“男の仕事”を選んだ女たち

 自身の工房にいる鍛冶職人オクサナ・キリリュクさん。オクサナさんは馬の保護施設の創設者でもある。写真は、“男の仕事”に就く女性に関するタス通信のプロジェクトの枠内で撮影された。

 自身の工房にいる鍛冶職人オクサナ・キリリュクさん。オクサナさんは馬の保護施設の創設者でもある。写真は、“男の仕事”に就く女性に関するタス通信のプロジェクトの枠内で撮影された。

ヴィクトル・ドゥラチェフ撮影/タス通信
 3月8日の国際婦人デーは現代のロシアで最も人気ある祝日の一つ。この「女性の日」にちなみ、保守的なロシア社会では伝統的に「男の仕事」とされてきた職業を選んだ女たちに、ロシアNOWが話を聞いた。

1. ガリーナ・スレサレワさん(非常事態省で爆発物除去に従事、57歳)

 ガリーナ・スレサレワさんは、ロシア唯一の「工兵」だ。爆発危険物除去の専門家として、非常事態省オブニンスク支部(カルーガ州)の部隊に勤務している。

 「私が仕事を選んだ訳じゃなくて、仕事のほうが私を選んだの!若い頃、森で何かを探すのが好きだったんだけど、その途中で、地雷や他の爆発物にしばしば出くわしたわけ。第二次世界大戦の遺物よね。だから、私には、爆発危険物除去の専門家になるしか道がなかった。森で好きなことを続けるためには」。こうガリーナさんは語った。

  今日では彼女の同僚の男性たちは、彼女の職能を高く評価しているが、この仕事に就いた当初は、あからさまな性差別にぶつかった。

 「最初は、男は皆、一様な反応をした。『いったい女なんかにどんな爆発物が除去できるんだ?!』とか『誰もあいつと一緒に仕事なんかしないさ』とかね。ところが、私と組んで仕事しているうちに、『あんたと仕事するのは別に恐くないなあ』と意見が変わってきたわけよ。だいたい女は自己保存の本能が男より発達しているし。これは、工兵には大事な資質よね」。こうガリーナさんは説明する。

 長年にわたり彼女が処理してきた爆発物は一千個を超える。いつ何時でも仕事に呼び出される可能性があるから、常にスタンバイしている。

 「呼び出しにもいろいろあってね。なかにはすごく恐ろしい、結果が予想できないようなケースもある。でも、いやあ恐かったなあ、と思うのは、仕事が終わってからだけどね」

 ガリーナさんは既婚で、編み物と料理が好きだ。また歴史に夢中で、“クラシックな”トラックGAZ-66を運転する。

 

2. ヴェーラ・マクシモワさん(パイロット、35歳)

 ヴェーラ・マクシモワさんはアエロフロート社に勤務し、ボーイング767で副操縦士を務めている。

 ヴェーラさんは、子供の頃からパイロットになるのが夢だった。もっとも、彼女の家庭で航空関連の仕事に就いている者は誰もいなかったが。1990年代末、彼女は航空学校に入ろうとしたが、女子は入学させていなかった。そこでやむなく教育大学に入ったものの、大空を飛ぶ夢は消えることがなかった。

 大学を終えると、再び航空大学受験に挑戦。そのためには、特別な許可をとり、医療検査を受け、多くの試験に合格せねばならなかった。「パイロットになるために入学することそのものが、私の人生最大の試練だったわね」。ヴェーラさんはこう語る。

 彼女は、極東のミルニンスコエ航空会社で2年以上勤務した後ようやく、モスクワでの仕事にありついた。

 「ロシアじゃ、女性パイロットは変り種。旅客はふつう驚くけど、まあ、“快い驚き”ではあるわね」。ヴェーラさんは微笑む。

 しかし、男性の同僚との関係はもっと面倒だという。「女性ドライバーについてだって、どれだけたくさんジョークがあるか知ってるでしょ。これが女性パイロットとなると、男からのプレッシャーは100倍よね。でも私は、大目に見てもらおうとか甘やかしてもらおうとか、思ってないわ。男たちとある程度の時間一緒に仕事すると、私が何者で、何ができるか、彼らは理解し始める。そうなると、関係も変わるんだけど、それには時間が必要」。ヴェーラさんは説明する。

 ヴェーラさんは既婚で、二人の子供がいる。余暇は、写真とスポーツに凝っている。

 

3. ヴェロニカ・ノヴィコワさん(外交官、26歳)

 ヴェロニカさんがジブチとソマリアの大使館(両国をあわせて担当)の大使館員となって2年目。彼女はこの大使館の紅一点だ。

 「物心ついて以来、何か外交と関係のあることをやりたいと夢見てきた。いつも、他の文化や生活様式、外国語学習などに興味があったから」。ヴェロニカさんは言う。

 学校を終えると、モスクワ国際関係大学に入学。6年間の学生時代、睡眠時間は一日1時間半~2時間がざらだったが、そこで得た知識は役立っている。ヴェロニカさんは6カ国語を自由に操れるのだから。

 ジブチには、劇場も美術館も映画館もない。年間8ヶ月は、日陰でも気温が摂氏45度以下には下がらない。

 「なにしろ小さい国だから、私がジブチで働いているというと、まず聞かれるのは『それってどこ?国それとも都市?通りは出歩けるの?それとも食べられちゃうかな? 』。ソマリについて話すと、相手の目はまん丸になって、『海賊見たことある?防弾チョッキを着て歩いているの?』なんて言われるの」。ヴェロニカさんは語る。

 そういう質問に彼女はこう答える。ジブチの通りは平気で歩けるし、ソマリアの海賊なんて見たことないし、防弾チョッキも着てない、と。

 しかし、女性からは、がんばってねと言われることが多いが、男性はより懐疑的だという。「ロシアの社会はまだ性差別があって、外交官は女の仕事じゃない(ましてやアフリカなんて!)と考える人が多い。こういう偏見に、私の仕事の主な難しさもあるかな」

 余暇には、学位論文(准博士)を書き、大使館員の7歳の子供に英語を教えたりしている。また、服を編んだり、ピアノを弾いたりするという。