“ソ連復活”はもうやめた?

ニヤズ・カリム

ニヤズ・カリム

ウクライナに対するロシアの示威的な通商措置や、バクーでのいつになく“温かな”ロシア・アゼルバイジャン首脳会談は、旧ソ連圏においてロシアが厳しい姿勢を取りつづけることを示しているが・・・。

 ウクライナとアルメニア(アゼルバイジャンと対立関係にある)は、ヴィリニュスでの東方パートナーシップ・サミットで、EU(欧州連合)とのより緊密な関係に関する協定に調印するとみられる。サミットが迫るにつれて、そうした協定が両国に対するロシアの姿勢に変化を招くというサインがいよいよあからさまになってきている。

 

低下する旧ソ連圏の戦略的意義 

 ロシアは、EUと異なり、これまで正式に「あっちか、こっちか」と詰問したことはない(EUはというと、欧州とロシアのどちらと統合するのかと、選択をつねに迫っている)。それころか、たえず両者が互いに補い合うものだと述べているにもかかわらず、状況は再びゼロサムゲームの様相を呈している。

 主要なプレーヤーにとって、旧ソ連圏の優先度は下降線を辿っている。同地域での地政学的・経済的な活況のピークは、2000年代の半ばから後半にかけて去り、もはや状況は一変している。

 

米国とEUの場合 

 アメリカは、思案を巡らせている。世界における混沌たる事態の推移にいささかまごついた米国の戦略策定者たちは、向こう数十年の優先事項に関する議論に着手している。

 世界におけるリーダーシップやプレゼンスへの志向は、もう過去のものだろう。優先順位を決めねばならず、米国にとってウクライナやグルジアが、5~7年ほど前のような魅力を取りもどすとは信じがたい。中央アジアに対する関心も、とくにアフガニスタンからの撤退後は、無限とはいえない。

 EUはといえば、自ら拡大することも、東方への拡大に莫大な財源を費やすことも考えていない。

 

ロシアは表向きは統合だが 

 ロシアは、おそらく、もっとも興味深いケースといえよう。

 正式の優先事項は、関税同盟の強化およびそれを基盤としたユーラシア経済連合の創出だ。外交も経済政策もまさにこれを目指しており、すべての旧ソ連諸国に参加を呼びかけている。

 ウクライナには、EUとの自由貿易圏に関する踏み込んだ協定に調印する場合には、多大な損失を被ると公然と仄めかし、アルメニアには、EUとの連携に関する文書に調印すれば、緊密な関係に影を落とすと警告し、モルドバ(EUとの協定に仮調印する見通し)にも、「まだ俺はお前に関心をもっているよ」と時たま念押ししている。

 

実は方向が定まらないロシア 

 とはいえ、ロシアにしても、どういったデザインが必要なのかまだ十分に認識していない。

 5年前に比べると、なんとしてもできるだけ多くの旧ソ連邦構成共和国を統合させるという意欲は衰えた。もっと正確にいえば、最初に統合ありきといった“先験的な”価値が、損得勘定に場所を譲っている。何が得で損か、骨折り損のくたびれ儲けではないか、損失が利得を上回らないか、といった計算に。

 ウクライナにしても、同国を関税同盟に参加させることの意義は明白だ、と思われかもしれないが、そう単純ではない。どんな連合でも議事妨害的な姿勢を見せて、細かい執拗な駆け引きを行うウクライナが、連合そのものの機能を麻痺させてしまう、というリスクがある。

 

中央アジアとカフカス 

 中央アジア諸国に安全を保障し、ましてや、ロシアとの連合に加盟させることには、大いに議論の余地がある。

 第一に、その代償が高くつくことだ。この点で、2010年にロシアがキルギスへの干渉を控えた事実は示唆的だ。

 第二に、とくに中央アジア諸国がユーラシア連合に加盟した場合、加盟国の国民にロシアの労働市場を開放するのか?障壁を構築すべきだという考えに世論は傾いている。

 南カフカスについていえば、グルジアとアゼルバイジャンは、どちらも様々な理由でロシアのプロジェクトへ参加しないことから、初めから蚊帳の外だ。

 アルメニアは、現実には、西方へも東方へも統合され得ない。それは、大国の地政学的競合のためではなく、自ら陥っている事実上の孤立のためだ。

 アルメニアには、ロシアを除いて、物理的安全の保証はなく、これからもないだろう。公平を期して述べれば、ロシアにしてもアルメニアから逃れることはできず、南カフカスの国(少なくとも北カフカスがあるので重要)でロシアにとって頼りになる同盟国は他にない。

 

目下はペンディング 

 ロシアは移行状態にあり、政策のすべての側面にそれが反映している。ポストソ連時代は終わったが、新たな時代はまだ見えず、試行錯誤の道を歩んでいる。

 ロシアは近隣諸国に対して、今のところ静観の構えだ。ロシア自ら望むものが定まるまで、すべての国をペンディングの状態に留めておきたい。

 なるほど、近隣諸国および、その西方(または東方)の潜在的パトロンたちは、それぞれ国内問題を抱えているので、静観しやすい状況ではある。どの国にしても、ウクライナ、アルメニア、タジキスタンなどのために、重大なリスクや費用を負おうとは思っていない。

 だが、ロシアの沈思黙考が長引けば、ロシアぬきで真空地帯が埋まり始めるだろう。単に自然の法則に則って。

 

 フョードル・ルキヤノフ、「世界政治の中のロシア」誌編集長、外交・防衛政策会議議長

 *元記事(露語)