ロシア人にとって、ヤンデックスは単なる会社ではなく、ナショナルブランドに他ならない。ロシア人は、国際的なまたはアメリカのブランドの服を身につけるのを好むが、ことオンラインサービスに関しては、“ご当地”のほうを選ぶ。
ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンがグーグルを立ち上げる以前の1997年に、イリヤ・セガロヴィチとアルカジー・ヴォーロジは既にヤンデックスを設立している。以来、同社は依然としてロシアの業界トップであり続けているが、競争は毎年厳しくなってきている。
グーグルがロシアのインターネット市場に注目しているのは確かだ。当地でのインターネット普及率はまだ53%にすぎず、他のほとんどのヨーロッパ諸国での80~90%をはるかに下回っている。しかも、1億4400万人の人口をかかえるロシアでは、ここ数年、インターネットの成長率は2桁台を続けているのだから。
ヤンデックスがロシアのインターネット市場をリードしているわけは?その5つの理由を挙げよう。
グーグルでは、ウェブサイトの重要性を評価するために、同社が開発したアルゴリズム「ページランク」に重点を置いているが、ヤンデックスのランキング・アルゴリズムでは、単語間の距離やドキュメントとクエリ(問い合わせ、処理要求)との関連性も考慮される。さらに2017年、ヤンデックスは、機械学習にもとづく新しいアルゴリズム「CatBoost」を発表し、より効果的な検索を可能にした。
ヤンデックスは、ロシア最大のメディア企業であり、無料のメール、地図、音楽、ビデオ、フォトストレージその他、グーグルも提供する数多くの製品を出しており、YahooやDropboxなどの競合他社のユーザーを引き付けた。しかも、ヤンデックスの各種サービスは、他社の品質に比肩するばかりか、現地のユーザーにうまく適合しており、その適合度がより優れていることもしばしばある。
グーグルのタクシーについて聞いたことがあるだろうか?もちろんないだろう。そんなものは存在しないのだから。だがロシアでは、ヤンデックス・タクシー(Yandex.Taxi)は、Uberよりも人気がある。実は、両社は2017年に合併し、ロシアで最も強力なタクシーサービスの一つを生み出した。また、ヤンデックスは、他の業種のメジャーな国際企業にも取って代わろうとしている。例えば、インターネットを利用した決済サービスの米企業「PayPal」に代わり得るYandex.Moneyを運営している。
天気予報なんて、と思うかもしれないが、天気予報がなかったら、ふだんの話題がほとんどなくなってしまうだろう。ヤンデックスは、最先端のアルゴリズムのおかげで、世界で最も正確な天気予報システムの一つを開発することができた。
それは「風の地図」も含んでいる(各地区の風の向きや風力をリアルタイムで示す)。当初、開発者はこのサービスを終了する予定だったが、ロシアの漁師や釣り人からの要請を受けて考え直した。これらのユーザーは、魚の移動のパターンを把握するために使っていたのだった。
当然のことだが、ヤンデックスは、ロシア語の検索に優れており、ロシア市場向けに特別に開発されているから、多くの言語上の障害を克服することができる。
ついでに言うと、ヤンデックスは、キリル文字ではなくラテン文字を使ってロシア語が書かれた場合の、いわゆる「CrazyFont」を理解するのに最高だ。こういうCrazyFontは、海外に住むロシア人の間でとくに人気がある。
最後に、これが一番重要な点かもしれないが、ヤンデックスは「老舗」である。2004年にグーグルはロシアに進出したが、遅きに失した感があり、このアメリカの検索エンジンは手ひどい敗北を喫した。以来 今日にいたるまで、ヤンデックスは、ロシアで最も人気のある検索エンジンで、最大手のインターネット企業だ。
しかし2014年には、モバイルでインターネットサービスを利用するロシア人が増えてきたことから、グーグルの立場が強まり始めた。露インターネット企業大手の「Mail.Ru Group」によると、スマートフォンのロシア人ユーザーの75%が、アンドロイドを使用しており、グーグルをメインの検索エンジンにしている。
だがヤンデックスは反撃に転じる。2016年には、グーグルのロシア現地法人がロシアの反独占規制に違反していると主張し、グーグルのアンドロイド・オペレーティングシステムの調査を求めた(*グーグルは、モバイルのメーカーに対し、ロシアで販売されるアンドロイド搭載の端末に、グーグルのアプリを独占的かつ優先的にインストールするように求めていた――編集部注)。
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