米国は、ロシアへの制裁圧力を強化しつづけており、しかも、ウクライナにおける危機ばかりでなく大量破壊兵器不拡散の問題も、そのための口実として用いられている。とくに、イラン、シリア、北朝鮮へミサイル技術を提供しているとして、ロシアの軍産複合体の大手企業やミサイルおよび航空機のメーカーが、思いがけず制裁の対象となった。観測筋は、それらの会社はかねてから不拡散のルールに違反している疑いがあったのに今になってそれを追及されたのはなぜか、と首を傾げる。
ロシア国家会議(連邦議会下院)・国防委員会のメンバーであるフランツ・クリンツェヴィチ氏(与党「統一ロシア」所属)は、ロシアのメディアグループ「ロシア・トゥデイ」にこう語った。「ロシア企業に対する新たな制裁の導入は、対露関係の悪化へ向けた米国の戦略的路線の延長線上にある。イラン、北朝鮮、シリアとこれらの会社の何らかの関係についての指摘は、単なるこじつけにすぎない」
アメリカ商務省は、新たな個人および法人は、それらについての情報が今になって現れたことに関連して制裁リストへ加えられた、と声明した。しかし、一連の専門家は、今回の制裁拡大を米国の長期的な反露路線の一部とみなしている。
ロシア外務省付属モスクワ国際関係大学・国際問題応用分析講座・上級講師のイーゴリ・イストミン氏は、こう指摘する。「採られた決定を説明する原因として、少なくとも二つのことが挙げられる。第一に、EUが、このほど対露制裁を延長しており、この時点での米国のパラレルな行動は、同盟国を支援する措置と映る。第二に、ロシア連邦会議(連邦議会上院)のヴァレンチナ・マトヴィエンコ議長への査証発給をめぐる最近のスキャンダルに照らして、露米間のより幅広い外交上の対決の場が開かれつつある」
アリゾナ大学の政治学の教授トーマス・ヴォルギー氏は、ロシアNOWへのコメントでこう述べた。「今回の行動は、ウクライナにおける動きを活発化し続けるロシアに対するEUおよび米国の共通の制裁政策の延長線上にある。それらは、新たな反露政策とみなされるべきではない」
ヴォルジー氏は、米国にとっての危険性という観点からロシアをイスラム国やエボラウィルスと同一視すべきである、とは考えておらず、こう語る。「アルカイダやイスラム国といった国際的テロ組織およびイランと北朝鮮をはじめとする一連の国家を含めて、米国の安全にとっての一連の深刻な脅威が存在している。ウクライナにおける行動および欧州内のNATOとの境界における動きの活発化ゆえにそのリストへ加えられたロシアは、実際において、そのリストのほかのものたちが及ぼしているような最高度の脅威とはなっていない」
カーネギー財団の評議会の米国グローバル協力プログラムの責任者デイビット・スピーディー氏は、ロシアNOWへのコメントでこう指摘する。「生じた状況において最も悲しいのは、オバマ政権によるロシアに関する誇張した表現の利用、および、アメリカのメディアにおけるプーチン大統領の似つかわしくないイメージである。現在の反露的レトリックは、実際において、冷戦の最も緊張した時期よりもひどい」
トーマス・ヴォルジー氏は、「近く露米関係が改善される希望はあるか」との問いに楽観的に応え、こう述べた。「もちろん!一連の意見の相違にもかかわらず、露米間の協力は続いている。イランの核プログラムに関する合意達成が、その一例だ」
デイビット・スピーディー氏は、こう語る。「私は、近い将来に両国関係が改善されるための何らかの場を見いだしたい。それは、なにも難しいことではなく、たとえば、バルト海、黒海における軍事演習やウクライナについて、首脳レベルの対話が再開され、ミンスク合意が見直され強化されるはず」
イーゴリ・イストミン氏は、こう指摘する。「露米間の関係における危機の深刻さをことさら強調すべきではない。双方のレトリックは熾烈を極め、双方とも相手を陥れようとしているが、国益が一致する重要な問題に関しては、折り合いをつける能力を見事に保っている。それは、イラン問題でもシリア問題でもその他多くの問題でも、発揮されている。それゆえ、われわれには、全面的で包括的な対決というものは見られない」
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。