天災に屈しない極東

=新華社撮影

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ロシア極東は、今も洪水に苛まれている。ハバロフスクでは、水は徐々に退いてきたものの、危険水位を1,5メートル上回っており、多数のポンプがひっきりなしに市内の通りや家屋の地下から水を汲み出している。およそ1万5千人が被災者リストに名を連ね、その多くは家を失っている。あと三週間もすれば寒波が訪れるため、当局は、冬に備えて、二世帯を一戸に住まわせ、大学のキャンパスにスペースを確保し、仮設住宅を建てはじめている。

民話、伝説にもなかった大洪水 

 現在、少数民族の居住地区が、洪水のピークを迎えている。アムール河流域には、ナナイ、ウリチ、ネギダール、ウデヘ、オロチ、ニヴフなどの先住民が暮らしており、その民話や伝説では、この河の気性の荒さは語られても、これほどの大水については伝えられていない。

 ベリゴ村の家は、灰色の屋根だけを残して濁流に没し、マルムィーシ、ドゥボーヴイ・ムィス、アチャーンなどの村の家には、魚が棲みつき、冠水したボーロニ町の住民は、鉄道駅の客車へ避難した。

 

とくに深刻なコムソモーリスク・ナ・アムーレ 

 とはいえ、もっとも状況が深刻なのは、地区の中心都市コムソモーリスク・ナ・アムーレで、水位がすでに9メートルほど上昇し、危険水位を2,5メートルも上回っている。河岸通りは一夜にして冠水し、中心街の大通りは奔流に呑まれ、ほぼ700棟の家が漂流している。何十台ものダンプカーや軍人を中心とする何百人もの人々が昼夜にわたり堤防を築いているが、アムールの猛威には抗いがたい。

 道路の水位が50センチに達しているのにオフロード車で突っ切ろうとする猛者もいるが、車はすぐに故障して人間の愚行のシンボルのように水中を漂うばかり…。

 

選挙は延期せず 

 こうした非常事態にもかかわらず、国の当局は投票日を延期しないことを決めたが、知事選挙が行われたハバロフスク地方では、いくつかの選挙区が深く水に浸かっていた。大ウスリー島(この島の一部は中国領であり、中国では黒瞎子島と呼ばれている)の選挙区もその一つだったが、島に残った50人ほどのうち40人が投票を希望した。

 選挙管理委員会のメンバーは、半分水に浸かり二階に人が住んでいる家々に非常事態省のボートを寄せた。玄関口は半分水に覆われているため、建物の中へ入ることができない。

 

水上の投票 

 すると、ナスィプナーヤ通りの住人アントニーナ・グーニナさんが、バルコニーから紐を投げてよこす。島民たちは、こうすることをあらかじめ伝えていた。選挙管理委員会の代表らは、青いプラスチック・ケースを縛りつける。

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 「上げて!」

 アントニーナ・ミハイロヴナ(グーニナさん)は、身分証明書をそこへ入れる。

 「下ろして!」

 そんな上げ下げが何度か繰り返され、選挙人が、投票用紙を受け取り、そこに記入し、四つ折りにして、ボートへ下ろすと、選挙管理委員会のメンバーが、シートに覆われた移動式の投票箱へ票を投ずる。

 ヴィクトル・ボバーストフさんは、「選挙」ボートを遠くから見つけると、モーターボートを走らせてきた。

 「身分証明書はお持ちですか?」

 「もちろん!」

 こうして、投票の手続きが水上で開始される。

 

ハバロフスクの姉妹都市、新潟からも温かい支援 

 ロシア全土で義援金集めが行われており、たとえば、ドミトリー・メドベージェフ首相は、支援基金に給料一月分を納めたが、ハバロフスクの姉妹都市、新潟からも、温かい支援が寄せられた。

 新潟の篠田昭市長と志田常佳市議会議長が署名した書簡には、次のように述べられている。「日本はたびたび自然災害を被っている国でありますので、私たちは人間には太刀打ちできない自然の猛威を人一倍認識しております。自分たちが苦しいときにいつも私たちは隣国のロシアを含む多くの国の温かな支援を感じております。洪水後のハバロフスクの復興が少しでも近づくようにと新潟市はハバロフスク市の口座に100万円の義援金をお送りいたします」。

 ロシアの北東地域からは、手作りの贈り物が届いた。マガダンに住むルフィーナ・コロベーイニコワさんが編んだ暖かい靴下300足が、地元の正教会の主教管区から、ハバロフスクの洪水の被災者へ送られた。ルフィーナさんは、この数年間でおよそ2000足の靴下を編み、現在、孤児院の子供たちや身体障害者施設の人々がそれを履いて暮らしている。この半年で編みあげた分もそちらへ贈るつもりだったが、アムール河の洪水の報に接し、家や衣類を失ったハバロフスクの被災者に役立ててもらうことにしたという。