もしあなたがロシア語を学ぶ学生ならば、政府の助成金、奨学金を申請し、ロシア語の学習と母国語の教師の仕事を兼ねられるかも。トライしてみよう。
8年間モスクワに住んでいるイタリアのカリャリ市出身のフランチェスカ・ロチェさんもそうだったのだが、これは、あなたの滞在をサポートし、最初の経験を積むのに役立つ。彼女は初め、ロシア語学科の学生としてロシアを訪れた。そして、イタリアの大学を卒業してから、結局ここに移ることにした。
「私はロシアに戻ってからすぐに教え始めましたが、経験もイタリア語教師としての免状もなかった。でも、ネイティブスピーカーの需要があり、良い副業にもなると聞いたので、試してみることにしました。最初、プライベートレッスンをしてから、学校で教え、時とともに十分な経験を積み重ね、国立ロシア高等経済学院で教職に就くことができました」。フランチェスカさんはこう振り返る。
フランチェスカ・ロチェさん
ロシアでの学生インターンシップの経験は、ある日本人の助けにもなった。33歳の大畑晋悟さんは現在、ロシアで日本語学校「紅葉」を運営し、日本語を教えている。彼も政府の奨学金のおかげでロシアで勉強する機会を得た。
「モスクワに来てからは留学時代にもこちらの色々な語学学校で日本語を教えていましたので、しばらくは日本語を教える事がメインでした」と晋悟さんは言う。「留学時代はロシア人の学生と一緒に大学の講義も受けていましたので、日本語授業の時はサポートなどもしていました。言語学を勉強していた事が日本語を教える上でも役に立っています」
「ぜひアドバイスしたいのは、ロシアに来る前に基本的なロシア語を学んでおくこと。とても助けになります」。2009年からモスクワのセルバンテス文化センター(インスティトゥト・セルバンテス)のスペイン語教師であるルイス・ヤングアス・サントスさんは言う。もしあなたがネイティブスピーカーの教師として来る場合でも、この点については、多くの外国人教師の意見が一致する。ロシア語の基礎を身につけていれば、日常生活だけでなく、仕事でも役立つ。あなたの母語の特性をロシア人学生により効果的に説明できるようになる。
教授法、翻訳、通訳、言語学で専門的なバックグラウンドがあれば、大きなプラスになると、フランチェスカさんは言う。
大畑晋悟さん(中央)
「ネイティブスピーカーであることと、その言語の教師であることとは、話がぜんぜん違う。ネイティブは母国語の難しさについて考えることはありません。すべてが明らかだから。でも、ロシア語の知識があれば、ロシアの学生のよくやる間違いを予想できるので、大いに役立ちます」。こう彼女は説明する。
「教え方ですが、私は特に対照言語学、認知言語学の分野を専攻していたので、理論を理解するのは苦労しませんでした」。晋悟さんも自分の経験を話してくれた。「最も苦労するのは授業運営です。学習者一人一人の能力や興味になるべく応えられる事。なるほど!という知的満足感を得てもらえる為にはどのように教えればいいのかは毎回考えて反省しての繰り返しです」
ロシアは英語教師にとってはすばらしい所だとバージニア・ロビンソンさんは信じている。彼女の経験によれば、ロシアは売り手市場だという。
「ネイティブの教師を探している人の数は、ネイティブの数よりもずっと多い。ネイティブの教師は滅多にいないから、レッスンはかなり言い値になります。フリーランサーの通常の料金は、1時間当たり2〜4千ルーブル(約3600〜7200円)で、特別レッスンや生徒の家にこちらが出向く場合はもっと高くなる」
彼女はまた、いったん教師として評判が定まると、生徒のほうがあなたを見つけて、報酬をあなたに決めさせるようになると言う。
もちろん、外国で教えていると、カルチャーショックを受けることもあるのに気付くだろう。フランチェスカさんにとってなかなか慣れにくかったことは、ロシアの学生が、多くを要求する厳しい教師を好むということだった。一方、ルイスさんによると、ロシア人はトルコの学生と比較して(彼は以前トルコで教えていた)、答えに自信がないときは口が重くなりがちだという。
ロシアの子供たちは、勉強しすぎてしばしば疲れる傾向がある、とバージニアさんは指摘する。「彼らは、欧米の学生よりもはるかに多くのことを覚えさせられます。あなたが彼らに短い詩を暗記させると、ちゃんと覚えるでしょう」と彼女は語る。
「ロシア社会の特性により、男の子は、未熟で怠け者であることが許容されることがしばしばある――女の子にはそういうことは許されないのに。そして親は、私がアメリカで慣れていた親子の在り方に比べると、はるかに自分の子供たちにベタベタ執着する傾向があります。もっともそれは、私が教えていた社会層の特徴かもしれませんが」
晋悟さんの考えでは、外国で自分の母語を教えるのは何よりも文化交流への貢献であるという。
「ロシアで日本語を教える上で最も必要な事は、日本語を勉強してくれているロシア人への感謝と学習を通じて日本の様々な事を紹介するのですから、異文化交流の最前線にいるという自覚が必要です」。晋悟さんは指摘する。ロシアの学生たちの質問にどう答えるかで、あなたの国に対する彼らの見方を左右する。教師の良し悪しにより、あなたの国への彼らの興味が強まったり弱まったりするだろうという。
ロシアに来たことのない人にとっては、本当にロシアで教えたいのかどうか、その気持ちを確かめることが不可欠だ。ルイスさんがいみじくも述べたように、「それまで訪れたことのない場所に来ることは危険。すべての人がそのリスクを受け入れ、対処できるとはかぎりません」
バージニア・ロビンソンさん
だから、観光客としてこの国を訪れてみてはどうか。そして、あなたが本当にしばらくロシアに住みたいと思っているのかどうか瀬踏みしてみるのが役に立つだろう。
「私は多くの外国人がロシアにやって来ては去っていくのを見てきました」とヴァージニアさんは言う。「ここでうまくいく人もいるし、嫌いになる人もいる。あなたがロシアについてどう感じるか、そのいちばんの目安は、あなたの快適/退屈の好みでしょう。快適さがあなたにとってどれほど大事か考えてみましょう。そして退屈するのがどれだけ嫌かも考えること。あなたが退屈を嫌う以上に快適さが好きなら、ロシアはあなたには合わないでしょう。だが、あなたが退屈を嫌い、多少のカオスと不条理が気にならないなら、ロシアが気に入るでしょう。それは決して住みやすい場所ではないけれど、退屈することはないから」
*ロシアがどれだけあなたの人生を変え得るか気になりますか?ならば、イタリア出身のルチアさんのケースをご覧ください。体験者は語る、です。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。