我々の生活の中では、「今何時?」と人に聞かざるを得ないような状況は、実際にはあまりないだろう。
たとえば、混雑した地下鉄に乗っていて、会議に遅れそうだが、自宅に時計を忘れたとしよう。でも、家に時計を忘れても、あなたはいつも電話を持っているだろう。が、その電話も忘れたとする。それでも、隣に立っている乗客たちは電話を持っているから、あなたはいつでも横目でそれを見ることができる。仮に、まわりの乗客があいにく本や新聞を読んでいても、モスクワ地下鉄の車内のモニターで時間が分かるから、あなたがやっと駅にたどり着いたときにあなたの友人がどのくらい怒っているかは容易に見当がつく。
それでもなおかつ、「今何時?」と聞かねばならない状況がいきなり生じたら、あなたは他の乗客にこう尋ねるべきだ。
最初の質問 «Кото́рый ча́с?» は、より丁寧な言い方で、外国語としてのロシア語の教科書のほとんどに出てくる。しかし、二つ目の言い方が最もひんぱんに使われるので、これを覚えたほうがいいだろう。
正確な時間をロシア語で言う場合(ここでは、「~時」に限定し、「~分」は度外視する)、1~12の数詞が用いられる。「時」にあたる単語「час」は、数詞の後で生格(英語の所有格に相当)の単数形または複数形になる。
表 1. 「~時」と言う場合、(2) に見るように、生格(英語の所有格に相当)が用いられる。
1日の時間帯(朝・昼・夕・夜)の区分。「~時」にこれを追加して、時間を明示する。
表 2. 1日の時間帯。数詞の後は生格 (2)
たいていの人は、時間を主観的に知覚する(働くお母さんにとって、12:00は一日のど真ん中だが、DJにとっては早朝だ)。にもかかわらず、ロシア語では、時刻と時間帯(朝・昼・夜)の関係がはっきり規定されている。
例:
08:00 – во́семь (часо́в)* утра́,
20:00 – во́семь (часо́в) ве́чера.
00:00 – двена́дцать (часо́в) но́чи,
12:00 – двена́дцать (часо́в) дня́
* 会話では «час»(時)は省略できる。
そして、もしあなたが地下鉄の駅に立っていて、友人を待ちくたびれていたら、ロシア語で彼にこう書き送ろう。
«Ты где?! Уже пять вечера!». (君、どこにいるんだ?!もう夕方5時だぞ!)
しかし、友人があなたのメッセージを読むかどうかは定かでない。たぶん、彼は自宅に電話を置き忘れ、地下鉄の車内で他の乗客にこう尋ねているからだ。
«Вы не подскажете, сколько времени?»(今何時か教えてくださいませんか?)
自分がどのくらい遅刻してあなたに迷惑をかけたか知るために…。