ロシアにおける人権侵害行為の黙視を批判

野党のリーダー、アレクセイ・ナヴァリヌイ氏を支持する集会に参加した女性。ポスターには「人権を守れ!」とある。ナヴァリヌイ氏は、国営の材木製造会社「キロフレス」に対する横領の疑いで起訴されている。=アンドレイ・ステーニン撮影/ロシア通信

野党のリーダー、アレクセイ・ナヴァリヌイ氏を支持する集会に参加した女性。ポスターには「人権を守れ!」とある。ナヴァリヌイ氏は、国営の材木製造会社「キロフレス」に対する横領の疑いで起訴されている。=アンドレイ・ステーニン撮影/ロシア通信

アムネスティ・インターナショナルがロシアに関する年次報告を発表した。その中では、年明け以来、ロシアにおける状況が悪化したことが指摘されている。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは5月23日、人権に関する年次報告を発表した。この膨大な文書は2012年から2013年初頭の期間を対象とし、世界159ヶ国における人権の状況を報告したものだ。 

 

 反政府運動家アレクサンドル・ドルマトフ氏の自殺に言及 

 モスクワでの発表はアムネスティ・インターナショナルのロシア支部局長、セルゲイ・ニキーチン氏と、オランダ支部局長のエドゥアルド・ナザルスキー氏に よって行われた。彼らは次のように主張した。

 「法律に違反したからでも犯罪を犯したからでもなく、外国人を国内から退去させて在留資格取得を 防止する目的で、何千人もの人々が毎年のように拘束されています。代替の解決法が存在するにもかかわらず、依然として身分拘束が多く行われています」。  

 ナザルスキー氏は、ロシア人反政府運動家アレクサンドル・ドルマトフ氏が1月中旬にオランダの難民収容センターで自殺した事件に言及した。彼は、5 月6日にモスクワで行われた反政府デモに参加した後、政治亡命を求めていたが、申請を棄却された。

 

クイックファクト

  • 拷問は112ヶ国で利用されている
  • 表現の自由は101ヶ国で制限されている
  • 不公平な法廷尋問は80ヶ国でなされている
  • 認定された難民は世界中に1500万人いる
  • 世界中に無国籍者が1200万人いる

 欧州の人権侵害の状況は 

 アムネスティ・インターナショナルは、この事件に関して中立者による独立の調査を求めており、「誰もが尊厳をもって対処される権利を有している」はずの「EU(欧州連合)の現行の出入国管理政策」に対して疑問を投げかけている。  

 欧州における人権状況がこの事件によって悪化したとみなしているかどうかを問われると、ナザルスキー氏は次のように答えた。「現状では、今日の経済状況お よび反テロ対策と、入国者に対する圧力という両面から、マイナスの影響を受けています。現在我々が直面しているこの状況には、多数の要因が関係しています。グローバルレベルでは、市場と人権の間に存在する不安定なバランスの中で、現在はどうも前者の方に傾きつつあるようです。また、私の考えでは、これには中国 の台頭が大きく関係しています」。

 

 ロシアにおける状況

 セルゲイ・ニキーチン氏は、「過去1年間のロシアにおける人権状況の悪化」について言及し、「表現・集会・結社の自由を制限するような多数の法律が通過した」とする自身の見解を示した。 

 彼は、女性パンクグループ「プッシーライオット」のメンバーの投獄および同国におけるLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)コミュニティに対する差別を痛烈に批判した。  

 アムネスティ・インターナショナルの年次報告が指摘するもう一つの問題は、非政府系組織(NGO)を対象とする新たな法律だ。これは、NGOがロシア国外 から資金援助を受けた場合に「外国のエージェント」として登録することを義務づけるものだ。ナザルスキー氏は、アムネスティ・インターナショナルが他の組織と「ロ シアにおける市民社会の発展にむけて引き続き尽力する」旨の結束宣言書に署名したと表明した。   

 

 アムネスティ・インターナショナルのモスクワ本部も家宅捜索 

 ニキーチン氏は、モスクワ検察当局の検査官が2月下旬にアムネスティ・インターナショナルのモスクワ本部を家宅捜索し、NTVテレビ局が録画する中、予告なしの5時間にも及ぶ捜査で多量の文書を押収したことを明かした。    

 政府当局との法的に争っている市民に対して法律扶助を提供するNGOの「市民の判断」(Public Verdict)代表のナターリア・トービーナ氏もその記者会見に同席し、次のように発言した。

 「私たちは政府を打倒しようとしているわけではな く、単に人権を擁護しようとしているだけです。人権は万人のためのもので、内政問題でしかないという考えは間違っています」。     

 トービーナ氏は多くの団体が現在直面する困難や不確実性について、次のように述べた。

 「自分の団体を自ら“外国の手先”と呼ぶことは、自身がスパイであること を認めるようなものです。でも、私たちはロシア社会のためにロシア国内で活動しているのです。この新たな法律は私たちを社会の主流から追いやるだけでな く、それにより全くの虚偽がまかり通ってしまうことにもなります」。

  彼女はまた、ロシア人個人からの資金援助を確保することの困難さについても語った。

 「我々は独立組織なので、資金を募ることは事実上不可能でしょう。紙面 上は運営資金が存在したとしても、ホドルコフスキー氏の一件を見る限り、それが何の保証にもならないことは明白です」。     

 一方で、アムネスティ・インターナショナルは「ロシアの司法改革の必要性は、政府高官さえもが広く認めていることだ」と主張する。「過去1年間で、司法の 独立を保証するために効果的な対策がとられたことは一度もありませんでしたが、不公平な法廷尋問が行われたという報告は数多くなされています。」