ロシア人女性のファッション

Anton Denisov/Sputnik, Pixabay
 ロシア人女性の美しさは世界中で賞賛されている。では、「あなたを見てると、とてもロシア人だとは信じられない」というのがロシア人女性にとっての最高の賛辞であるのはなぜなのか?

 ロシア人女性のショッピングはヨーロッパ人女性のそれとそれほど変わらない(ロシア人がショッピングにかける時間はヨーロッパ人女性のわずか2倍なだけである*)。またロシアには、普通のロシア人女性を「もっとロシア人女性らしく」してくれる秘密の店もなければ、秘密の美容院もない。 

 それとは逆に、ロシア人もZaraやH&M、Mangoの洋服を好み、Massimo Dutti(スペインの衣料品店)やYoox(イタリアのオンラインストア)で買い物をしている。またロシア人女性はアウトレットを好む傾向がある。なんといっても人気ブランドのアイテムを安く買うことができるからである(ロシア人は自分には買うことができなくても、高級ブランドが大好きである)。

 ではなぜロシア人女性はたいてい、見ただけで「ロシア人」だと分かるのだろうか?

 

要因① “ハデすぎる”

 ロシアに数年間暮らした経験のあるインドのウトカルシュ・バルドワジさんは言う。「キラキラしたものをどれだけ身につけているか、そしてそれを他の国の人と較べて、キラキラしたものが多ければ多いほどロシア人である可能性が高い。ジャケット、靴、なにもかもキラキラしている。顔も、メイクが濃すぎてキラキラしているほどです」。

 確かにロシア人は、メイクをするのにラメやパールで肌を明るく見せるハイライトを使うのが好きだし、ネイルのラインストーンはもちろん、スニーカーやカットソーもラインストーンが付いたものを好む。ロシアの女性は年齢を問わず(5歳であろうと50歳であろうと)、派手なファッションが好きなのである。

 昼のメイクは普通より少し濃いめ、指輪は普通よりかなり高め、控えめなペンダントの代わりに大きなネックレス、これがロシア風ファッションである。デザイナーのレーナ・カリンはロシア人は何につけ、「ちょっとやりすぎ」なのだと結論づける。

 オランダ人のニルスさん(29歳)は次のように話す。「わたしは数千人の女性がいても、その中からロシア人を見つけ出すことができます。ロシア人女性は、まつ毛に長いエクステをしていますから。蜘蛛みたいでちょっと怖いくらいです。それからロシア人女性は長い爪に赤いネイルをしています。そしてピンヒールですね。わたしは自分の彼女にはハイヒールを履いてもらいたくありません。なぜなら、半時間もすると、足が痛いと言い出すからです。でも公園に行くのに、そんなヒールを選んだのは彼女自身なのです」。

 そしてもう一つ、ロシア人にぴったりなもの、それは毛皮である。これこそロシア人風である。本物の毛皮でできたコート、毛皮の帽子、スカートについた毛皮の装飾・・・。「なぜなんでしょう。もしかして暖かいのでしょうか」とニルスさんは言う。たしかにそうであることもある。しかし必ずしもそれだけではない 

 

要因② “恥をかきたくない” 

 これはイタリアの友人がロシア人女性について言っていたことである。ロシア人女性がイタリアに休暇にやってきて、食中毒になった。それで病院に行くことになり、彼が彼女に必死に靴下を履かせているとき、彼女はお腹の痛みで体を半分に折り曲げながら、メイクポーチの中のファンデーションを取り出そうとしていたというのである。“顔色が悪いから”と、彼女は顔色が悪いなんて許せないとでもいうように言った。たとえそれが新鮮でないシーフードのせいだったとしても。

 ロシア人はいつでも、「お手入れ過剰」なのである。ロシア在住のアナ・ジョンソンさんはQuoraで、「髪を洗っていなかったり、爪が割れていたりすると、心の中でそういう人だと判断されてしまう」と指摘している。モスクワにはこうしたときのために、年中無休、24時間営業のネイルサロンがある。なぜならロシアの女性は昼も夜も仕事で忙しいからだ。アナは言う。「しかしロシアの女性は自分たちのお手入れを欠かしません。正しく言えば、できる限りのお手入れをすることは、ロシア人にとってまったく普通のことであり、日常生活の一部なのです」。                  

 そこで、ロシア人の間では、ロシア人女性は顔を整えて(ほとんどの場合、これは下地クリームをつけ、ファンデーションを塗り、チーク、マスカラ、それ以上のものを使ったメイクを意味する)からでないと人前には出ないと言う考え方が広まっているのだろう。ゴミ出しに行くにもメイクは欠かせない。おそらく、そのせいだろう。ロシアに住む外国人イワンさんは言う。「ロシアの女の子が正気を失うほど酔っ払ったり、吐いたりすることがない。イギリスではよくあることだけど」。彼らは絶対に恥をさらしたくないのである。

 

要因③ “美しくあるためなら、快適でなくても良い” 

 もうお分かりのように、ロシア人はユニセックスというものにそれほど価値を見出していない。女性らしさ(実際にはセクシーさと同様のもの)を強調することは、洋服選びの重要なポイントなのである。洋服がきつくて体が締め付けられたり、靴が窮屈だったりしても、それは重要ではないのである。ロシアには、「美には犠牲が必要」というのは有名な諺があるが、ロシアの女性はこの言葉の意味を文字通り理解しているのである。

 マンチェスター出身のチャールズさんはこう指摘する。「わたしはロシア人ではありませんが、モスクワやペテルブルグに何度も行きました。びっくりするのは、ロシアの女性が酷寒の中でも薄着をしていることです。イギリスのエセックスやニューキャッスルの女性のようにかなり厚着をしている人もいますが、かなりカッコよく、ファッショナブルに着こなしています」。

 そう、酷寒の中でミニスカートを履く。これは昔からのクラシカル・ファッションである。そして同時に流行のファッションでもある。ロシアの女性は持っている洋服に飽きたとき、新しい洋服を買う。古くなったときではない。また新しいコレクションが出たときにも洋服を買う。つまり新しい季節の到来以上にしょっちゅう買うことになる。

 ではなぜロシア人女性はそんな風におしゃれするのだろうか?理由の一つとされているのは、ロシアでは、男性の数が女性の数よりも1,070万人少ないということである。つまり女性は、男性を取り合わなければならない。しかもそのことを誰にも知られないようにしたいと考えている。また自分たちがロシア人であることを知られないようにしたいのである(外国にいる場合)。レーナ・カリンさんは言う。「ロシア人にとっての最高の褒め言葉は、ロシア人らしくないねというものです。しかしわたしにはなぜロシア人らしさを消そうとするのか理解できません。ロシア人だと分かることは何か悪いことでしょうか?〇〇らしいという特徴はいつでも評価されるものだと思うのです」。

 もしかすると、ロシア人らしい服装というのは、ロシアでしか通用しないからかもしれない。「あるとき、モスクワで、自動車にハイヒールを積んでおくのを忘れてしまって、会議にUGGを履いていく羽目になったことがあるの。もう死ぬかと思った」と回想するのは、デザイナーのアリョーナ・アフマドゥリナさん。「でも、仕事が忙しかった日の夜にフィレンツェに飛んだことがあるのですが、黒のかっちりしたスーツを着ていて、膝上12センチのスカートに、ピンヒールを履いていたんです。そのとき、すぐに小さなスーツケースを開けて、このヒールを脱いで、サブリナシューズに履き替えなきゃと思いました。だってものすごくカッコ悪いと思ったんです」。

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