ロシアのプーチン大統領、ベラルーシのルカシェンコ大統領
=アレクセイ・ニコリスキー/ロシア通信ロシアとベラルーシの関係が悪化している。両国はこれまでにも、牛乳、砂糖、石油をめぐり、またその他経済貿易面で、たびたび対立してきた。だが互いに受け入れ可能な妥協をして、問題を解決してきた。
今回もベラルーシとロシアは従来の流れに乗っているかのように見える。ベラルーシがガス料金を滞納し、ロシアはベラルーシへの石油の輸出を減らした。
ところがルカシェンコ大統領側から発せられた石油ガス問題へのクレームは、予想外に長く尾を引いている。クレームの一部はもはや同盟国らしからぬ行動に発展している。両国の関係が今後どのような方向に向かうかはわからないが、今回は新しい条件が加わった。それはルカシェンコ大統領がロシアと西側の間で巧妙に立ち回ることを、クレムリン(大統領府)が苦々しい思いで見ているのだ。
このシナリオには確固たる根拠がある。例えば、ベラルーシ経済を事実上助成しているロシアからの石油輸出。ベラルーシは石油製品を西側に売り、ロシア産石油の安さがその輸出歳入になっている。これに加えて、ベラルーシの経済はロシア市場に密に結びついている。ベラルーシの2015年の貿易高でロシアの占める割合は48.3%。
ルカシェンコ大統領は従来通りにしようとするだろうと、CIS諸国研究所ユーラシア連携・SCO発展部のウラジーミル・エフセエフ部長は考える。「ロシアはこのような対立でいつも譲ってきた。ルカシェンコ大統領はそれに慣れている。状況が変化していることにルカシェンコ大統領はあまり気づいていない。”無料の朝食の時代”は終わった」とエフセエフ部長は話し、ルカシェンコ大統領が西側とベタベタするのは明らかに一線を越えていると指摘した。ベラルーシは例えば、ロシアの空軍基地を置くことに合意していたが、突然覆したりしている。
ロシアにもあまり選択の余地はない。「石油キス交換プログラム」のモデルはもはや実現不可能で、ベラルーシ向けのガス価格も値上がりする可能性が高い。「だがルカシェンコ政権はこれらの助成金なしで存続できないことを、クレムリンはよく理解している。第二のウクライナにならないように、食べさせていくしかない」とコルグニュク課長。
西側のベラルーシに対する立場は最近、かなり軟化したと、ロシア国際問題会議のアンドレイ・コルトゥノフ事務局長はロシアNOWに話す。ルカシェンコ大統領は一時的に「ヨーロッパ最後の独裁者」と認識されなくなり、ヨーロッパのエスタブリッシュメント(支配階級)に仲裁者とみなされている。
資源が限られ、地政学的紛争に疲れているベラルーシにヨーロッパが提案できることは、政治的支援である。「ただ、ベラルーシはヨーロッパではなく、受けることのできない低金利の融資と安い石油を必要としている」とエフセエフ部長。
このシナリオの結末はベラルーシにとってみじめなものになると、専門家は考える。これはルカシェンコ大統領の政治的自殺行為となる。ヨーロッパの支援は長くは続かず、ベラルーシはロシアの助けもないボロボロの状態になる。
これは最も可能性の低いシナリオである。ベラルーシが最初にEU(欧州連合)統合を試みるものの、許容可能な条件を見つけることができない場合にのみ起こる。そうなれば政権は困難な状況に置かれるようになり、交代せざるを得なくなる。ロシアの条件を受け入れる者が新しい政権に就く。
力ずくの政権転覆は今のところ実現不可能としか思えない。「マイダン(ウクライナの革命広場とその運動)は外部からの介入がなければ発生しない。アメリカが介入したら、露米関係は改善しなくなる。EUもウクライナの後でそれを必要としていない」とエフセエフ部長。ベラルーシ国民も武器を手にしないという。理由は単純で、武器は誰かからもらう必要があるからだ。ベラルーシの政治的”小草原”は踏み荒らされておらず、野党もいない。ルカシェンコ氏に替わる人はいない。ルカシェンコ大統領か、または無人か、である。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。