=アレクス・ヒトロフ撮影
写真提供: Alex Hitrov
極東ロシアの版図
その区別は、いいかげんなものではない。極東は、ロシアの他の地方とは異なっている。極東ロシアは、港湾都市のウラジオストクから北に向かってベーリング海峡までずっと続いている。東西で見ると、極東は4つのタイムゾーンをまたぎ、そこには山脈、タイガの森林などがオーストラリアにほぼ匹敵する面積の土地に広がっている。
極東は中国、北朝鮮と国境を分かち、日本海に隣接している。アジアへの距離が近いにもかかわらず、極東には独特のロシアらしさがある。例えば、老朽化した ソビエト時代のコンクリート建てアパートが、ほとんどの町に見受けられる。最も人気があるビールのブランドはロシアの「バルティカ」だし、夏になると、結 婚式の参列者一同が市内を移動している様子が必ずと言っていいほど道路から目につく。
実際に極東に居住しているロシア人は700万人に満たないため、世界でも最も人口密度が低い場所のひとつに数えられる。ソビエト時代にこの地方を潤した 数々の補助金は姿を消し、これによって人口過疎が急速に進んだ。しかし、過去4年間で、極東にはロシア国内から新たな投資がなされた。中でも最も注意を引 くのは、この地域で影響力を持ち始めた中国に対抗する目的でなされた、ウラジオストクとハバロフスクの2都市への投資だ。
大自然の冒険を求めているにせよ、ロシアの都市を満喫したいにせよ、この国のソ連時代の過去を一瞥したいにせよ、極東はきわめて手頃な出発点だ。
ヨーロッパの一部をアジアに移転したかのようなハバロフスク
極東ロシアへの訪問者のほとんどは、シベリ ア鉄道の最東端の終点駅である港湾都市のウラジオストクを訪問する。飛行機の定期便が東京、北京とソウルをつないでいる。これらの同じ行き先はまた、ハバ ロフスクへも接続便を就航している。ハバロフスクは、ウラジオストクの北800キロに位置し、ウラジオストクよりも知名度はやや低いが、この市と極東で最 も魅力的な都市の座を争っている。別の移動手段としては、シベリア鉄道がウラジオストクとハバロフスクをつないでいる。
ハバロフスクは、東欧の一片を北アジアに移したかのような、この地域で最も国際的な都市だ。世界で9番目に長い巨大なアムール川を見渡す、複数の丘 の上に位置している。ハバロフスクからは、アムール川の向こう岸に中国が見える。この川は、2つの大国の間に自然の国境を成しているのだ。日没時 には、燃えるように鮮やかなアジアの太陽が川の上を漂い、その下の水を深紅色に染める。救世主顕栄教会(スパソ・プレオブラジェンスカヤ教会)の金色の玉 ねぎ形ドームの黒いシルエットがこの都市を覆い、それは近隣の中国文化と対照を成している。
ハバロフスクは、さらに先の地への旅行に出発する前に数日滞在するのに最適な場所だ。多くの木々といくつもの池に囲まれ、散歩に格好のディナモ公園 から、この都市のウォーキングツアーを始めるといいだろう。鉄道でハバロフスクの駅に到着したなら、アムールスキー大通りを丘伝いに3ブロック下り、左の ディコポルトスィェーワ通りに 曲がる。そこからディナモ公園へは、歩いてすぐの距離だ。
歩いて見る極東
ハバロフスクは、極東を探索するのに理想的な足場となる。シベリア鉄道と、その北を並行するバイカル・アムール鉄道(BAM)の両方がハバロフスクを通過する。極東の遠隔地への飛行機は、ハバロフスクから定期便が出ている。
本場ソビエト独特の一風変わった体験をしたければ、ユダヤ自治州の州都ビロビジャンに向かうことをお勧めする。中国との国境にまたがる湿地に位置するこの 小さな地方は、ユダヤ人のための新たな自治居住区として、1934年にスターリンによって設立された。一時は、ソビエト連邦の各地だけでなく、アメリカか らもユダヤ人がここに移住してきた。新たな移住者のほとんどは数年後に立ち去ったので、現在、この地方で自らをユダヤ人と名乗る居住者は、ほんの2パーセ ント程度である。
