“INF条約違反”でロシアを非難する米国

Leonidl撮影

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米国は、ロシアは地上配備型中距離ミサイルを開発している、とみなしている。

 米国は、中短距離ミサイルの全廃に関する条約に違反しているとしてロシアを非難している。これについては、アメリカ政府のスポークスマンが、ワシントンでタス通信に明らかにし、「米国は、ロシア連邦がINF条約(中距離核戦力全廃条約)の枠内での自国の義務に違反している、との結論に至った」と述べた。

 またこのスポークスマンは、アメリカ政府の評価によれば、具体的に問題となっているのは「射程500~5500キロメートルの地上配備型巡航ミサイルの保有、製造、実験をしない義務、あるいは、そうしたミサイルのための発射装置の保有、製造をしない義務」の違反である、と説明した。同氏によれば、アメリカ側はこの問題を「きわめて重大なもの」とみており、「私たちは、これまでにもすでにロシアとこれについて協議しようと努めている」と述べた。

 実際、アメリカ政府は、これまでにもINF条約の規定の履行の問題に関する懸念を表明しており、たとえば、ローズ・ゴッテモラー米国務次官代行(軍備管理・国際安全保障担当)が、5月の記者会見でこのことを裏づけ、同氏は、その際、問題となっているのはロシアによる地上配備型巡航ミサイルの開発であることを明らかにした。

 ゴッテモラー氏は、どのようなミサイルが問題となっているかについては明らかにしなかったが、軍事・外交筋からの情報によれば、その非難は、INF条約には抵触しないものの、その戦術・技術的特性のより確かな検証のために地上でテストされたロシア製の海上配備型巡航ミサイルを対象としており、まさにこれが、アメリカ政府の不満を呼び起こした。

 

INF条約を回避する米国 

 こうしたアメリカ政府の非難に対して、ロシアの専門家らは、米国こそINF条約に再三にわたり違反して今も違反していると反論している。軍事学アカデミーの教授であるミドィハト・ヴィリダノフ少将によれば、アメリカは、軌道の中間部で戦略ミサイルを迎撃するためのミサイルGBI(Ground-Based Interceptor)の発射実験のたびにINF条約の規定に違反している。

 その際、ミドィハト・ヴィリダノフ氏は、標的ミサイルは理論的には地対空クラスであるにもかかわらず地対地クラスにそれを仕上げることは問題でない点を一度ならず強調してきた、ロシアの固形燃料戦略ミサイル「トーポリ」、「トーポリ-M」、「ヤールス」、「ブラーヴァ」の主任設計者であるユーリイ・ソロモーノフ氏の言葉を引き合いに出している。

 少将は、アメリカ側が、INF条約を回避して、ミサイル迎撃の課題完遂のために中距離および中間的距離の標的ミサイルを開発している点を強調している。また少将は、アメリカ側は、ロシア側の同意なしに「中間的距離」という用語を取り入れ、標的ミサイルおよびそれらの特徴を公けにせず、標的ミサイルの発射場所も明らかにせず、標的ミサイルの状態や移動に関する通知をしていない、と述べている。

 少将は、さらにこう続けた。結果として、アメリカは、INF条約に違反して、自国の迎撃ミサイルのテストのために新たな中距離ミサイルを創出した。これによって、アメリカは、ほぼ22回の上首尾なミサイル迎撃を実施し、「スタンダード-3」型の迎撃ミサイルを配備し、このミサイルを装備した地上配備型ミサイル迎撃システム・イージスをルーマニアに展開することが可能となった。

 

専門家らは条約の遵守を監視しなくてはならない 

 ロシア科学アカデミー・世界経済国際関係研究所・国際安全保障センター長であるロシア科学アカデミー会員のアレクセイ・アルバトフ氏は、他の露米条約と同様にINF条約の双方による遵守の問題は公開の協議に付されるべきではなく、そのためにそれらの条約の枠内で二国間委員会が存在しているのであり、条約履行のあらゆる詳細については専門家らが精査および決定を行うべきであるとしている。

 ちなみに、ソ連と米国の間のINF条約は、1987年12月8日にワシントンで調印された。

 INF条約に基づいて、ソ連は、その際、1752基のミサイル、845基の発射装置、3つのミサイルおよび発射装置製造施設、69のミサイル拠点を廃棄した。それらのミサイルには、射程が500キロ以下の480キロであったもののアメリカの強い要請により条約の対象となった現在の「イスカンデル-M」の「姉」にあたる戦術ミサイルシステム「オカー」(OTR-23)も含まれた。一方、米国は、859基の中短距離ミサイル、283基の発射装置、7つのミサイルおよび発射装置製造施設、9つのミサイル拠点を廃棄した。