星への憧れ

アレクサンドル・デイネカ作「「宇宙開拓者たち」」=

アレクサンドル・デイネカ作「「宇宙開拓者たち」」=

ロシア通信撮影
 ユーリー・ガガーリンによる世界初の有人宇宙飛行から、今年で55年となる。4月12日のその記念すべき日は、宇宙飛行の日(Cosmonautics Day)として世界中で祝われている。ロシアでは、月や遠い惑星の開発への予算の削減にもかかわらず、今も、宇宙開発が国家の重要課題であり、人々が星に憧れている。

 「同志たち!ソビエトの大地は、宇宙の岸辺となった!」古いポスターでは、歓喜した若者が微笑んでいる。その背景には、惑星、クレムリン、空を飛ぶロケット。その手には、往復の切符。往路は宇宙へ、復路は祖国ソ連へ。ソ連人は、何世代も、自分たちは「宇宙征服の年代記を綴る」との想いを胸に育った。

  1958年から1963年にかけて、ソ連では、宇宙をテーマとする記録的な数のポスターが発行された。宇宙は、プロレタリアートのモチベーションのツールとして利用されていた。さらに、ソ連は、地球周辺のスペースを開発しつつ、自国の技術力を米国に誇示することができた。

 

最大の防御は攻撃?

 1957年10月4日に軌道へ打ち上げられた初の人工地球衛星は、ソ連の大きな成果となった。もう一つの大成功は、1961年4月12日のユーリー・ガガーリンの飛行である。全世界が息を潜めて宇宙における最初の人物を見守っていたとき、アメリカ当局は、少なからぬ不快感を味わっていた。というのも、ガガーリンの宇宙船「ヴォストーク-1」を軌道へ運んだ運搬用ロケットR-7は、もともとは米国へ核弾頭を運ぶために設計されていたので。 

ユーリイ・ガガーリン=ロシア通信ユーリー・ガガーリン=ロシア通信

 これに対抗して、米国は、1969年に人類史上初の月面着陸を成功させ、反復使用型宇宙船スペースシャトルの開発に乗り出した。ソ連は、スペースシャトルが核兵器もしくはソ連の衛星の略奪のためにさえ利用されうることを懸念し、それを阻むために宇宙プログラム「エネルギア-ブラン」の推進へ全力を傾けた。

 

競争から協力へ

 

米国とソ連は、自国のプランの実現のために莫大な資金を費やした。プログラム「スペースシャトル」は、宇宙技術発展史上における記録的な赤字計画となり、「ブラン」は、1988年11月15日に唯一の上首尾な飛行を成し遂げたものの、このプログラムは、1990年代初めに打ち切られた。

 1990年代初めの経済的混乱期にも、宇宙は、ロシア国民にとっての慰めとなっていた。とはいえ、「その代わり、私たちの宇宙船は、遠い宇宙にシュプール(航跡)を描く」というフレーズは、ますますアイロニカルな響きを帯びるようになった。

 ソ連の軌道ステーション「ミール-2」の創設プロジェクトは、経済的困難のために取り止めとなった。1992年6月、ロシアと米国は、宇宙研究における協力に関する協定を締結した。ロシア連邦宇宙局(ロスコスモス)は、国際宇宙ステーション(ISS)の創設をアメリカ航空宇宙局(NASA)に提案した。 

第42次ISS長期滞在クルー=Bill Stafford/NASA撮影第42次ISS長期滞在クルー=Bill Stafford/NASA撮影第42次ISS長期滞在クルー

 ここ数年、どの国の宇宙飛行士も、もっぱらロシアの宇宙船「ソユーズ」でISSへ飛行している。同様の宇宙船の創出が、ついに叶わなかったために。現在、NASAは、新たな輸送船の開発をスペースXとボーイングの両民間企業に委託している。

 

新たな宇宙開発プログラム

 3月末、ロシア政府は、2016年から2025年にかけての新たな宇宙プログラムの案を承認した。通信・テレビ・ラジオ放送の軌道衛星群の整備、地球周辺軌道における宇宙装置群の設置、2024年まで運用が継続される国際宇宙ステーション(ISS)のロシア・セグメントの充実などが、優先事項として挙げられている。 

 ロスコスモスのイーゴリ・コマロフ長官は、「その期間に、ISSのロシア・セグメントにモジュールが装備され、2024年以降の飛行の自律性を保障するシステムがそれらのモジュールに追加される」と述べた。将来的には、ロシアの軌道ステーションが創設される可能性もあるが、これに関する最終的な判断は、まだ下されていない。 

 極東では、「ヴォストーチヌイ」宇宙基地の建設が続いている。ソ連崩壊後、ロシアは、旧ソ連邦構成共和国のカザフスタンから「バイコヌール」宇宙基地を借り受けている。コマロフ氏によれば、「ヴォストーチヌイ」宇宙基地から最初のクルーが国際宇宙ステーション(ISS)へ飛び立つのは、2023年とのこと。

 

案外近い星

 宇宙プログラムは、経済危機のために、より実用的なものになった。たとえば、月の植民地化に関連したプロジェクトは、プログラムから姿を消した。かつて、ロシアは、月からの鉱物の採取を計画していた。また、宇宙経済の最適化のために、運搬用ロケットの数を削減する決定が採られた。しかし、ロスコスモスは、「基本的な方向および学術的なプログラムは、維持できた」としている。 

 宇宙競争は、とうに終わったが、ロシア国民は、星への愛着を抱きつづけており、現在、有志らは、クラウドファンディング・フラットフォームで「宇宙のための」資金を募っている。 

 たとえば、2016年初め、有志グルーブは、月へ向かう宇宙装置を創出するために、ブームスターター(Boomstarter)でほぼ200万ルーブルを集めた。その装置の目的は、ソ連の無人月探査機「ルナ」や月面車「ルノホート」およびアメリカの宇宙船アポロの着陸場所の写真撮影である。

 

 また、今年、ロシアの機械製作大学の研究者らは、やはりインターネットの募金で作られたミニ衛星「マヤーク」を打ち上げる予定である。プロジェクトの立案者らによれば、「宇宙は近くて手が届くものであることを示す」のが、その目的である。

 なお、ロシアでは、宇宙技術を発展させつつある民間企業が、ますます増えている。たとえば、3月半ば、民間宇宙会社「コスモクルス」は、宇宙ツアー用の反復使用型システムの開発へ参入した。 

 ロスコスモスのデニス・ルィスコフ副長官は、国家は低い軌道を段階的に民間企業へ移譲する予定であるとし、「連邦機関は、さらに先へ進み、月や小惑星の調査および火星へのミッションに取り組む必要がある」と述べている。