シベリア鉄道でハバロフスクからビロビジャンへ向かう。ビロビジャンは静かな町だが、訪問する価値は十分にある。この都市の歴史をより深く知りたい なら、地方博物館(レーニン通り25番地)や、フライト・ユダヤ文化センター(ショロム・アレイヘーマ14A番地)を試してみるといい。街中を歩き回る と、メノラー(7本枝の大燭台)やドライデル(四面に4つのヘブライ文字が描かれたこま)の絵がバス停に描かれているのが目につくだろう。
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写真提供:Boccaccio1 / flickr.com
国境の街ブラゴヴェシチェンスク
シベリア鉄道でさらに西へ行くと、活気に満ちたブラゴヴェシチェンスク市に到着する。
ゼヤ川とアムール川の合流点に位置するブラゴヴェシチェンスクには、いつの時代でも川沿いの都市に特有の、リラックスした雰囲気がある。アムール川の向こ う岸には中国の黒河市が位置している。170万人近い人口を有する黒河は、ブラゴヴェシチェンスク人口の10倍以上である。この都市の河岸に店を構えてい る商人のほとんどは、衣料品から自動車の部品に至るまで、ロシアに密輸したあらゆる品を売り歩く中国人だ。これは、アジアとヨーロッパが交差する、国境地 帯ならではの環境だ。
事前に計画しておけば、簡単に黒河を訪問して、ロシア・中国間の関係をつぶさに目にすることもできる。これには、在ハバロフスクの領事館(レーニン・スタジアム1番地)で中国のビザを取得するだけでなく、複数回入国可能なロシアの観光ビザを持っている必要がある。
石油ブームと雄大な自然:サハリン
本物の冒険をしたかったら、ハバロフスクから東に向かってサハリン島(日本名:樺太島)に行くといい。港湾都市のヴァニノまで飛行機か鉄道(1日1本、所要時間は24時間)を利用し、その先は、毎日出ているフェリーでサハリンの州都ユジノサハリンスクに向かう。
サハリンの面積は、オーストリアの国土に匹敵するほどだが、どう考えても観光客があまり行くところではない。この島にはオットセイやアシカが数多く 群生しており、沖にはクジラも姿を現す。夏の季節ならラフティングやダイビングが可能で、冬ならスキーや穴釣りができる。この島は現在、石油ブームと物価 高騰の真っ只中にあるため、予算が限られた旅行者には負担になるだろう。しかし、テントとキャンプ用品を持参すれば、サハリンを低予算でも体験できる。モ スクワのAstravel Ecotours(www.ecotours-russia.com)がツアーを手配してくれる。
サハとカムチャツカ
ハバロフスクからサハ共和国の首都ヤクーツクへの飛行機にも乗ってみることも検討すべきだろう。地球上で最も寒い都市として知られるヤクーツクは、夏には 泥と化す永久凍土の上に建てられている。ここでは、伝統的にトナカイを飼って生存してきた先住民族のエヴェンキ族について学ぶことができる。エヴェンキ族 の生活の様子を見学できるツアーは、Yakutia Travel (contact@yakutiatravel.com)が手配してくれる。
おそらく、旅行者にとって極東で最も魅惑的な場所は、火山に満ちた細道のような地形が、冷たい太平洋に突き出た形をした、カムチャツカ半島だろ う。ここでは、間欠泉、温泉や見事な火山を見ることができるが、これらはカムチャツカの火山群としてユネスコの世界遺産に登録されているものだ。極東でも 孤立したこの地方に向かう道路は存在しないため、ハバロフスクから飛行機に乗る必要がある。この半島はまた、すばらしいサケとニジマスの釣り場としても有 名だ。この地方での釣りとハイキングのツアーは、Kamchatka’s Vision(tour@kamchatka.org.ru)と Explore Kamchatka(info@explorekamchatka.com)の2社が提供している。
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