国内で活動するカルト教団

1990年代、ロシアでは神霊治療家・催眠術師のアラン・チュマクとアナトリー・カシピロフスキーは、正式にテレビに出演し、画面の前に置かれた水に“治効”を与えていた。=ロシア通信撮影

1990年代、ロシアでは神霊治療家・催眠術師のアラン・チュマクとアナトリー・カシピロフスキーは、正式にテレビに出演し、画面の前に置かれた水に“治効”を与えていた。=ロシア通信撮影

ロシアのカルト教団には国民的気質が反映されており、異教信仰を基盤とし、身体の全快、力、永遠の命を約束している。どのカルトにも厳格な指導者がいて、そのカリスマ性とアイデアで信奉者をひきつけている。教団員がカルトにお金を払うために財産を売却したり、このような組織に関与した人が悲劇的な死を遂げたりすれば、警察は追跡を始める。

地下の祈り

 タタールスタン共和国の執行官は4月上旬、カルト教団「ファイズラフマニストィ」の最後の教団員である15人を、カザン市の住宅から退去させた。教団名は指導者の名前からきている。指導者ファイズラフマン・サッタロフ(85)は40年前、タタールスタン共和国ムスリム宗務局副ムフティーだった。

 ある日、トロリーバスの後ろで閃光を見て、アラーの光だと考えたサッタロフは、自分を預言者だと言い、数百人の追随者を集め、自分の別荘の敷地を独立国家だと宣言し、外の世界との連絡を遮断した。20年が経過した後、政府は敷地内に入る法的口実を見つけ、地下街を発見。ジメジメとした小さな部屋に70人が暮らしていた。住人はこの間、病院に行かず、薬も飲まず、子どもは学校にも通っていなかった。妊娠していた未成年の少女もいた。

 とん世や俗世をのがれるアイデアは、いつでも多くの信奉者をひき寄せる。ペンザ州で2007年秋、「スヒーマ修道士マクシム」や「貧しきピョートル」などと名乗っていたピョートル・クズネツォフの追随者35人が、地下に閉じこもった。世界の終末を信じ、連れだされるなら自爆すると脅した。その半年後、2人の女性が死亡。残りの追随者は自ら地上に出た。クズネツォフ自身は地下には降りていない。妻は、夫が家では棺の中で眠り、疑わしき説教を行っていることを嫌がり、離婚している。教団を創設したのは離婚後。その教義は文明の拒絶にある。追随者に死者が出たことで、警察はクズネツォフを逮捕。裁判所は被告を精神病院に送った。

 

勧誘の手口 

ロシアにおけるオウム真理教

ロシアにオウム真理教が入ってきたのは、ソ連崩壊直後の1992年初めのことで、急速に多くの信者を獲得した。地下鉄サリン事件が起きた1995年に、ロシアでの同教団の活動は禁止されたが、この時点で、ロシアの信者の数は、日本のそれの8倍に達していたとのデータもある。同教団はまた、ロシア・日本大学(露日大学)の創設に関わり、露政界とのつながりを再三指摘された。

 カルト研究家で、神品致命者イリネイ・リオンスキー宗教研究センターの所長を務めるアレクサンドル・ドヴォルキン氏はこう話す。「どのカルトも、自分のイメージや姿にもとづいた組織をつくる指導者から始まる。すべてのカルトの指導者に共通している特徴は、権力の渇望とナルシズム」

 カルト網にひっかかる人は暗示にかかりやすい人だが、暗示にかかりにくい人は極めて少数で、ストレスを抱えている人はコントロールしやすいという。また、人間の関心とカルトの好餌の合致も条件だという。「決してカルトに招待されるわけではない。無料の英語教室だったり、すべての病気を当てる診察医だったり、若者の楽しい飲み会、収入の良い仕事、ヴェーダの料理教室あるいはダンス教室、ヨガ・サークル、格闘技サークル、自己啓発講座、古代哲学講座だったり。これはほんの一例で、実際には山ほどある。こういったものの裏にカルトが隠れている場合がある」

 

神霊治療家や預言者

 宗派は昔からロシアに存在していたが、キリスト教の伝来とともに目立つようになった。その後のソ連政府の厳しい規制は、全体主義的なカルト集団を発展させただけだった。また科学の進歩や、人の操り方の説明となる心理学の発達なども影響を及ぼした。

 ドヴォルキン氏の研究センターは、カルトを複数の種類にわけている。カルトの多くは、仏教、ヒンズー教、キリスト教などの世界的に認められている宗教を真似ている。

 例えば、クジャ神カルトは、正教会周辺に集まり、主任司祭の出張展示会の企画を手伝い、正教会に来る信徒に住宅問題、裁判、コンピューター依存脱却などの解決の祈祷を有料で行っている。クジャ神を名のっているのは、ほぼ目の見えないアンドレイ・ポポフ(37)で、自ら信奉者を集めた。敵は悪魔、”野菜”、または”キュウリ”。ポポフの支持者は肉体的、精神的圧力をかけられている。信奉者は強引な支持者集めをし、教義をしっかりと守っている。教義には、野菜で病気を治療するといった、客観的に見るとおかしなものも多い。また若い女性と既婚男性の関係を促すような、自由愛も推進している。

 シベリアで発生したカルト教団「アシュラム・シャンバラ」では乱交が行われていた。この指導者であるコンスタンチン・ルドネフは昨年、麻薬を販売し、信奉者らが自宅を売却して得た資金を略取した罪で、厳格収容所11年の禁固刑を言い渡された。

 ロシアでは神霊治療家の人気が高い。1990年代、神霊治療家・催眠術師のアラン・チュマクとアナトリー・カシピロフスキーは、正式にテレビに出演し、画面の前に置かれた水に“治効”を与えていた。2000年代に入ると、グリゴリー・グラボヴォイが登場し、ベスラン学校占拠事件の犠牲となった子どもたちを復活させると、母親たちに約束した。その後グラボヴォイは詐欺罪で懲役11年を言い渡された。

 専門家らは、宗派の多くが、指導者とともに消えると話す。「2世代目の宗派は少ない。数世代続いているのは、モルモン教とエホバの証人」とドヴォルキン氏。