ロシアの政権党 2.0

統一ロシア党大会で党首のドミトリー・メドベージェフ首相が演説=

統一ロシア党大会で党首のドミトリー・メドベージェフ首相が演説=

ロイター通信
 2011年の下院選挙は、与党「統一ロシア」にとってかつてない不成功に終わったが、この政権党は今年の選挙にはどう備えているのだろうか?

 「統一ロシア」は、ロシアで最も高い支持率を誇り、また最も政権に近いが、創設以来初めて、経済が下降傾向にあるときに選挙に臨むことになる。選挙は9月だが、党幹部はもう今からいろいろ心配している。 

 統一ロシアは未だに、下院および地方議会で、過半数を占め続けているが、2011年の前回の選挙は、党にとって一つの転機となった。選挙の不正の糾弾、選挙結果発表後の街頭抗議行動、そして、野党勢力がかなりうまく宣伝したミーム「統一ロシアは詐欺師と泥棒の政党」などは、党のイメージに打撃を与えた。

 2月5日、統一ロシア党は、来る選挙に向けての党大会の活動を開始した。大会で唱道されている主な理念は、国民的団結だ。国が強くなったのは、経済が申し分なかった時期ではなく、「我々が団結していた時だった」と、党首のドミトリー・メドベージェフ首相は演説で指摘した。

 

エリートのためのブランド

 党が自分で作ったイメージで、党員は2011、2012年の抗議行動に遭う羽目となったが、このイメージは、長年にわたって出来てきたものだ。

 統一ロシアは、2001年に、2つの政治運動、すなわち「統一」と「祖国・全ロシア」が統合されて生まれたが、この新党は、様々な地域のエリート集団の立場を中央の政策に近づけねばならなかった。だがその際、イデオロギーの統一は予期されていなかった。

 「歴史的にこの党の枠内には、いくつかのイデオロギー的潮流が存在してきた。愛国的(保守的)なプラットフォームもあれば、中道左派のそれもあり、党内派閥のような様相を呈している」。こうロシアNOWに語るのは、社会経済政治研究所のアレクサンドル・ポジャロフ所長だ。

 ロシアでは、最近15年間、リベラル政党が極めて脆弱であったことを考えると、統一ロシアは、リベラルな有権者の要望を満たしつつ、中道右派のかなりの部分もカバーしてきたことになる。「それはつまり、2000年代に生まれ、自らを大統領の支持者だとみなしている中流階級だ」。ポジャロフはこう説明する。

 その意味では、統一ロシアは、ある単一の思想的路線をもった、典型的な政党ではあるまいが、日本の自由民主党や、ドイツキリスト教民主同盟(CDU)とキリスト教社会同盟(CSU)の統一会派のような政党ではある――。こう指摘するのは、政治経済コミュニケーション・エージェンシーのドミトリー・オルロフ社長だ。

 長年、統一ロシアの名簿が、地方では、知事や地方政府の閣僚に上位を占められてきたことで、「官僚の党」のレッテルが貼られることになった。とはいえ、その成功の担保――つまり、プーチン大統領に近いこと(法的には、大統領は党と関係をもたないものの)――、そして、政権党ならではの、様々な行政的手段を駆使できる強みのおかげで、磐石の立場にあり続けてきた。 2007年には、プーチン大統領が党の比例代表名簿一位となり、得票率は過去最高の64,3%に達し、450議席中 315議席を占めた。

 

目指すは“隙間”を大きくすること

 ところが、行政的手段を容易に駆使でき、それを濫用したせいで、2011年の下院選挙戦においては、統一ロシアは、あろうことか、政権にとってほとんど最悪の頭痛の種となった。抗議としての投票(「統一ロシア以外の政党に投票しよう」)により、共産党その他の野党は、かなりの票を獲得した。

 だが、2016年の 下院選では、こういう抗議は起こるまい。その理由は、第一に、2011年選出の野党は、あれはいけない、これもいけないという禁止法案を大量に提出したことで目立ち、その結果、有権者の目から見ると、野党と与党の差はまったく消えてしまったからだ。調査によると、人々は「この連中はみんな与党さ」と言っている――。こう話すのは、政治調査国際研究所のエフゲニー・ミンチェンコ所長だ。

 第二に、下院の野党は、実際のところ、議席の過半数を占めようなどとは考えておらず、選挙のニッチ(隙間)のなかで行動しているにすぎない。

 「今日、ロシアでは、いわゆる1・5党体制ができている。つまり、主要な政党である与党と、それ以外の諸政党で、一定の社会的支持を得てはいるものの、与党よりも低い」。オルロフ氏はこう説明する。したがって、野党の戦いの意味は、過半数を占めることではなく、ニッチを広げることにあるという。

 

ロビーを出て

 だから今年、統一ロシアが不正選挙に走ることはあるまい。クレムリンにとって、勝利は重要だが、絶対に何が何でもというわけでもない。「肝要なのは、現在の議席配分を維持すること。つまり、“愛国的コンセンサス”のある政党が選挙に勝つことだ」と、ミンチェンコ氏は言う。

 統一ロシアは、連邦(全国)レベルでの公開プライマリーズ(一般有権者の参加のもとで党の候補者を選ぶ予備選挙)を初めて行ったが、これは、従来慣行となっていた楽屋裏での談合にかわり、公開性をアピールしたものだ。

 2月5日の、統一ロシアの党大会で、党最高会議の委員の3分の1が刷新されたことが明らかになった。これは、党の“重鎮”を、社会のオピニオンリーダー(医師、俳優、作家、慈善家など)に替えようとする試みで、事実上、与党幹部の“再起動”がなされることになる。「これは、統一ロシアの進化の建設的プロセス。これにより、役人の党というイメージが払拭される」と、ポジャロフ氏は言う。

 統一ロシアの支持率は、大統領のそれの反映ではあるが、現在の社会・経済状況は、大統領支持率には今のところ影響していない。「とはいえ、苛立ちを政権党にぶつける可能性はある。これが選挙戦でのリスクだ」。ロシア経済・国家行政アカデミー(RANHiGS)・社会科学研究所のエカテリーナ・シュリマン准教授はこう述べる。

 こういう状況では、クレムリンにとっては、「全ロシア人民戦線」が支持する独立系の候補が重要になる。これは、プーチン大統領により2011年に創設された超党派の国民運動体で、与党そのものとはみなされないが、十分政権寄りとみられている。

 統一ロシアの現在の支持率は約50%で、オルロフ氏の意見では、結局のところ、この党が下院のの議席を増やすチャンスもあるという。

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