ペトリ皿の中に入っている物を調査するイリヤ・メチニコフ(1845 - 1916)。
Getty Images生物学者イリヤ・メチニコフは1908年に、先天性免疫(細胞性免疫)の分野の研究で、ノーベル賞を受賞。彼が発見したのは「食細胞」。つまり、有害な細菌を取り込んで破壊する細胞だ。
メチニコフは、ヒトデの幼生の研究で、そのプロセスがどのように働くかを示した。小さなトゲを幼生に突き刺すと、通常のものと異なるいくつかの細胞がトゲを取り囲んだ。メチニコフは、これらは白血球であり、それが炎症部位に集まって病原体を殺すのだと推測した。
しかし、メチニコフの理論は、学界からは懐疑的に見られた。当時、学界は、別の理論を支持していたからだ。
1908年、メチニコフは、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。ただし、ドイツの細菌学者・生化学者、パウル・エールリヒと共同受賞だった。そしてエールリヒは、メチニコフの発見に反する(と思われていた)理論の提唱者だった。エールリヒの「適応免疫」のアプローチは、後天的な抗体の生産を強調していた。
その後、20世紀の大半にわたって、免疫学は、エールリヒの適応免疫理論に沿って発展し続けてきており、メチニコフの説は、やや傍流の扱いだった。
ところが1980年代後半に、多くの細胞が――とくに免疫に関わる細胞、すなわち食細胞が――、特定の感染を識別する特別な受容体(レセプター)を持っていることが発見された。そしてそれらの細胞は、特定の遺伝子と結びついていた。
「こうして、すべての生物にとって、先天性免疫が(適応型と比べて)主な特徴であることが分かった。そして『進化のはしご』で既に進歩している生物にのみ…適応(後天性)免疫があった。しかも、先天性免疫こそが、適応免疫の“立ち上げ”とその後の機能を担っている…」。論文「免疫学の大革命」の著者たちはこう書いている。彼らは、メチニコフの発見からもたらされたブレークスルーを「免疫学の大革命」と位置づけている。
アレクサンドル・プロホロフとニコライ・バソフ。レベデフ物理学研究所の実験室にて。1966年。
オレグ・クズミン撮影/TASSアレクサンドル・プロホロフとニコライ・バソフは、「メーザー、レーザーの発明および量子エレクトロニクス分野の基礎研究」により、1964年にノーベル物理学賞を受賞。同じ分野で研究していたアメリカ人科学者、チャールズ・タウンズとの共同受賞だ。
プロホロフとバソフは、最初のマイクロ波量子発生器、すなわちメーザー(誘導放出によるマイクロ波増幅の装置)を開発した。
これとほぼ同時に、コロンビア大学のチャールズ・タウンズも、同様の実験を行っていた。ただしマイクロ波ではなく光を使い、レーザーを設計していた(誘導放出による光増幅)。
プロホロフの同時代人は彼の仕事ぶりを振り返っている。
「プロホロフは、科学者のグループに対し、彼らの仕事を根本的に変える方法について提案するようにと言った。1か月経って、皆がいくつかの形式的な提案しか持ってこなかったとき、プロホロフは、ハンマーを手に取り、実験装置をすべて破壊した。大スキャンダルとなり、科学者の半数が辞めた。しかし、残りの人々は新しい研究に着手した。その将来の成功は明白ではなかったが、数年後に、その研究は科学者たちにノーベル賞をもたらした」
プロホロフとバソフの研究は、量子エレクトロニクス(量子電子工学)の基礎を築き、さらにその後の研究開発を経て、長距離の宇宙空間光通信と光ファイバ通信が、間もなく現実のものとなった。
バソフは後に、レーザーが化学反応に及ぼす影響を研究したが、プロホロフは、レーザーの医療への応用に集中した。
最初の眼科用レーザーは、プロホロフの指導の下で開発された。また彼は、手術や口腔病学のほか、結核や腫瘍の治療でも、レーザーの応用のパイオニアだった。
アンドレ・ガイムとコンスタンチン・ノボセロフ(コンスタンチン・ノヴォショーロフ)は、ロシア生まれの物理学者で、グラフェンの研究で有名であり、この「超素材」は二人に、2010年度のノーベル物理学賞をもたらした。
グラフェンの厚さはわずか1原子だが、この素材の強度は鋼鉄の160倍だ。しかも、非常に効率的に電気と熱の両方を伝導するという驚くべき特性を備えている。地球上で最も有望な材料と呼ばれることもある。グラフェンは、エレクトロニクス産業にとって極めて魅力的な材料だ。
ノボセロフによれば、「グラフェンは、他のすべての素材にはない性質を持っている。これは、文字通りの意味で繊維だ。ナプキンのように扱うことができる。裏返したり、折りたたんだり、引き伸ばしたりできる」。こうした柔軟性にもかかわらず、それは地球上で最も強い素材である、と数年前にフォーブス誌とのインタビューでこの科学者は述べた。
この革命的な新素材の並外れた特性は、ノーベル賞の発表の席で、スウェーデンの物理学者Per Delsingによって紹介された。彼は、グラフェンから作られた1平方メートルのハンモック(1原子の厚さ)の強度は、体重4キロの猫を支えるのに十分だろうと言った。ハンモック自体の重さは、たったの約1ミリグラムで、ちょうど猫のひげ一本分だ。
グラフェンは、産業的規模で製造するのは難しいが、それでも、このスーパーマテリアルの用途は複数ある――髪の染料からゴルフボールまで。
科学者たちは、こう確信している。マイクロエレクトロニクスでグラフェンを使用することでコンピュータの速度を1000倍も向上させられるので、現在のシリコンベースの電子機器は時代遅れになるだろう、と。
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