物の格調高い外観と相まって、幻想的な雰囲気を醸し出す。その輝きは、見るものを魅了し、虜にする。

 クラスノヤルスク出身のマリーナ。クラスノヤルスクでスクープされた俺のニュースを見て、モスクワで是非会いましょうとInstagramを通じメッセージを送ってくれた。

 マリーナはロックな女性だ。年齢は一つ下の二十四歳。十六歳の時ギターを始め、クラスノヤルスクの路上でよく弾き語りをしていたそうだ。十八歳の時、ヒッチハイクだけでクラスノヤルスクからなんとウクライナまで行って帰ってきたらしい。その旅の途中、モスクワに立ち寄ったことがきっかけで、今は家族と離れ一人ここでバーテンダーをやっている。 

 「ロシア人は、皆ロシアのことが好きじゃないんだ。」

 「私だって日本に行きたい。一つの夢だ。」

 ロシアという国についての話、日本とロシアの関係ついての話、人生についての話。お互い、得意ではない英語で様々なことを話した。時折、彼女の言葉は単なる言葉に留まらず、言霊となり、胸の奥の深い部分に突き刺さった。

 彼女が働いているバーに行き、彼女が大好きだという、レミオロメンの「3月9日」という歌を一緒に歌った。それを聞いて、気のいいロシア人たちもやってくる。

 日本とロシアはもっとお互いを知るべきだ、もっと交流するべきだと、日本とロシアの関係について力説してくる男性。俺のギターの伴奏に合わせ、イギリスの有名なロックバンドの名曲を熱唱する別の男性。

 良い夜だった。観光のために何かの入場料にお金を払うなら、こうやって現地の人たちと語らうためのお酒の一杯にお金を払う方が百倍有意義だ。旅をすることでしか絶対に出会えない人達から、旅をすることでしか絶対に聞けない話が聞ける。

 おとぎ話か、ジブリの世界か。この街を歩いていると、まるで、どこかで見た映画の中に迷い込んだかのような錯覚を受ける。

 ロシア最後の街、サンクトペテルブルク。水の都とも称されるその街は、その名の通り、水に溢れた美しい都市だ。

 少し歩くと、水路に出会う。水路沿いを歩き、別れ、しばらくするとまた別の水路に出会う。水は、陽の光を集め、反射し、街の輝きを、どこまでも自然に、より一層豊かなものにしてくれる。アーチ型の小さな橋の上から水面を眺めてみると、人々を乗せたボートが、麗しく浮かび上がる波紋を切り裂いていくのが見える。

 水はどこまでも優雅だ。自由自在に形を変え、姿を変え、色を変え、その営みが止まることはない。流れる水のように、旅を続けることができたらどれだけ幸せだろう。ロシアでの旅路を振り返りながら一人、街を歩いた。訪れて来た場所全てに、宝物のような思い出がある。一人で旅を始めたはずなのに、気づけば隣に誰かがいた。笑顔があった。歌があった。

 この旅で出会ってくれた全ての人たちへ。ありがとう。またいつか帰ってくるよ。

 そんなことを考えながらバスに乗り込み、次なる国フィンランドを目指した。

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