ディアトロフ峠事件のトンデモ説3選

Dyatlov Group Memorial Fund
 黒魔術、地球外生命体との接触、スパイ合戦――ウラル山脈で9人が死亡した謎の事件をめぐって一時こんな説が唱えられていた。

 下の写真は冬にシベリアの山岳地帯を冒険しに行った9人のハイカー、「ディアトロフ班」を写したものだ。この冒険は彼らにとって最後のものとなる。全員が謎の死を遂げたのだ。

 ハイカーは定期的に写真を撮り日誌を付けていたにもかかわらず、事件は60年以上未解決のままである。

 公式の捜査報告書は「死因はハイカーが克服できなかった未知の強制力」と結論付けているが、その表現の曖昧さや捜査官が犯した多くの過失、事件の状況に関する不可解な事実が数々の陰謀説を呼んだ。最も広まっている説を3つ紹介しよう。

 

1. スパイ合戦が思わぬ結果に 

 1959年、世界は米ソ冷戦の真っ只中にあった。秘密主義がソ連市民の生活の隅々に及んでおり、病的なスパイ合戦が蔓延していた。この不安が、今日我々が思うほど根拠のないことではなかったとしたら? 

 疑心暗鬼に根拠があったと考える人々がいる。アレクセイ・ラキチンの名の下で執筆活動を行うある作家集団は、KGBと外国のスパイ(おそらくCIA)、ソ連の防諜機関がこの事件に絡んでいると考えている。 

 この説では、ハイカーらはハイキングを装って防諜活動を行っていたKGB職員らであり、ソ連における外国人スパイの作戦を頓挫させることが課題だった。また作家らは別の説として、ハイカーの一人が裏切り者で、本物の探検を利用して機密情報を外国の情報機関に漏らそうとしていたというものも提案している。 

 とんでもない仮説に思えるが、全く根拠がないわけではない。事件現場では、遺体が身に付けていた衣料品のうち3点から放射能が検出されたのだ。 

 「衣服は大気中に降り注いだ放射性の塵によって汚染されたか、放射性物質に触れた際に汚染された」と公式の報告書では述べられており、解釈の余地が残されている。

 スパイ合戦説の支持者らは、2人のハイカー、ゲオルギー・クリヴォニシチェンコとルステム・スロボディーンがチェリャビンスク-40(現オジョルスク)という街で雇用されていたことが事件の謎を解く鍵だと考えている。ここは冷戦中に兵器級のプルトニウムが生産されていた場所だ。

 事件現場で見つかった衣類の一部が放射能汚染されていた理由がこれで説明できることから、これは事件に諜報作戦(あるいは犯罪)が関係していたという説の根拠となった。スパイ合戦で結局9人が死亡し、それをKGBが巧妙に隠蔽したというのである。

 

2. 原住民の黒魔術 

 もう一つの広く知られた説が、ハイカーらは意図的に、あるいは意図せずに「聖なる山」を穢してしまい、原住民に殺害されたというものだ。

 遺体の発見時、捜査官らはマンシ人による虐殺を疑った。マンシ人は主に狩猟生活を営む原住民で、事件現場から100キロメートルほど離れた集落に暮らしていた。

 

 しかし捜査が進むにつれ、当局はこの可能性を排除した。

 「捜査では、1959年2月1日ないし2日に『高度1079』(当時の通称)の辺りにディアトロフ班のメンバー以外の人間がいたという証拠は見つからなかった。この場所から80~100キロメートル離れたところに暮らすマンシ人は旅行者に宿を提供したり支援をしたりとロシア人に対して友好的であることも確認された。班のメンバーが死亡した場所は冬場には狩りやトナカイの飼育に適さないと考えられていた」と公式の捜査報告書には記されている。

 公式の捜査官らはマンシ人が関与した可能性を排除しているが、陰謀説を唱える人々は彼らを謎の事件の中心に据えている。2019年、この地域に住むアナトリー・スチョーポチキンは、ハイカーらを殺したのはマンシ人だという自白を現地のマンシ人男性から得たと国内のテレビで語った。 

 「旅行者らは我々の聖地を侵した。これを知ったシャーマンらは狩人を集め彼らを追跡させた。ディアトロフ班のメンバーらが就寝するとシャーマンらがテントに向かい、ハイカーらに魔法をかけた。しばらくして彼らは皆死んだ。彼らが我々に誤ったことをすれば、我々はそれに悪意で応える」と匿名のマンシ人男性はスチョーポチキンに告白したという

 このテレビでの「自白」によって捜査が再開されることはなかったが、「シャーマンの黒魔術」説はディアトロフ事件の謎解きに熱中する人々を魅了した。

 

3. 地球外生命との接触

フレームNo.34

 しばしば「フレームNo.34」と呼ばれるこの写真は、質が悪いため捜査資料から除外された。UFO説の支持者はこの写真が除外されるべきではなかったと主張する。まさにこれがディアトロフ峠事件の真相を解き明かす唯一の鍵だったというのだ。 

 2019年、同時ハイカーの捜索に当たった捜索チームのメンバーだったボリス・スィチョーフに記者らがインタビューを行った。彼は捜索チームが「火球」と呼ぶ奇妙な現象を目撃したと話している。 

 「我々は十字路の近くで火球が浮かんでいるのを見た。満月に似ていたが、月ではなかった。それは十字路から浮上して我々から離れていった。明るい閃光は観察されなかった。そして地平線の向こうへ消えた。我々は皆呆気に取られた」とスィチョーフは話したと報じられている。 

ディアトロフ班の探索

 陰謀論者の多くは、そのような「火球」や「光の球」の目撃談が意図的に少なく報告されていると考えている。捜査官らがこの現象を説明できないか、あるいは実際にUFOが陰謀に関わっていることが隠蔽の理由だという。

ディアトロフ班の探索

 この説の支持者は、これらの「火球」が発した未知のエネルギーを含む光線がハイカーらを死に至らしめたと考えている。興味深いことに、この説の最も有名な支持者の一人が、ソビエト時代の元検察官レフ・イワノフだ。

ディアトロフ班の探索

 すべての地球外要因説支持者が、ディアトロフ峠事件の真犯人はUFOであると主張しているわけではない。隕石やソ連軍が極秘に発射したミサイルが同様の現象を起こした(さらに人々を死に至らしめた)可能性があると考える人もいる。

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