「老人ホームで一番悲しいのは過去の人生」

「老人ホームを精神病院みたいな閉鎖的な施設のように漠然と想像してました」とコンスタンティン・チャラボフ氏が語る=コンスタンティン・チャラボフ撮影

「老人ホームを精神病院みたいな閉鎖的な施設のように漠然と想像してました」とコンスタンティン・チャラボフ氏が語る=コンスタンティン・チャラボフ撮影

若き写真家コンスタンティン・チャラボフ氏の作品の展示会「残された生存期間(余生)」が、モスクワの 「労働者とコルホーズの女性」博覧会センターで始まった。このプロジェクトには、ロシアの老人ホームに居住する人々の写真やビデオが含まれている。写真家は、3年間にわたりこれらのお年寄りの物語とポートレートを集めた結果、施設内での生活は必ずしも悲劇とはいえないとの結論に至ったという。ロシアNOWの記者が写真家に、彼のプロジェクトとその主人公達について話を聞いた。

プロジェクトのアイデアはどうして浮かんだのですか? 

 初めて老人ホームを訪れたのは仕事ででした。以前私は、通信社の地方通信員をしていたのです。当時は、老人ホームを精神病院みたいな閉鎖的な施設のように漠然と想像してましたが、とにかく写真を撮って編集部に送りました。その後ノヴゴロド州のシムスク市(モスクワから500キロ)の老人ホームを訪れたのをはじめとし、3年間に同州の同様の施設を7つ訪問したのです。

 

―2度目に訪れたのはご自分のイニシアチブで? 

 ええ、でもまだ通信社のための撮影でしたけど。シムスク市に行ったとき、小さな老人ホームがありまして、撮り始めたんですが、そこがとても快適なのが分かったんです。池があって、お年寄りが散歩していて、隣には普通の人家があって…。

 暮らしが一番大変なのは、たくさん住人がいる大きな施設ですね。例えば、ボロヴィチ村の施設ですが(モスクワから370キロ)、ここでは、職員が全員の名前を覚えていないんです。なにしろ、各階で10部屋を一人が担当しているんですから。私は呆然としました――こんな老人ホームでどうやって暮せるんだろう、と。私はホームの住人達に、暮らしぶりを根掘り葉掘り聞き始めました。それから、友人がやっている老人ホーム関係の慈善プロジェクトを手助けするようになったんです。で、ふと気がついたのは、これは十分展覧会になるということで、写真といっしょにビデオも撮り、インタビューもしました――お年よりの生活を十全に再現できるように。

 

最初にいくつかの老人ホームを訪問した後、どんな感じがしましたか? 

 私は、お年寄りが廊下を這っているとか、誰も面倒を見てくれる人がいないとか、何かもの寂しい、衝撃的なことを目にするのではないかと予想していました。ところが実際には、そのようなひどいことは何もありませんでした。老人ホームで一番悲しい話というのは、実は人々の人生の物語なのです。そこで暮している人たちは、何というか、絶望感を放射しているような感じがします。そこに住んでいる人全員には、子供が死んでしまったとか、過度の飲酒で病気になり親の面倒を見ることを拒んだとか、何か悲劇的なことがあった、ということ一つをとっても。

 しかし、私が観察した限りでは、身寄りが一人もいない80歳の方ならば、老人ホームに住んでお話をできるルームメイトがいた方がいいということは明言できます。それに世話をしてもらったり、食事やお風呂の面倒もみてもらえます。とはいえ、どんな人間にとっても、自分の家があることが必要ですが、ここではまるでクリニックに住んでいるようなものですね。

 

「老人ホームで一番悲しい話というのは、実は人々の人生の物語なのです。そこで暮している人たちは、何というか、絶望感を放射しているような感じがします。」=コンスタンティン・チャラボフ撮影

確かに老人ホームのテーマは、映画のように人生の起伏を感じさせるし、「絵になり」ますよね。なぜ、普通は、老人ホームをネガティヴな観点からのみ見せるのでしょう? 

 実際、お年寄りのテーマには、もう“踏みならされた道”ができています。この題材は扱いやすいし、報道機関に自分を売り込んだり、ロシア内外のコンクールに出品するのは簡単です。人々はその写真を見て、なかには涙を流す人もいるでしょう。しかし事はそう単純ではありませんから、私はそんな道を行くのは嫌でした。私は、老人ホームに住む人々の生活の重苦しい側面、「汚点」を表現したくはありませんでした。しかし同時に、写真家はよい面だけをとらえるべきではないと思います。被写体の人物を傷つけ軽んじるような設定でその人を撮影すべきではないと思います。

 ですから、私のプロジェクトには、老人ホームのことさらに暗い光景は出てきません。ただ、人々とその人生の物語があるだけです。

 例えば、ノヴゴロド州のプロレタルスカヤ村(モスクワから410キロ)では、お年寄りは十分幸せに見えます――川で泳いだり、雪だるまを作ったり…。要するに、彼らの生活は、我々の普通のそれにできるだけ近づけられているのです。彼らは単にアパートのお隣さん同士みたいなものですね。

 

インタビューして特に記憶に残ったエピソードは? 

 或る女性の写真があります。彼女は当時102歳で、もう亡くなっていますが…。ずっと独りで過ごしてきた人なのです。夫は第二次世界大戦で戦死し、その後は誰とも出会いませんでした。

 老人ホームで知り合った70~80歳のお年寄りの驚くべき恋や結婚の物語もあります。 展覧会には、ボグダノフ夫妻の写真がありますが、二人とも身障者で、夫は全盲、妻は歩行が不自由です。私は二人の結婚式を撮りましたが…猛烈に感動しました!本当に愛し合っているのがよく分かるのです。

 80歳の女性と56歳の男性のペアもいて、一緒に暮しています。男性が女性の世話をしているうちに愛し合うようになったのですが、どんな関係なのかは分かりません――母と息子のようなのか、友情か、恋愛か。

 ただ、それなりに陰謀めいたことも起こります。いわゆる「黒い未亡人」を思わせる女性の写真が私の手元にあるのですが、彼女はこれまでに三回、死にかかった高齢の男性と結婚し、夫はいずれも死亡。亡夫の財産の何がしかが彼女の手に入りました。

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