2020年5月末、ロシア連邦軍は新型の国産自走砲コアリツィヤSVの配備を始めた。この鉄の怪物は、前線の後方奥深くに潜む重装甲車両を破壊するために開発された。例えば、コアリツィヤは10発の152mm砲弾を70キロメートル離れた標的に撃ち込み、敵の最新の戦車や砲兵部隊、迫撃砲部隊、さらには防空システムさえも鉄くずの山に変えることができる。
自走砲のユニークな点
ロケット砲兵部隊を指揮するミハイル・マトヴェエフスキー中将によれば、新自走砲は軍用車両のロボット化に向けた一歩であり、その特徴は正確な長距離射撃ができる点にあるという。
「コアリツィヤの射撃の誤差は2メートル程度だ。70キロメートル離れた標的を撃つことを考慮すれば、これはスナイパーライフルに匹敵する精度だ。それほど正確で、殺傷能力も高い」と軍事科学アカデミーのヴァジム・コジュリン教授はロシア・ビヨンドに話す。
しかも、同氏によれば、これは乗員用の「鎧」を持つ初の自走砲だという。砲兵らは車体内部の特殊な装甲カプセルの中に乗り込む。砲塔は無人で、カプセル内部の人員を二重に守る装甲板で覆われている。しかも、砲弾は特殊なコンベアで自動的に装填され、フガス榴弾が次々に供給されていく。
「コアリツィヤの砲弾も印象的だ。フガス榴弾の他、クラスター弾、徹甲弾、さらには飛翔中にレーザーで軌道を修正できる砲弾まである。最後のものは『クラスノポリ』と呼ばれる砲弾で、コアリツィヤ専用に開発されたものだ」とコジュリン氏は続ける。
コアリツィヤSVの特徴は、砲身を地平線に対して45度以上に持ち上げ、高い障害物を越えて射撃ができるということだ。このため自走砲は目視可能/不可能な標的を、山岳地など障害物で守られた陣地から、曲射あるいは直射で仕留めることができる。
「また、砲兵部隊はコアリツィヤのコンピューターに、照準兵が割り出した目標の座標だけでなく、無人機から無線で送られてくる座標を入力することもできる。こうしたデータは自動的に入力され、自走砲は自ら照準を合わせる」とコジュリン氏は話す。
コアリツィヤはGLONASSやGPSシステムを通して照準を合わせ、同時に最大10の標的の座標を記憶して自動的に砲撃することができる。