ソ連の家族のところを訪ねたなら、屋根裏や棚に古新聞が積まれているのを見て驚くことだろう。なぜ古新聞を溜めておく必要があったのだろうか。実は、新聞は生活のさまざまな場面で使うことができ、しかもその50年前のライフハックのうちの多くは、いまでも活用することができるのである。
高層アパートの壁の質が素晴らしいものとは言えないことは周知の事実であるが、それでも快適な暮らしをしたい場合はどうすればいいのか。ソ連に壁を塗る習慣はなかった。 なぜなら、まずそのためには表面が平らでなければならないという問題があったからで、次に壁紙は追加的な保温材であったため、とくに冬には重要なものであったからである。
昔は、部屋のリフォームをするための特別な製品というものがなく、壁紙ももっともシンプルな紙製のものしかなかった。そこで役立ったのが新聞である。新聞はどんな表面にもしっかり貼ることができ、凸凹を隠し、壁紙を支えてくれるものであった。また床を糊で汚さぬよう、部屋には古い新聞を敷き詰めた。ちなみに、糊は片栗粉を自分たちで煮詰めて作った。
靴乾燥機は比較的新しい発明品で、ソ連市民は簡単に(かつエコ的に)こうした機器を使わずに靴を乾燥させていた。やり方は簡単。濡れた靴に古新聞を何枚か入れ、一晩置くだけである。新聞は、靴を変形させることなく、中の水分を吸い取ってくれる。ひどく濡れている場合は、時々新聞を入れ替えればよいだけである。
ピクニックに出かけたときや旅行先で、乾燥機がないときには、いまでもこの方法が役に立つ。
大好きなアヴォカドを柔らかくて熟した状態にするには古いアドバイスを試してみるといい。ただ新聞に包んで、涼しい場所に置いておくだけである。もちろん、ソ連時代には、そんなエキゾチックな食品を保管したわけではなく、ダーチャから持ち帰ったリンゴやナシだったのだが。小さなフルーツはいくつかまとめて新聞にくるんでもよいが、大きめのフルーツは1つずつ包んだ方がよい。
ソ連の小学生たちは誰でも、日本の折り紙を知っていた。しかし自分たちで作るのは鶴ではなく、実際に使えるものであった。たとえば、紙の帽子である。髪が汚れないよう、家の修繕のときにかぶったり、陽よけのためにビーチでかぶったりした。
春には紙の船を作り、湖や水たまりで、「海戦ごっこ」をした。
窓拭き用の洗剤がなくなってしまったらどうする?そう、新聞紙(できれば白黒の)を持って来れば良い。ソ連の主婦たちは、理想的な窓にする方法を知っていた。まず石鹸を溶かした水で洗い、きれいな水で流し、新聞紙で拭くのである。秘密は単純。新聞は水気をよく吸い、洗剤の跡を残さず、しかもピカピカにしてくれる。
少し変に思うかもしれないが、酷寒のときには新聞をウールの靴下の上に履いて、その上からブーツを履いた。新聞は水分を吸ってくれ、足を冷やさないのである。
新聞は屋外だけでなく、キッチンでも保温に役立つ。食べ物が入った鍋や器が冷めてしまわないよう、新聞で包んだのである。魔法瓶の効果が得られるのである。
かつて、大きくてふわふわした毛皮の帽子が流行したのを覚えているだろうか。そんな帽子は、型崩れしないよう、 本来なら丸い箱に入れて保管しなければならない。しかし、ソ連のライフハックを使えば、帽子に新聞を詰めておけばよいだけである。ブーツをしまうときにも同じように使える。
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