近年ロシア製の銃は人気ゲーム『プレイヤー・アンノウンズ・バトルグラウンド(PUBG)』や『エスケープ・フロム・タルコフ』でプレイヤーに選ばれるようになってきている。
ゲームではヴィントレスは9 mmという小口径で遠く離れた標的を倒せる特に有効な消音スナイパーライフルとして描かれている。ただし、どんな標的を貫くこともできず、障壁に隠れれば身を守れてしまう。
こうしたゲーム制作者の描き方は正しいのだろうか。
ソビエト初の消音狙撃銃VSSヴィントレスを試射するため、我々はハイスピードカメラを持つ撮影チームを結集し、200キロメートル離れたトゥーラに赴いた。
トゥーラはロシアの兵器製造の都と呼ばれ、多くの工場がロシア軍の兵器を生産している。我々はこうした工場の一つと一か月近く交渉し、射撃場に立ち入って狙撃銃ヴィントレスの試射をすることを許された。
実際に見てみると、ごつごつしていて不格好だ。しかし重要な特徴は、コンパクトで持ち運びに便利だということだ。射撃場の入口で私はいくつかの部品が入った簡単なバッグを渡された。かつてない奇妙な体験だったが、インストラクターは私でも4つの部品から実際のスナイパーライフルをレゴブロックのように簡単に組み立てられると考えたのだ。
「やってごらん、簡単さ」と彼は言い、いくつかの金属製と木製の部品を5秒で本物のスナイパーライフルに変える方法を教えてくれた。
正直、私はこの状況に衝撃を受けた。フランス映画『レオン』でジャン・レノがナタリー・ポートマンに屋上でスナイパーライフルの組み立て方と人の殺し方を教える場面を思い出したのだ。
ヴィントレスはまさにこのために作られた。ケースの下の方に隠して建物に忍び込み、密かに組み立てて遠くの標的を仕留められる銃なのだ。
私は5秒で銃を完成させた。できた銃はソ連製消音アサルトライフルAS Valを思わせた。はっきり言ってヴィントレスの見た目はAS Valの完全なコピーだ。なぜ両者がこんなに似ているのか困惑し、私は射撃場で立ちすくんでしまった。
撃ってみてまず分かったのは、消音狙撃銃は全く消音ではないということだった。一発目からはっきりと「パン」という銃声が響いた。私は驚いてインストラクターの顔を見たが、彼は大丈夫だと言った。銃にはウォーミングアップが必要だという。私は驚きを隠せなかった。狙撃のチャンスは常に一度で、標的を仕留めたら敵に気付かれずに密かに発砲地点を離れなければならないと考えていたからだ。とにかく、試験を続けた。
初め私はこの銃が100メートルの射撃でゲームと比べてどれほど正確かを確かめようとした。この距離での弾の散らばりは10~12センチメートル以内だった。2021年の現在、これはあまりに大きな誤差だ。.338フェデラル弾を使用する最近のスナイパーライフルなら、この5分の1の幅に弾を収められる。つまり、現在の銃は1987年に作られたヴィントレスよりも5倍正確だということだ。
さらにヴィントレスの弾丸はこの距離で弾道が「沈み」始める。標的に当てるには少し上を狙わなければならない。
この問題はいずれも『PUBG』と『エスケープ・フロム・タルコフ』で驚くほどよく再現され、視覚化されている。敵を倒すには、その少し上を狙い、弾道を読まなければならない。このことにも私は衝撃を受けた。ゲーム制作者はこの点を真面目に受け止めてディテールを再現しているのだ。
ヴィントレスは初速が秒速330メートルで鉛のコアを持つ9×39 mm亜音速弾を使用する。つまり現代の.308ウィンチェスター弾や.338フェデラル弾に比べてかなり弱い。
それでもヴィントレスの威力には驚かされる。厚さ20センチメートルのパイン材(柔らかい木材)やレンガの壁の後ろ、水深1メートル地点で身を守れるか検証したが、結果は否、これらの障壁で身を守ることはできない。
ヴィントレスは木材をものともせず貫く。もちろん木材といってもいろいろで、非常に耐久力のあるオーク材もある。しかし森の普通の松の木では9×39 mm弾を止めることはできない。
ヴィントレスは鉛のコアの弾丸でもレンガを粉砕するのに二、三発しか要さなかった。レンガの壁で身を守ることはできないだろう。
ヴィントレスの放った弾丸は水中で軌道を変えて標的から逸れることはあるが、いずれにせよ水中奥深くまで届く。5リットルのボトル4本(幅1メートル)は全く障害にならなかった。
このように、実際のヴィントレスはゲームに比べて驚くほど強力であることが分かった。
どちらのゲームでも、ヴィントレスは(口径から判断して)どんな障害も貫けない最弱のスナイパーライフルとして描かれている。ゲーム制作者には我々の射撃試験の結果を考慮し、ゲームに適切な修正を加えてもらいたいものだ。
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