ヤクーチアの寒さにもっとも強い馬(写真特集)

ライフ
アンナ・ソロキナ
 寒い地域のみに分布する品種で、外気がマイナス50℃だと調子がいいらしい。

 大きくて、がっしりしていて、ふさふさした長い立て髪を持っている。酷寒をものともしないヤクートの馬をご紹介しよう。

 公式的にこの品種の馬は1980年代後半になって発見されたが、科学者らは実際には数千年は存在していると見ている。この品種の馬は、アジアからやってきた古代の原始的な馬の直接の子孫で、姿形を変え、厳しい環境にも適応するようになったと考えられている。 

 現在、ヤクーチアでは、この品種には3つの亜種がある。1つは北方のオリジナル(地球で最も寒い場所の名をとって、ヴェルホヤンスク馬と呼ばれる)、やや小さめの南方の馬、そしてもう1つは、他の品種との掛け合わせである南方タイプの大きめの馬である。 

 平均的なヤクートの馬の体高は140センチから145センチしかないが、体重は0.5トンほどもある。毛の色は茶色、グレー、または白で、その他の色であることはほとんどない。ヤクートの馬は親しみやすく、穏やかで、好奇心に溢れている。とくに荒地に強い。

 ヤクートの気候は厳しい大陸性気候である。夏には気温は35℃に達するが、冬にはマイナス50℃まで下がる。この地域の北に位置するヴェルホヤンスクとオイミャコンではマイナス70℃という気温が記録されている。

 しかし、ヤクートの馬にとって、寒い気候はまったく問題ではない。豊かな下毛のおかげで、馬は過酷な冬でも戸外に立っていることができる。寒い日には、上着をかけてやれば凍えることもなく、仔馬でさえも夜でも外にいることができる。これらの馬はすぐに皮下脂肪を蓄えることができ、蹄のある毛皮のボールのようである。

 ヤクートの馬は飼育場でも飼われているが、非常に独立している。たとえば、彼らは1メートルもの積雪の下から、蹄を使って草を集め、自分の食べ物を得ることができる。雪がどれほど深いか想像できるだろうか?

 北方では、これらの馬なしに生活することなど想像もできない。都会から離れた道もない場所で、馬は地元の人々にとっての主要な移動手段なのである。SUVは雪道で動けなくなってしまうかもしれないが、馬にまたがって移動すれば、元気に目的地までたどり着ける。

 ヤクートのトナカイ飼育者もこの品種の馬を使っている。体は大きいが、この品種は深い雪の中でも、道無き道でも、かなり早く走ることができる。しかしながら、ヤクートの馬は作業用として使われていることもある。日中、これらの馬は最大100キロほど歩くことができ、300キロの荷物を運ぶことができる。伝統的に、ツンドラを長く旅する前には、馬は丸1日食事を摂らない。脂肪を落とし、早く走れるようにするためだ。

 ヤクートの馬は馬の中でも長寿の品種である。一般的に馬は20年ほどしか働けないが、この馬は25年から27年、活発に動くことができる。

 地元の人々は、馬の乳から「クムス」という伝統的な発酵飲料を作る。

 この品種はこの地域にしか生息しないとされている。南方の暖かい気候はこの馬には合わない。この品種はヤクーチアまたは極東でしか見ることができない。