独立調査機関を「外国エージェント」と認定

権利擁護センター「メモリアル」=AP通信

権利擁護センター「メモリアル」=AP通信

外国から資金提供を受けているロシアの独立系外交研究機関は、人権擁護組織と同様、ロシア連邦司法省の外国エージェント登記簿に登録される可能性がある。独立した分析および人権活動はロシアに必要で、その活動のための条件整備が重要だと、専門家は考える。

 「アゴラ」協会、「社会裁定」基金、権利擁護センター「メモリアル」、社会組織「エコ保護・女性評議会」、独立非営利団体(NPO)「憲法的権利・自由のための法律家」の5団体が7月、司法省の外国エージェント登記簿に強制的に登録され、外交分野の調査を長年行ってきた政治研究機関「PIRセンター」も9月に登録された。PIRセンターの関係者にとっても、その活動を知るロシアの政治学者にとっても、この決定は予想外だった。

 PIRセンターはロシア連邦外務省に5月、外交研究支援基金創設に関する提案を提出。内容はこの分野で活動するNPOへの資金提供を外国からロシアに替えるというもの。

 ロシアにはすでに、ロシア連邦外務省が支援するA.M.ゴルチャコフ公共外交支援基金が存在している。基金は国際関係において社会、文化、教育、科学プログラムを実現しながら、または他のNPOによるその実現を助成しながら、ロシアの外交利益のために活動している。活動が親国家的であるとして、しばしば基金は批判されている。

 PIRセンターのウラジーミル・オルロフ所長の考えはこうだ。「A.M.ゴルチャコフ公共外交支援基金および他のメカニズムは、独立系研究機関への全体支援をすることなく、特定プロジェクトを実現する。資金提供されたプロジェクトの具体的な外交結果への影響は追跡しない」。基金創設のアイデアは、他の研究NPOやロシアの政治学者も支持していた。

 アメリカ・ワシントンの世界利益センターの所長で、政治学者であるニコライ・ズロビン氏は、ロシアの独立研究機関の問題が、ロビイズムに関する詳細な法規定の不在にあると考える。「世界でロビイストは商業組織。NPOはロビイストとは異なり、外国の利益のために活動するわけではないため、外国から資金提供を受けていたとしても、税を免除される。法律では資金提供元よりも、活動の種類でわけることが重要」

 フョードル・ルキヤノフ外交・防衛政策会議議長は、国家も独立系研究センターの資金提供元になり得ると考える。「独立系機関、国家、外国の資金提供者の間で信頼関係を構築するために、どの当事者にとっても有利な共同調査プロジェクトを実施することもできる」

 

権利擁護の理論と実践 

 最初に外国エージェントと司法省に認定されたロシアの権利擁護NPOは、2012年11月にNPO法が施行された日から、そのような機関には該当しないこと、また自発的に登録する意思がないことを裁判所で示し続けている。

 9月に登記簿に登録された「社会裁定」基金のナタリヤ・タウビナ理事はこう話す。「諸外国のNPOと同じ条件で、外国の補助金のコンテストに応募している。これは世界共通の一般的な方法であり、外国から資金提供を受けるということイコール他の国のために活動するということにはならない。社会組織の中には、自分たちの独立性を守るために、一ヶ所から30%以上の資金を受け取らないという暗黙の原則がある」

 モスクワ市裁判所は今年9月、ロシア連邦構成主体の選挙監視を行い、登記簿に登録された「ゴロス」協会を、外国エージェントではないとする決定を下した。「外国エージェント登記簿からの除外手続きは一切法律で定められていないため、裁判所の決定があったにもかかわらず、登録されたままになっている」と、「有権者権利保護運動『ゴロス』」会議のグリゴリー・メルコニヤンツ共同議長は話す。

 司法省は10日、ロシア連邦最高裁判所に、権利擁護センター「メモリアル」の解散を求める訴えを起こした。その理由について、司法省は伝えていない。メモリアル会議のアレクサンドル・チェルカソフ議長は、ロシアNOWの取材に対し、「政治的な決定」と話し、こう続けた。「国家は社会組織の活動を干渉したり、助成金でそれをコントロールしたりすべきでない」

 

外国人は資金提供に消極的に 

 ロシアNOWが調査を行った研究機関および権利保護組織の職員は、NPO法によって外国人があまり資金提供をしなくなったと口をそろえる。「外国人は、遅かれ早かれロシアのすべてのNPOが活動を停止すると考えているため、わざわざ資金提供しようとしない」

 タウビナ理事は、登記簿に登録された後、外国人の資金提供者だけでなく、ロシアの機関との活動も難しくなったとロシアNOWに話した。「ロシアの地方で予審判事育成を行ってきたが、現在はそれをさせてもらえない」

 ロシア連邦最高検察庁は、独立社会研究センター「レバダ」も調査し、外国の資金を発見した。今のところ、登記簿には登録されていない。他に「外国機関」と認定される可能性があるのは、モスクワ・カーネギー・センター、ロシア政治科学協会、「新ユーラシア」基金、ロシア国際研究協会、ロシア経済学院、ロシア科学アカデミー社会学研究所など。

  • NPO「有権者権利保護非営利組織協会『ゴロス』」は選挙の監視を行っている。創設は2000年。昨年7月に「外国エージェント」と認定され、関係者が新たな組織「有権者権利保護運動『ゴロス』」を創設した。
  • NPO「国際歴史・啓蒙・権利擁護・慈善団体『メモリアル』」は、ソ連の政治的抑圧の調査および啓蒙・権利保護の活動を行っている。創設は1989年。昨年7月に司法省が外国エージェント登記簿に登録した。
  • NPO「社会裁定」はロシアの司法当局によって不当な扱いを受けた市民に、法的な権利保護支援を行っている。創設は2004年。今年9月に登記簿に登録された。
  • 「レバダ・センター」はロシア最大の独立機関で、社会学的調査およびマーケティング調査などを独自に、また依頼に応じて行っている。創設は1987年。ロシアの社会学者ユーリ・レバダ(1930~2006)の名前がついている。

 

 2012年に施行されたNPO法(通称「外国エージェント法」)は、外国から資金提供を受けながら政治活動を行っているNPOを「外国エージェント」と位置付け、特別な登記簿への登録を義務付けている。外国エージェントとなるNPOは、インターネットやマスメディアでの配信資料に、その立場を明記しなければならない。