ボリショイの暗闘

ボリショイ劇場で新作発表会見を行うフィーリン氏(中央) =タス通信撮影

ボリショイ劇場で新作発表会見を行うフィーリン氏(中央) =タス通信撮影

モスクワのボリショイ劇場バレエ団の芸術監督セルゲイ・フィーリン氏(42)が1月17日深夜、マスクをかぶった男に硫酸をかけられ、顔などに全治6カ月以上のやけどを負った。 同バレエ団では、思い切った改革を目指すフィーリン監督と、これに反対するトップダンサーらの対立が続いていたといわれる。 世界屈指のバレエ団ゆえに配役や演出をめぐる争いはこれまでもあったものの、監督に硫酸をかけるという前代未聞の事件は劇場関係者だけでなくバレエファンに衝撃を与えた。 フィーリン氏はモスクワの病院で手術を受けた後、追加治療のためドイツに向かう前に「ロシアNOW 」のインタビューに応じた。

顔のほとんどが損傷されたのですか?

 私の頭が少しはげて、目が見えなくなったからといって、私のことを知る人たちが私に背を向けることがないよう望んでいます。私たちのバレエの新作がすべて上演されることもお約束できます。

 

友人たちは、あなたのことを入院中でさえも仕事を続ける勇敢な闘士と言っています。

セルゲイ・フィーリン

ロシア人民芸術家(2001年)の称号のほか数多くの賞を受賞している。1994年には『眠れる森の美女』のデジレ王子役でバレエのオスカーと言われるブノワ賞、2004年に『明るい小川』での演技でゴールデン・マスク賞を受賞。1988年からボリショイ・バレエ団に所属し、ほぼすべての主要な役を演じた。

1970年 モスクワ生まれ

1988年 ボリショイ・バレエ学校卒業

1991年 ロシア舞台芸術アカデミー卒業

2006年 モスクワ大学芸術学部卒業

2008年 ダンサーを引退し、モスクワ音楽劇場バレエ団の芸術監督に就任

2011年 ボリショイ・バレエ団の芸術監督に就任  

胸に手を当てて自問することがあります。「セルゲイ、つらいか?」と。それはつらいよ。「セルゲイ、痛いか?」。ああ、痛いよ。「この困難をお前は克服するのか?」。もちろん。これは一つの試練にすぎないのです。しかし、自分の身の安全に関して無頓着だったことは反省しています。

 

ボリショイ劇場のイクサノフ総裁は雑誌のインタビューで、この劇場で争いの企てに関心があったグループがいたと述べています。

 バレエ監督就任直後から、劇場内で決まりの悪いことが起きていることは感じとっていました。自分の身の周りで、個人の評判を傷つけるような陰謀、リークが起きていました。劇場経営陣の最高幹部が我々に打撃を与えることをたくらんでいるかのようでした。

この劇場に不名誉をもたらす行為に関与していたのは2人や3人ではなく、グループだと確信しています。

 

昨年、トップダンサーのツィスカリゼ氏の発言をあなたが批判している手紙が公表されました。

 すぐに真実は明かされるでしょう。私は常に攻撃を受けていました。私に抵抗するように舞台裏で誰かがダンサーに金を支払っていたに違いありません。

 

襲撃者が誰か想像がつきますか?

 私は自分が似顔絵を描いているところを想像します。硫酸を私の顔にかけた人ではなく、それを指示した人の顔です。特徴が一つあります。それは孤独です。このような犯行は精神が極めて病んだ孤独者にしか下せません。

 

犯人逮捕に向けた当局の姿勢をどうみていますか?

 政府当局が劇場組織全体に及ぶ問題を解決できるかどうかです。未解決になったら、私はロシア国民として、父親として、納税者として、この国では、他にどのような公的な対応が求められてしかるべきかと、常に考えてやまないことでしょう。