ドイツ白書でロシアは仲間か敵か

ドイツのウルズラ・フォン・デア・ライエン国防相=

ドイツのウルズラ・フォン・デア・ライエン国防相=

DPA / Vostock-photo撮影
 ドイツにとって、ロシアはもはやパートナーではなく、ライバル。このように記されたドイツの2016年版防衛白書の草案について、ロシアで意見が割れている。これを「敵対の兆候は一切ない」と考える人、ドイツがロシアとの「軍事的対決」戦略に移行したと考える人がいる。

 ドイツの「ディ・ヴェルト」紙は4日、2016年防衛白書が作成されていると報じた。その草案には、ロシアが2006年版防衛白書にあるようなドイツの「優先的なパートナー」ではなく、ライバルになっていると記されている。

 このような変化の理由を、ロシアのクリミアとウクライナ東部での「国益の乱暴な確保」、「国際法の違反」、「国境の一方的変更」に向けた行動と説明している。「根本的な政策の変更なしに、ロシアは予見可能な将来、ヨーロッパ大陸の安全保障への挑戦になる」と草案に記されている。

 

「遺憾と懸念」

 ロシア政府はこの情報を受け流すことなく、「遺憾と懸念」を呼ぶものとの見解を示した。「このような立場は、むろん、対立行動につながる可能性のあるもので、決して相互信頼と協力の関係を促すものではない」とロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は述べた。

 ロシアがドイツとの関係を大切にし、ロシア政府にとって「支柱」となっていることはよく知られており、一部専門家によれば、1960年代末から続いているのだという。このような背景があることから、白書の草案の評価はロシア政府を混乱させる。

 とはいえ、ドイツは結論を急いでいない。リュディガー・フォン・フリッチュ在ロシア・ドイツ大使は、白書がまだ発表されていないことを強調。「プロパガンダに注意を払うのはやめようではないか」と話した。ただ、どこのプロパガンダの話をしているのかは説明しなかった。より具体的な発言を行ったのは、ドイツのウルズラ・フォン・デア・ライエン国防相。白書には「ライバル」または「敵」という言葉は入らず、ドイツはロシアに対して「挑戦の伴う問題を有している」のだと話した。

 

大西洋の方向に動く

 ロシアの一部専門家は当初から、ディ・ヴェルト紙の情報を脚色しないよう求めていた。ロシア科学アカデミー欧州研究所ドイツ研究センターのウラジスラフ・ベロフ・センター長は、敵ではなく、競争相手の話が書かれているのだと話した。同時に、ドイツ国防省が「ロシアの脅威」で予算を増やしたいと考えているだけだという。それでも、ロシアに対するドイツの態度が変化していることは認める。ドイツは今や、ロシアを挑戦と受け止めており、白書をめぐる話全体で主要な存在のようだ。

 ドイツがロシアの位置付けを変えることは両国関係に影響を及ぼすのだろうか。「戦略的意義への評価と苦情」としての白書の重要性を念頭に置くと、白書の草案は、ドイツが大西洋の方向(アメリカとのより密接な関係)へと動いていることを証明しているのではないか、と「世界政治の中のロシア」誌のフョードル・ルキヤノフ編集長は話す。ただ、ロシアとの関係を緊張させるようなこの動きは、最終的なものではない。ドイツには、国の戦略的政策をめぐる闘争があるという。

 ドイツがロシアへの対応を変えることで、すぐに現実的な影響がおよぶと考える必要はないと、ルキヤノフ編集長。「白書は直接行動の表現ではなく、ある程度一般的な方針」。とはいえ、ドイツが北大西洋条約機構(NATO)で自国の軍事的可能性と同盟の可能性を確固たるものとするために、NATOでより積極的な役割を果たすことも将来的にあり得る。ドイツは、1945年以降失っていた軍事大国の地位を復活させるために、「ロシア要因」を利用するかもしれない。

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