ロシア中央銀行は、自行の3通りの全予想において、対露制裁は中期的将来にわたって維持される、との見方に依然として立脚している。ロシア通信は、これについては2016年12月16日のモスクワでの記者会見でエリヴィラ・ナビウリナ中央銀行総裁が述べた、と報じている。
同総裁は、「私たちは、リスキー、ベーシック、原油高という3通りの全予想において、制裁解除に関する事項を含めなかった」と語った。同氏によれば、米国の次期大統領に選ばれたドナルド・トランプ氏の政治的執着も、これらの予想に影響を及ぼさない。
注目すべきなのは、ロシア当局が、欧州復興開発銀行(EBRD)がロシア国内のプロジェクトへの支援を取り止める原因となった対露金融制裁に異を唱える意向を先に表明していた、という点である。
ロシアの経済紙「RBCデイリー」が政府筋の話として伝えるところでは、 2017年、EBRDの七番目に大きな株主であるロシアは、すべての対露金融制裁の違法性に関する問題を理事会に諮る予定である。
制裁によって、ロシアは、すでに2年にわたり、1991年に旧社会主義諸国を援助する義務を負ったEBRDからの新たな投資へのアクセスを手にしていない。同銀行の対露投資額は、年間20億ドル(約2340億円)に達していたが、2014年の制裁導入後、同銀行は、新たなロシアのプロジェクトへの参加を見合わせ、ウクライナでのプロジェクトへより積極的に投資するようになった。しかし、ロシア当局は、同銀行によるロシアでの活動の拒否は、法的な手続きに則ったものではなかった、と考えている。
EUの制裁は、ロシア経済の個々の部門に限定されているか、もしくは、個々の個人および法人を対象としているにもかかわらず、EBRDは、ロシアにおけるすべての新たな業務の準備を停止した。ロシアのデニス・モロゾフ理事によってEBRDの理事会に提出された覚え書きによれば、ロシアの権利は、同銀行の定款ばかりでなく国際公法(Public International Law)の観点からも侵害されている。会社グループ「フィナム」のアナリスト、ボグダン・ズヴァリチ氏は、「審理はかなり長引く可能性がある」との慎重な見方をしており、同氏によれば、ロシアが前向きの決定により何らかの大きなボーナスを手に入れることは、おそらくない。
ところで、2016年11月、ルクセンブルクの欧州司法裁判所は、ロシアの大富豪アルカジー・ロテンベルグ氏の個人的制裁に対する異議申し立てを一部認めた。
裁判所の考えでは、2014年、EU理事会は、同企業家の資産凍結のために誤った根拠を選択したが、2015年、そうした決定のための然るべき根拠が、すでに現れた。
当初より、ロテンベルグ氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に近いことから制裁リストに含まれていた。EU幹部によれば、同氏は、ロシアの国家元首の近しい友人の一人である。
ボグダン・ズヴァリチ氏は、「決定は、事実上、制裁を科された他のロシア市民らにとっての先例であるだけに、重要である。他の一連の人々が裁判を通して欧州の制裁に異を唱えることにすれば、裁判所がそれらの人々に関しても同様の決定を行うことは、十分に考えられる」と語る。しかし、同氏によれば、そうした先例がロシア全体およびビジネスに対する制裁プロセスに何らかの影響を及ぼすことは、裁判所が資産を凍結したままにしたこともあり、おそらくない。投資会社「フリーダム・ファイナンス」のロシア証券市場運用管理責任者、ゲオルギー・ワシチェンコ氏は、「法廷での制裁との闘いに力を費やすのは、ほとんど意味がない。裁判所は、政治的決定を取り消せないのだから。しかし、まさに制裁支持者らの政治的立場は、もはや一枚岩ではない」と語る。さらに、同氏は、国営銀行や企業はすでに制裁に慣れているとし、「制裁は、原油やガスの採取および販売には何の影響も及ぼしていない」と付言する。
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