ロシアのウラル自動車工場が作り出してきた全地形対応車

Vitaly V. Kuzmin/vitalykuzmin.net
 ウラルの全地形対応車はソ連史の最も困難な時代に登場した。80年を経てなお、世界で最も需要のある車の一つであり続けている。

 1941年11月、ドイツ軍がソ連のかなりの領土を占領し、首都モスクワに迫る中、政府は2つの工場を従業員とその家族ごとモスクワからウラル山脈の町ミアスに緊急疎開した。そこで工場は直ちに戦車や軍用車両のエンジンやギアボックス、後車軸などの予備部品の本格生産を行うことになっていた。これが2021年に創立80周年を迎えたウラル自動車工場の歴史の幕開けだった。

 1943年、同工場は輸送車一式を生産することを託された。当時の国防人民委員部はトラックの生産態勢をすべてミアスに移転することを決めたのだ。この時、予備部品と基本的なトラックを限定的にしか作っていなかった小さな工場が、軍事支援車両に特化した大企業に生まれ変わった。

 1944年7月、ウラル自動車工場は全面的な改良を経たZiS-5Bトラックを前線に提供し始めた。2ヶ月後、その数は1000台に達した。用途は兵員や弾薬、医薬品、その他の重要な物資を戦場に届けることだった。

 ウラルは終戦までに6800台を前線に送った。後に同社はソ連最大の軍事用・民間用トラックの生産者となる。

 この伝説的な会社が生産してきた最高のトラックを紹介しよう。

ZIS-5

 ZiS-5は工場の操業開始半年後に製造された最初の車だ。

 1942年6月から生産が始まった。疎開後入手できた基本的な資源だけで作られた。

 初代ZiS-5には、金属製のシートの代わりに板を張った、木製フレームの車室を持っていた。ヘッドライトは一つだけで、ブレーキも後輪にしか付いていなかった。

 サスペンションに緩衝装置はなく、車室は冬に暖房することもできなかった。

 車の構造は可能な限り単純化されていた。しかし車体は頑丈で、二輪駆動にしては優れた全地形対応性能を持っていた。

 戦局がソ連有利に傾いた1944年、ウラル社は初代ZiS-5の欠点をすべて克服し、新しいZiS-5Bを生み出した。このモデルはソ連で最も量産された車の一つとなった。

 ZiS-5Bはその後多くの改良を加えられ、やがて次世代の輸送車ウラル-375に取って代わられた。ウラル-375の方が走破性が高く、積載量も大きかった。

ウラル-375

 ウラル-375は1960年代初頭に登場した180馬力の四輪駆動車だ。大量のAI-93ガソリンを消費するため、運転手はよくこの車を「食いしん坊」と呼んでいた。100キロメートルにつき約48リッターの燃料を消費したのだ。

 ウラル-375は軍でZiS-5Bとその派生版に取って代わった。走破性が高い上、改造して多目的の軍用車両として使うことができたからだ。例えば、ウラル-375はタンクローリーやクレーン車などに改造することができた。

 後のウラル-375の派生版はガソリンエンジンの代わりにディーゼルエンジンを搭載し、積載量も大きくなった。これによって武器も搭載できるようになり、輸送・支援車両から完全な軍用車両になった。

ウラル-4320とその軍用版

 1976年にウラル自動車工場が作り出したウラル-4320は、以後長らく軍用・兵器用プラットフォームとして量産された。

 走破性に優れ、プラットフォームとして適していたため、ウラル-4320には多連装ロケット砲「グラート」が搭載された。これはソビエト時代の最先端技術だった。後に軍は車の兵装を拡大し、ZU-23-2機関砲も搭載した。

 武装版ウラルはまずアフガニスタンで使用され、チェチェン紛争では主戦力の一つとなった。

 ウラル-4320はロシア連邦軍で今なお運用されている。何でもどこへでも運べるため、軍にとって欠かせないものになっている。積載量は7トンで、六輪駆動、オフロードでも時速85キロメートルの最高速度で走れる。基本モデルは4万8600ドルで、世界中の軍、特に独立国家共同体諸国や東欧、ラテンアメリカの軍で広く運用されている。

商用ウラル

 現在まで使用されている軍用の輸送・支援車両の他、ウラル自動車工場は鉱山用・林業用・石油・ガス採掘用の商用トラックも生産している。幅広い全地形対応車のブランド名は「ウラル・ネクスト」だ。

 ウラル・トラックは最も安価で最も燃費の良い全地形対応車の一つとして知られている。この働き者のトラックの価格は仕様によって異なり、5万ドルから15万ドルとなっている。

 新しいウラルは経済的な液冷式の4ストロークエンジンを持つ。出力は312馬力だ。摂氏マイナス45度からプラス45度の環境でも動くようにできている。積載量は7~12トンだ。積み荷は標準的な民間の商品から丸太、建材、燃料まで幅広い。

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