ソ連のオフロードカーはどのようにして南極を踏破したのか

Tsy1980/Wikipedia
 ソ連は、独自の米国型オフロードカー「アンタークティック・スノークルーザー」を保有していた。しかし、この有名なアメリカの「巨人」が南極の雪の中で息絶えたときにもまだ、ソ連の雪上重トラクター「ハリコフチャンカ」は、ロシアの探検家たちを乗せ、凍った大陸の上を走っていたのである。

「ミール」基地

 1950年代、ソ連も他の国々と並んで、積極的な南極の科学的調査を開始した。ソ連は大陸の東部の実権を握り、1956年には拠点として「ミール」基地を設置した。わずか2年で、ソ連は南極大陸に5つの観測基地を置いたのだ。

 ソ連の専門家たちは、輸送車両について大きな問題に直面していた。通常のトラクターやトラックでは、過酷な南極の条件下では適切な操作ができないからだ。南極点に到達できる新たなオフロードカーが必要だった。しかし、ミールと南極点との距離は2,700 kmもあり、容易な任務ではなかった。

日射計の設定

 ソ連の技術者たちは、マイナス70度でも稼働し、雪や氷の上を長距離にわたって走り通し、さらに、研究者たちの住まいとしても機能するオフロードカーを作り出さなければならなかった。こうして、ソ連製オフロードカー「ハリコフチャンカ」(ハリコフの女性の意)が誕生したのだ。

米国型オフロードカー「アンタークティック・スノークルーザー」、マサチューセッツ、1939年

 ハリコフチャンカは、1930年代後半に設計された米国のアンタークティック・スノークルーザーに対するソ連の答えだった。アンタークティック・スノークルーザーは、車輪のついた本物の家だった。このクルーザーは、南極大陸全土を数回に分けて横断する計画だったが、わずか148㎞走行したところで乗務員らに放棄され、永久に姿を消したのだった。

連製オフロードカー「ハリコフチャンカ」

 ソ連の新型オフロードカーは、T-54戦車のボディとドライブシステムをベースにしたATT重砲兵トラクターを基盤にしている。このオフロードカーは、70トンの貨物でも牽引できるのだ。車体は、全長8.5m、全幅3.5m、全高4m。通常速度は5-11 km / hだ。

 広さは28平方mのワンルームマンションと同じくらいだろう。内部には、長い遠征に必要な設備がすべてある。作業場にミニキッチン、6人用の寝室、トイレ、食堂、デッキもある。

ソ連の第三次南極探検隊

 1958年後半には、計5台のオフロードカーが製造され南極大陸に移送された。翌年、ソ連の探検家たちは南極点への最初の遠征を開始している。9月27日、牽引用ソリとフル装備のハリコフチャンカ5台が、ミール基地を後にし西へと向かった。途中、車列は、コムソモール基地とヴォストーク基地に停車、ここが人の住む最後の場所だ。ラストスパートだ。

食料と燃料の輸送

 ヴォストーク基地から南極点まで、つまり1253km地点から2700km地点にかけての行程は厳しいものだった。すさまじい吹雪、不案内な土地、くわえて、致命的なものとなりかねない隠れた危険なクレバスがある。ニコライ・グルシンスキーとアレクサンドル・ドラルキンは、後に、回想記『南極大陸』でこう振り返っている。(ロシア語のサイト) 「我々の前には限りなく続く雪原が広がり、後ろには、我々のオフロードカーが残した2つの深い轍(わだち)があった。この轍は人類未踏の場所に刻まれているのだ。この轍は、ミール基地の友人たちのところに繋がっているのだと思った。極点へと進みながらも、我々は一人ではないと感じていた。ミールやヴォストークとは常に無線で連絡をとっていたから、我々は本土で起きていることは常に知っていた。」

ノヴォラザレフスカヤ基地

 12月26日、ソ連の探検隊は南極点に到着した。近くにあるアムンゼン・スコット基地のアメリカ人チームが出迎えてくれた。全行程に89日かかった、米国の基地に3日間滞在した後、ソ連の科学者たちは帰路についた。

ソ連の南極探検隊、1988~1989年

 ほぼ20年間、ハリコフチャンカは、ソ連の人たちのための南極の主要輸送機関として稼働し、南極大陸にある6つの基地をつないでいた。1975年には、より高度なハリコフチャンカ2が設計され、南極の科学者たちの元へ運ばれた。これは、今日もなお、ロシアの極東調査で使用されている主要なオフロードカーだ。ハリコフチャンカ3の計画も1980年代には持ち上がったが、ソ連崩壊により実現されることはなかった。

 

*アメリゴ・ヴェスプッチとジェームズ・クックは、南極大陸の存在を推測しただけでしたが、ロシアの船乗りたちは約200年前に南極大陸を発見していたということをご存じでしたか?ロシアの探検家たちが、どのようにして、イタリア人やイギリス人に先んじて南極大陸を発見したのか知りたければこちらを

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