ジャケット、ラケット、髪染め、衛星:グラフェンは世界をどう変えるか

Vollebak
 原子一つの厚みしかないグラフェンは、地上で最も前途有望な素材だ。間もなく、自動車産業、携帯電話産業、スポーツウェア産業、医療など、さまざまな分野で大変革が起きるかもしれない。

 ロシア人科学者アンドレ・ガイムとコンスタンチン・ノヴォショーロフが発見したグラフェンという「スーパーマテリアル」が、すでに我々の住む世界の形を変えつつある。グラフェンは鋼鉄の160倍強く、シリコンの250倍速く電気信号を伝えられる。また、銅の10倍の熱伝導性を持つ。 ガイムとノヴォショーロフが画期的な発見で2010年にノーベル物理学賞を受賞して以来、多くの企業がこの素材を研究してきたが、なかなか大量生産は実現しなかった。グラフェンは、産業規模での生産が非常に困難なのだ。

グラフェン「スーパージャケット」

  しかし2018年、このスーパーマテリアルはついに活路を見出した。ロンドンを拠点とするスポーツウェアブランドのVollebak社が、グラフェンで強化したジャケットを695ドルで発売したのだ。用意された1000品は3日以内に完売した。

  このジャケットは、グラフェンの保温性、電気伝導性、抗細菌性を利用している。しかし、生産プロセスは容易でない。まず、グラファイト鉱石をグラフェンのナノプレートレットに変える。次に、グラフェンの小さな層をポリウレタンと混ぜ合わせ、極めて薄い膜を作る。そしてこの膜をナイロンに貼りつける。

 「グラフェンをナイロンに貼りつけると、その力学的・化学的素性が根本的に変わる。例えば、ナイロン繊維が熱やエネルギーを伝えることは本来不可能だが、今ではそれができるようになった」と会社の関係者は話す。「グラフェンは原子一つの厚さしかないため、一グラムも重くすることなく、これを実現することができる。」

スマートフォンを冷やす

  ファーウェイ・テクノロジーズ社の最近の発表によれば、同社のMate20Xシリーズにおいて、スマートフォンに初めてグラフェンが利用されることになる。新製品は、グラフェン・フィルムとベイパーチャンバーを組み合わせたシステムによって冷却される。ファーウェイ社によれば、これによってスマートフォンはより長時間フルスロットルで使用できるようになり、「最もスムーズで、最も満足できるゲーム体験」を実感できるという。

グラフェンでゴルフ

  スピード、スピン、持続性といったゴルフボールの素性は、コアによって決まる。キャロウェイゴルフ社のデュアルコア「クローム・ソフトゴルフボール」シリーズの新製品は、通常のラバー素材にグラフェンを混ぜ、より薄いアウターコアを作った。同社によれば、このボールを使えば、ドライバースピンを減らし、打ち出し角を大きくすることが可能になるという。

  「ゴルフボール・コアの材料としてグラフェンの研究を始めた当初、我々は驚いた。持続性が200パーセントも改善されたからだ」とキャロウェイゴルフ社の関係者は話す。生産プロセスは容易ではなかったという。「繊細なナノ素材をラバーのコアに均質に混ぜ合わせる方法を確立するまでに数ヶ月を要した。」

グラフェンでテニスのチャンピオンに?

  2018年、グラフェンをいち早く採用した企業の一つ、スポーツ用品メーカーのヘッド社が、新しいテニスラケットのラインナップを発表した。同社によれば、グラフェンによって、重量の理想的な分配が可能となり、ラケットのヘッド部分の歪みを減らしてよりコントロールがしやすくなったという。

 ラケットのフレームにはグラフェンのリングが配されており、ねじれの安定性が増して打球にエネルギーを伝えやすくなっている。スピン・グロメットによりガットのより大きな動きが可能となり、その結果強力なトランポリン効果が生まれる。

より軽く強い車

  米自動車メーカー、フォード社は、自動車をより軽量で頑丈にするべく、他社に先駆けてグラフェンの利用を計画している。同社は、グラフェンを燃料レールカバーやポンプカバー、フロントエンジンカバーなどの部品に活用することを目指す。

  またグラフェンは、エンジン音を軽減して車をより静かにしてくれる。 フォード社は、グラフェンと気泡でできた材料を開発したが、これにより騒音が17パーセント削減され、強度が20パーセント増し、耐熱性が30パーセント向上した。この成果は、マスタングやF-150といったモデルに最初に反映される予定だ。

髪を染める

  米国のノースウェスタン大学の研究者らは、グラフェンのシートを髪染めに利用することを提案している。 現在普及している染料とは異なり、新製品には毒性がなく、抗菌性と帯電防止性がある。使いやすく、スプレーを使って自分で髪を染めることもできる。

  グラフェンが髪一本一本に柔らかな膜を作る。この方法は毒性溶媒や分子成分、極度の過熱を必要としない。従来の化学物質ベースの染料と同様、色は少なくとも30回の洗髪に耐えられる。グラフェンで補強された髪は帯電防止性と抗菌性があるため、髪はより長い期間清潔に保たれる。

  しかし、この新製品が店頭に並ぶにはまだ時間がかかる。現在購入できるのは、ブラック系とブラウン系の数色だけだ。 今年科学者らは、微小重力条件でグラフェンを試験し、衛星の冷却システムとしてのスーパーマテリアルの潜在性を分析した。より効果的な新しい鎮痛剤や抗癌剤を開発するための試験も行われている。

 滑り出しはゆっくりだったが、すでにグラフェンの時代は始まっている。そして前途は非常に有望だ。

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