プーチンは国連の演説で何を言う

AP
 ウラジーミル・プーチン大統領は国連総会の一般討論演説に参加する予定だが、壇上で厳しい演説をするのではないか、との憶測が出ている。専門家はそのような演説に対する警告を発している。 ロシアでは、ニューヨークで9月に開催される記念すべき第70回国連総会にプーチン大統領が参加するとのニュースについて、活発にコメントが発せられている。一方で、この重要な外交に先立ち、ロシアとアメリカの感情的な緊張関係を証明するような、外交上の措置や声明がアメリカからあった。

マトヴィエンコ上院議長の訪米問題

 ヴァレンチナ・マトヴィエンコ上院(連邦会議)議長は6月始め、第4回世界議長会議(8月31日~9月2日、ニューヨーク国連本部)、第10回女性議長会議(8月29日~30日、ニューヨーク国連本部)に招待された。また、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長との会談も予定された。

 しかしながら、マトヴィエンコ議長は、アメリカ側から提示された滞在期間および条件を受け入れられないとして、参加を見送った。発給されたビザの有効期間は3日で、マンハッタン中心部から25キロ以内の滞在に制限されていたのである。

 「このような不備のあるビザの条件を受け入れることはできない」とマトヴィエンコ議長。アメリカは「自由な意見交換を妨害」しており、自身および他の国会議員に対して発動した制裁は「野蛮」で「中世」のようだと述べた。

 マトヴィエンコ議長は、アメリカが発動した対ロシア制裁の対象政治家。アメリカが完全なビザの発給を拒否したのは、これと関係している。

 

プーチン大統領の10年ぶりの国連演説

 このような状況の中、プーチン大統領の一般討論演説への参加が発表された。セルゲイ・ラブロフ外相、ゲンナジー・ガチロフ外務次官などからなる、多人数のロシア代表団を率いる。

 プーチン大統領が国連の壇上で演説するのは10年ぶり。これまで2000年、2003年、2005年の国連総会で3回演説している。その後はドミトリー・メドベージェフ大統領(当時)が演説し、プーチン大統領は2012年に再選して以来、アメリカを訪問していない。

 ラブロフ外相は最近、プーチン大統領とアメリカのバラク・オバマ大統領の会談がニューヨークの国連総会の場で行われる可能性を示唆。ロシアのマスメディアは発言に注目した。「アメリカは接触を継続したいというシグナルをロシアに送ってきている」、「アメリカ側からこのような提案があれば、ロシアの大統領は建設的にそれを検討すると思う」とラブロフ外相。

 アメリカ政府はすぐにこれに反応。ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)は、アメリカとロシアの大統領が近い将来会談する予定は今のところなく、その準備も行われていない、と伝えた。

 この直後から、モスクワでは、首脳会談の可能性についての憶測が止んだ。

 

ミュンヘン演説NO.2

 両国の関係において緊張が増していることから、ロシアの一部専門家は、プーチン大統領が国連で厳しく批判的な演説をするのではないかと考える。

 独立系「政治情報センター」のアレクセイ・ムヒン所長はこう話す。「恐らく、ミュンヘン演説NO.2になるだろう。プーチン大統領は対ロシア経済制裁の違法性、また制裁によって生じている不均衡について話すのではないか。また、(世界の)リーダーの役をこなせないくせに、リーダーの仮面をあらゆる方法で装着しているアメリカに向けて、厳しい言葉が発せられるのでは」。

 ミュンヘン演説とは、プーチン大統領が第43回「ミュンヘン安全保障会議」(2007年)でアメリカの政策を痛烈に批判した演説である。

 「大統領はさまざまな地域連盟(BRICS、SCO、EurAsEC)の急速な発展に触れ、国連やWTOの権限が失われつつあることなどによる、自然な発展の性質を強調するだろう」とムヒン所長。

 だが、これが国際社会への正しいメッセージになるとは考えない専門家もいる。

 モスクワ国際関係大学・国際金融学部のヴァレンチン・カタソノフ教授はこう話す。「プーチン大統領が国際テロ、中東、難民の問題を中心とした演説をしたら、がっかりする。そこに『西側支配の時代の終焉』、多極システムの構築といった厳しいレトリックがともなったら最悪」。ちなみに「西側支配の時代の終焉」とは、ラブロフ外相が最近のウラジミール州青年フォーラムで演説した時の発言である。

 各国の首脳や閣僚は、国連総会でプーチン大統領のどのような演説を聞くことになるのだろうか。有名な「ミュンヘン演説」のリメイクだろうか。ミュンヘン演説のデジャヴは、世界を行き詰らせるだけの後ろ向きな動きだと指摘する声もある。

 ロシアは原油安を筆頭とした要因で、かなり深刻な経済危機を経験中。おまけに政治的に孤立状態にある。プーチン大統領個人にいたっては、G7の首脳から極めて不利な疎外も受けている。

 ロシアが世界の舞台で上昇しているというよりも、むしろ下降していることを示す証拠はたくさんある。それはアメリカがオバマ大統領とプーチン大統領のニューヨークでの非公式会談の調整をあからさまに拒み、ロシア政府へのシグナルに関するラブロフ外相の発言に否定の意志を明示したこと、中国が少なくとも中期的見通しにおいて、ロシア産ガスを提案価格で輸入することを嫌がり、「ロシアの東方転換」の効果的な実現への望みに明るい光を灯してはくれなかったこと、最もロシア寄りの同盟国であるベラルーシとの関係があやしくなってきていること。

 「ルカシェンコ大統領はロシアにそっぽを向いた」との見出しの記事を、ロシアの新聞「ガゼタ・ル」が先月掲載した。ベラルーシで21年間政権トップの座についているルカシェンコ大統領にとって初めて、大統領選の時期が国内の深刻な経済危機と重なってしまった。以前のスローガン「強く繁栄するベラルーシのために」は、「独立したベラルーシの未来のために」に替わっている。ルカシェンコ大統領は明らかに、ロシアからの真の独立を示唆している。

 ロシアの同盟国が事実上世界に残っていないという条件において、プーチン大統領がすべての問題をアメリカの支配、対話拒否、制裁政策の恣意的な利用によってのみ引き起こされたものと考え、演説の中でアメリカを非難しながら、いつもの威厳ある呼びかけを世界に行うことは、はたして妥当だろうか。

 プーチン大統領が他の道を進み、人類に立ちはだかる多数の差し迫った問題の解決について、斬新な観点を世界に示すことを願う。

 

*「Russia Direct」より転載