プーチンが世界の新秩序構築を提案

ロイター通信

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ロシアのプーチン大統領は、西側諸国に対して、一極世界の理念を放棄し他国との政治対話を始めるように呼びかけた。

 ロシアのプーチン大統領は、国際社会に対して、紛争を防止するため、新たな世界秩序を構築するように呼びかけるとともに、今日の諸問題の責任は、主にアメリカにあると指摘した。プーチン大統領によると、米国の政策のせいで、世界の安全保障システムは崩壊するに至り、中東諸国およびウクライナで政変が相次いだという。プーチン大統領は、ロシアの立場が不変であることを確認し、山積した問題の解決するために西側に対話を呼びかけたと、ロシアの専門家らはみる。

 10月24日、黒海沿岸の保養地ソチで、世界数十ヶ国からロシア研究家が集うバルダイ国際会議が開かれ、その席でプーチン大統領は、世界の安全保障システムを崩壊させたとして米国を非難し、優先課題として、世界及び各国内での紛争を防止するための、新たな国際関係の構築を挙げた。

 大統領によれば、ロシアは、制裁やウクライナをめぐる西側諸国との対立にもかかわらず、外交的に孤立するつもりはさらさらなく、対話と経済関係の正常化に向けて、開かれた立場をとっている。またロシアは核軍縮についても突っ込んだ話し合いを行う用意があるという。 

 

米国の政策と新世界秩序 

 プーチン大統領によれば、一極世界のシステムは、この覇権国家には持ちこたえられないことが明らかになった。システムの構造は不安定で、地域紛争、テロ、麻薬売買、過激主義、ショービニズム、ナショナリズムなどの脅威に対し無力であることをさらけ出した。「本質的に、一極世界は、他者と他国に対する独裁主義を容認するものだ」

 また、世界および地域の現在の安全保障システムが、大きな衝撃に耐えられる保証はないと、プーチン大統領は指摘した。

 「かつては、諸大国のゲームと行動のルールを定める新たな世界秩序というものは、大戦争の結果として構築された。戦勝国がヤルタ、ポツダムで話し合い、国境の不可侵、民族自決、国際連合創設などの相互関係の新ルールを決めた」。アレクサンドル・コノバロフ戦略評価研究所所長はこう歴史を振り返る。

 ところが、コノバロフ氏によれば、新システムの必要性はかつてないほど高まっているのに、世界秩序を決定するような大戦争は起きていない。「冷戦は終わったが、平和条約が結ばれたわけではないし、相互関係の原則で合意をみたわけでもない。そういうルールを構築せねばならないのに、どうやったら新世界秩序が決められるのか誰も知らない」。こうコノバロフ氏は強調した。

 

ウクライナとこれから起き得る紛争 

  「ミュンヘン演説(2007年)と今回のそれとの違いは、2007年には、プーチン大統領は米国の政策に抗議しただけだったということだ。ところが今やロシアは、ウクライナとシリアでの米国の政策に積極的に対決している。今回の演説の主なテーゼは、一極世界がロシアの国益を考慮していないということ、そしてロシアは枢要な問題では自分の立場を守るということだった」。カーネギー国際平和財団モスクワ・センター所長のドミトリー・トレーニン所長(→原文では副所長となっていますが、確認したところ所長です)はこう述べた。

 ロシアは自ら覇権国家になるつもりも、世界の運命の決定者になるつもりもないが、自分の利益は守り抜くつもりだ、とトレーニン氏は指摘した。

 プーチン大統領はソチでの演説で、現在、大国の関わる――直接でなくとも間接的に関与する――新たな地域紛争の可能性が高まっていると警告した。「その際、リスク要因になるのは、伝統的な国家間の対立だけではなく、個々の国の内部における不安定さでもある。とくに、大国の地政学的利害が交錯する国が問題だ」。大統領はこう述べた。

 大統領によれば、ウクライナはまさにこうした性格をもつ紛争地帯になってしまった。ロシアは、ウクライナのEU(欧州連合)との連合協定調印という“楽屋裏”での決定が拙速であり、それが、最大の経済上のパートナーであるロシアをはじめとする国々にとって深刻な危険を孕んでいることを指摘してきた――。こうプーチン大統領は強調した。

 「しかし、我々の意見は洟も引っかけられなかった。お呼びじゃないよ、という訳だ。それで、困難ではあるが――この点を強調したいのだが――まともな文明国の対話の代わりに、事態をクーデターにまで持っていってしまった。国をカオスにし、経済と社会制度を破壊し、巨大な犠牲をともなう内戦の渦に引き込んでしまった」。プーチン大統領は語気を強めた。

 「どうやら、際限なく“色の革命”を作り出す者たちは、自分のことを天才的芸術家だとでも思っているようで、どうにも立ち止まることができず、結果をまったく考慮していない」。大統領はこう付け加えた。

 

ターニングポイント 

 政治学者ドミトリー・バービチ氏は、ロシアNOWへのインタビューのなかで、次のように指摘した。プーチン大統領の演説の骨子は、もはやロシアは90年代のように振舞う、つまり西側諸国の過ちに目をつぶることはできないという点にある、と。「以前ロシアは、西側は善なる力であり、いくつかのミスは見逃してもいいとの前提に立っていた。ところが今や、ロシアの安全そのものが脅威にさらされているのだ」

 バービチ氏の意見では、ロシアは、イスラム過激主義者の手を借りてシリアのアサド政権を転覆しようとする不様な試みと、ウクライナの政変の後で、然るべき対応をとらざるを得なくなった。しかも、プーチン大統領は、自分の立場を分からせようと粘り強い努力を続けており、意見を異にする者たちに、彼らの利益と損失(例えば経済的な損害)を説いている。

 「だが、米国でもEUでも、プーチンの意見は聞かれないだろう。彼の世界の新秩序構築に向けての呼びかけにも聞く耳をもつまい。しかも、今回の演説では、聴衆の選択が正しかったかどうか、私には確信がもてない。バルダイ国際会議は、その80%がアメリカナイズされた国の代表者だからだ。礼を失わない真っ当な対話の可能性は、ブッシュ大統領の時代にもう尽きている。その最初のシグナルが2008年の南オセチア紛争だった」。こうバービチ氏は嘆く。

 とはいえ、同氏によると、プーチン大統領の世界の新秩序構築への呼びかけは、中国、インド、ブラジル、南アフリカなど、やはり米国の政策で安全が脅かされている国でなら、傾聴される可能性があるだろうという。