欧州最深の鉱山の内側

ロマン・バイカロフ/ウラル鉱業冶金会社プレスサービス
  一般に、鉱山労働者の仕事はロマンを失ってしまったと考えられているかもしれない。だが労働者ら自身にとっては、この仕事は重要な意義に満ちており、先人たちの記憶の継承でもある。

 鉱石を採掘する坑道は、地下鉄のトンネルを思わせる。違いは電車の乗客の乗車時間が数分間であるのに対し、鉱山労働者は地下の闇と湿っぽい空気の中で一日働き続けるということだ。オレンブルグ州のガイという小さな町は、この産業で成り立っている。50年代末に、ユニークな鉱床を囲むように発展した町だ。今日ここでは、町の労働力の3分の1に当たる7500人が働いている。

  「ガイ(ハイ)」は、ウクライナ語で「林」という意味だ。まさしく白樺の林の中で、かつて最初の穴が掘られ、都市計画企業、ガイ鉱山精鉱コンビナート(GOK)の建設が決まった。コンビナートは、地下坑道、露天鉱坑、鉱山管理局、採掘された原石を砕き不純物を取り除く工場から成る。ここで採れる鉱石からは、銅、亜鉛、金、銀が精錬される。だが鉱山労働者が扱う岩石は原始状態であり、金属として精錬される前の石は、塵まみれの暗い灰色の石の塊にしか見えない。

鉱山の運び屋

  鉱山労働者の一シフトは約7時間続き、更衣室から始まる。作業服一式に含まれるのは、綿の下着、ウールの靴下、ジャケット、ズボン、ゴム製の長靴、そしてもちろんヘルメットだ。特別な部屋──ランプ室──で、鉱山労働者はヘルメット用ライトと救命装置を受け取る。事故が起きた際は、この蓋つきの金属製の缶が酸素を供給してくれる。缶の中には、炭酸ガスを無害化する薬剤の入った袋と、マスク、ホースが収納されており、労働者はこれを使って呼吸ができる。「通常の歩行であれば救命装置は60分間持つ。パニックにならないことが重要」とガイドラインには記されている。しかしそれ以上に重要なのは、初めから坑道の天井を非常に堅固にしておくことだろう。

  ヘルメットにライトを固定したら、会話する際に相手の目を見ないことを教わる。でないと相手の目を眩ませてしまうからだ。そしてランプにこそ、危険な状況で労働者の命を救う鍵がある。ランプには個人用発信機が取り付けられており、労働者がどこにいるか、救命隊がどこに向かっているかを管制官がリアルタイムで追跡している。

 地上との通信のために、信号システムが考案されている。例えば、もし労働者のランプが2度光れば、通信の必要があるということだ。このため、地下には電話が常設されている。

地下信号機

 ガイ鉱山精鉱コンビナートは、銅鉱石が採掘される鉱山の中では最も深いものの一つだ。作業は地下1075メートルで行われる。必要な採掘層までは、昇降機(扉のないエレベーター)で降りる。昇降機は秒速8メートルの速さで動き、目的の「階」に近づくと段々と減速する。とうとう薄暗い通路の迷宮へとやって来た。作業用車両までぬかるみを歩けば、なぜゴム長靴が必要なのかが分かるだろう。

  鉱山の道は、スムーズではないし、直線的でもない。約1000ある交差通路の総距離は、地上の道路220キロメートル分に相当する。通常の生活と同じく、地下の重機の移動は信号機で制御されている。「信号機は全自動で、労働者のライトの発信機から出る超音波に反応する」と地下坑道のエネルギー担当責任者、ウラジスラフ・サヴェリエフ氏は説明する。「もし赤信号なら、運転手は原則として窪みに車両を寄せ、対向車が通れるようにする。」

 鉱山用重機の修理と整備のため、990メートルの採鉱層には独自の洗車場と整備場がある。同じ深さのところに食事をとるための洞窟に似た空間がある。鉱山の天井の下に長い机と2脚の長椅子、電子レンジ、個々人のものを置くための簡素な作りの金属製の棚がある。弁当は各自で持ってくる。

女の仕事ではない

 ガイ鉱山の鉱物の埋蔵量は、事前の見積もりでは少なくとも40年分あるとされている。採掘作業は数段階から成る。まず岩石に穴を開け、火薬を詰め、爆破する。それから幅が長く背の低いショベルカーに似た採掘機で岩の塊を拾い上げ、原石を受け取り用機械まで運ぶ。その後ベルトコンベアに乗せられた鉱石は、そのまま地上に送り届けられる。

 一度のシフトで約500人が地下に降りる。大半は男性だ。原因は、ロシアに1974年から存在する、過酷な労働条件や有害な産業要因を理由に女性の就労が禁止されている職業のリストだ。地下での肉体労働は、リストの上部に言及されており、鉱山労働者の中に女性はなかなか見つからない。だが坑道では、実は女性も働いている。例えば、深さ685メートルのところにある爆発物保管庫の配給係だ。

 「私はどこか冒険心の強いところがあり、4年前に地下での仕事を提案された時、少なくとも好奇心で同意した」とタチアナ・バーエワさんは話す。「保管庫は全自動で、積み込み機もある。だからもちろん男性ほどの重労働ではない。とはいえ保管庫は大きくて、一日中走り回って凍える暇もない。」 一方地下「旅行者」は2時間の観光で凍えてしまうだろう。摂氏14度の薄ら寒い世界から出れば、体を温めたくなる。おそらくこのために、更衣室には風呂と温かい床が備え付けられている。

産業の先人たち

 鉱山でのシフトはコンビナートの出入り口で終わる。ここには画面があり、各労働者の一日の労働の成績が表示される。労働者らはグループや班で活動するが、彼らの間には暗黙のうちに、一番大きくノルマを超えられるのは誰か、という競争が存在している。社内全体の目標は、2021年までに年間採掘量を800万トンから900万トンにまで引き上げることだ。最良の労働者らは、班長の姓で知られ、呼ばれる。この伝統は、同様の労働功績がしばしば新聞に掲載されたソビエト時代の伝統を思わせる。 今日このテーマがメディアや大衆文化で取り上げられることは稀だが、労働者ら自身によれば、この競争はモチベーションを大いに高める。

 ガイ鉱山は、最大の製銅ホールディングの一つであるウラル採鉱冶金会社に原石を提供しており、採掘量ではノリリスク鉱山に次いでロシア第2位だ。だが、一番になりたいという願望や、給料が重要なのではない。給料はこの地域では十分高いと認識されており、しかもさまざまな指標に左右される。 「大半は、親に倣って意識的にここへ働きに来る」とアレクサンドル・ミーヒン総務副部長は話す。「どの家庭にも、この産業と関わりを持つ人間が見つかる。鉱山に偶然来る者はいない。」

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