緊迫する香港情勢

AFP/East News撮影

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 コメルサント紙は、こう伝えている。「傘の革命」と呼ばれる市民の抗議活動は、「中華世界」の統一と偉大な中国の建設を自らの戦略的課題と位置づけた中国当局にとって重大な挑戦となりつつある。ロシア科学アカデミー・東洋学研究所・東南アジア・オーストラリア・オセアニア・センターのドミトリー・モシャコフ所長は、こう語る。

 「イギリスの影響下で形成された香港の政治文化は、共産主義の中国の政治文化とは大きく異なっています。ここでは、数十年にわたってリベラルな伝統が育まれているため、自由と西側の生活様式の問題は、香港の住民にとって中国の市民にとってよりもはるかに大きな価値を有しています。仮に中国当局が集会参加者たちの圧力に屈して選挙制度改革に乗り出すならば、北京にとって危険な事態が生じるでしょう。香港に続いて上海その他の中国の地域が同様の要求を掲げかねませんから。こうした状況のなかで、中国当局が選択する道は、大きな譲歩に出ることなく『傘の革命』の鎮静化を待つか、抗議が収まらないようなら『憲法に基づいた秩序をもたらす』ために武力を行使するか、のどちらかしかないでしょう」

 

 独立新聞は、こう伝えている。香港における抗議運動は、ロシアと中国をさらに接近させるかもしれない。中国では、非営利団体の活動をコントロールするロシアの方法を用いよという声が上がっているのだから。

 中国政府は、香港に作用を及ぼすことのないようにと外国の大国に釘を刺した。中国のメディアは、西側の市民団体が混乱を煽っている点を指摘している。中国は、米国議会の資金供与を受けている全米民主主義基金(NED)がキエフのマイダンを支援したことを記憶している。現在、そのNEDは、香港で活動している。中国の専門家らによれば、目的は、明確であり、それは、そこでクーデターを起こすことである。共産党が発行する新聞「環球時報」は、「ロシアに学んで「外国のエージェント」に関する法律を採択する必要がある」と記している。モスクワ大学付属アジア・アフリカ諸国大学のアンドレイ・カルネーエフ副学長は、こう述べる。「中国では、多くの人が、香港における抗議活動を米国と関連づけており、米国による干渉があったものと見ています。けれども、ウクライナと香港の出来事が中国とロシアを近づけるとは思いません。このテーマを煽っているのはまさにアメリカ人であり、アメリカの評論家らはロシアや中国をしばしば敵国と呼んでいます。もちろん、中国はロシアに倣って体制を強化する、との見方を鵜呑みにすることはできません。クレムリンよりも中国共産党のほうが社会をコントロールするための梃子をたくさん有していますから、この面で中国がロシアに学ぶことは一つもありません」

 

 モスコフスキー・コムソモーレツ紙は、こう伝えている。中国は、選挙制度改革において香港市民に制限を加えることで事を急ぎすぎてはいないだろうか。ロシア科学アカデミー・極東研究所・政治調査予想センターのアンドレイ・ヴィノグラードフ所長は、こう語る。「香港の体制は50年間変更されないことが決定されたとき、行政区は中国に近づいていくべきであるという動きのベクトルは暗に了解されていました。抗議活動について申しますと、それは、政治状況や選挙に関連した香港における初めての抗議活動ではなく、最近では2000年代初めにも似たようなことが起きています。中国当局は、さまざまな梃子を用いて折り合いをつけることができます。香港には、中国との関係維持を望むさまざまなビジネス共同体があります。仮に大規模な混乱や衝突が起こるとしても、中国当局は、1989年のときのように状況をコントロールし続けることができるでしょう」

 

 ロシースカヤ・ガゼータ(ロシア新聞)は、こう伝えている。研究総合大学・経済高等学院・東洋学部長のアレクセイ・マースロフ氏は、こう語る。「現在、中国当局に必要なのは、賢明ですべてを理解する統治者という従来のイメージを損ねることなく迅速かつ厳格にこうした事態を解決する中国当局の能力を誰一人疑うことのないようにすることです。中国当局が危惧しているのは、状況が制御不能に陥りやはり特別行政区であるマカオといった中国南部の近隣の地域へ飛び火することです。ですから、中国当局は、もっぱらよく訓練されていて規律を守り厳格に行動できる警察の利用に留めようと必死なのです」

 

 エクスペルト誌は、こう伝えている。中国に詳しい政治学博士のセルゲイ・キジーマ氏は、こう述べる。「香港の文化的・社会的・政治的風土は、イギリス政府によって形成されました。たしかに住民は中国人ですが、かなり特殊な中国人です。彼らは、イギリスの国益に適ったイギリス政府の役人によって創られたまったく異なる文化的・社会的パラダイムで暮らし育ちました。そして、イギリスもしくは香港のイギリス学校で学び、さまざまな西側のリベラルで民主的な価値を具えた人になりました。香港の多くの住民は住民投票なしに香港が中国へ移管されたことを快く思っておらず、それをかなり屈辱的とみなす人もいます。彼らはこれまでずっとイギリス統治時代の体制に対するシンパシーを抱き、くすぶりつづけていた彼らの不満が今噴き出した形なのです。その一方で、中国当局のことも理解できますし、理解する必要があります。中国としては、西側寄りの住民による西側寄りの政治指導者の選択によって生じた深刻な問題が香港で起こってほしくないわけです。総じて、香港の住民には、自分たちが中国人であることに慣れて中国に根づいている価値を共有することを学ぶ必要がある、と言えましょう」