教養のある話し方を

エルナル・サラヒエフ撮影 / ロシア通信

エルナル・サラヒエフ撮影 / ロシア通信

ロシアで罵り言葉(マート)禁止法が7月1日に施行された。使用が禁止されるのは映画、文学、マスメディア、コンサート、演劇。違反者には厳しい罰金が科せられる。

 「卑猥な悪罵が含まれる文学作品、芸術作品、あるいは民族創作品の公的演出」が、罰則の対象になる。また、「映画公開時、演劇上演時、また展示会、コンサート、ショーの開催時」でも、罵り言葉を使うことはできない。悪罵か否かの判断を行うのは、「独立協議会」。 

 

高額な罵り言葉

 罵り言葉を使った場合の罰金は、市民で20002500ルーブル(約60007500円)、役人で40005000ルーブル(約1200015000円)、法人で4万~5万ルーブル(約12万~15万円)。マスメディアの報道での罵り言葉使用も罰則対象になる。違反を繰り返すと罰金の金額は増す。

 今後罵り言葉が含まれた印刷物やオーディオ・ビジュアル作品は、警告入りの特別な包装が施された上で販売される。映画に罵り言葉が含まれている場合は、公開承認を受けられず、承認なしで公開された場合は罰則が科せられる。

 この禁止法の施行前に発売された製品は対象にならない。

「法律のための人に非ず」 

 ロシアの人民芸術家、映画監督で、1994年にアカデミー賞外国語映画賞を受賞しているニキータ・ミハルコフ氏は、映画の罵り言葉禁止法には見直しが必要だと話す。

 「人のための法律であり、法律のための人ではない。何らかの修正を行う必要がありそうだ。映画を含めて具体的にこの問題を検証しなければ。悪い言葉のない戦争映画は想像できない」

 モスクワ国際映画祭の実行委員長を務めるミハルコフ氏は、主催者が今後、ロシア連邦文化相からまだ公開の承認を得ていない映画も映画祭で公開できるように努力することを伝えた。

 「罵り言葉はロシア人の偉大かつ繊細な発明の一つ。電車内で使われているような嫌な罵り言葉もあるが、痛み、戦い、攻撃、死などの人間の極限状態を表現する罵り言葉もあり、それは状況によって正当化される。個別に検討の必要なものだと考える」とミハルコフ氏。

 

音楽や文学の関係者の反応

 ロシアの音楽グループ「レニングラード」のリーダーであるセルゲイ・シュヌロフ氏は、禁止法施行前にモスクワで行われたコンサートで、自分の曲には罵り言葉が欠かせないと話した。「ロシアは新たな冷戦の瀬戸際に位置している。だから政府が動員を必要としていることは明らか」。内なる感情をどう排除するのかという質問に対しては、「人を変えるのは無理」と話した。

 ロシアの詩人で哲学博士であるイーゴリ・ヴォルギン氏は、生活、文学、芸術で大きな変化は起こらないと考える。

 「何も変わらない。罵り言葉は話し言葉であって、公の言語ではない。ロシア文化は罵り言葉なしで十分にやっていける。プーシキン、レールモントフ、その他の詩人の作品には、罵り言葉の含まれる詩があるが、これらすべては公の場の外にある、マージナルなものであった」

 この禁止法は「闘牛に赤い布」になり、才能乏しいアーティストが「反対」というプリズムを通して、自分の作品に社会の関心を引き付けるようになるという。「文学を罵り言葉から救うのではなく、罵り言葉を文学から救う必要があるとずっと言ってきた。罵り言葉を含む文章は瞬時にブルジョア的、また下品になる。以前は誰もこれを公の場で使おうとしていなかった。常に作家やアーティストの中で自己検閲、文化的な禁止機能が働いていた。罵り言葉を法律のレベルでタブーにしなければいけなくなったのは、良くないこと」