あなたの母国語で何かしゃべろうと苦労している外国人を見ると、正直言って、いつも滑稽かもしれない。ただし、あなた自身が外国語を話そうとして、嘲笑の的になるまでの話だが。
2014年の「レヴァダ・センター」の世論調査によると、英語を話すロシア人の割合はたったの11%だった。こんなに少なくても、それでもロシア国内では最も人気のある外国語で、多数のロシア人が学校や大学で学んでいる。とはいえ、英語を頻繁に使う人は少ない。では、ロシア人が英語を学ぶときに何が問題になるのか?英語のどこが難しいか?
ロシア人が聞きとれない英語の発音
“is”や “there is”のような、ありふれたフレーズが、ロシア人にとっては頭痛の種になり得る。発音しにくい母音が混じっているので、舌がもつれてしまう。
ロシア語と英語のバイリンガルのマリア・スタンブラーさんは、以前、英語を教えていたが、こう説明する。「ロシア人には、“Tina Turner”や“happy birthday”のような単語やフレーズは、発音が難しい。いたるところに、ё[yo]とз [z]を挟んで発音してしまうので」
“s”と“th”の発音を混同する人もいる。だから、あなたと英語を話すロシア人が、“thinks”(考える)のかわりに“sinks”(沈む)と言ってもびっくりしないようにしよう。
音の長さもやっかいだと、英語教師のタマーラ・グリゴリエワさんは言う。「生徒はよく“ship”(船)と“sheep”(羊)を混同する」
他に発音が難しいものとしては、「例えば、“cat”(猫)に出てくる [ae]の音。顎をぐっと引いて発音すると、ちゃんと“幅広い音”になるんだけど…」とグリゴリエワさん。
「いわゆる“狭い音”では、 “led”(leadの過去形)の [e]など。これを聞き取り、発音できるようになるまでに、けっこう時間がかかることがある」
「生徒のなかには、物や場所を意味する英語の名詞を覚えるのをサボり、ロシア語の名詞を英語っぽく発音する子もいる。例えば、池(ponds)のかわりに、ロシア語のプルードに“s”をつけて“proods”とか、キノコを、ロシア語のグリブィにやはり“s”をつけて “greebs”とか」。スタンブラーさんはこんな例を挙げる。
英語のイントネーションも、ロシア語のそれとは違う。「ロシア人が自分の通常のイントネーションで英語を話そうとすると、外国人はそのロシア人が怒っていると誤解して、失礼だと思うことがある」とグリゴリエワさんは付け加えた。
時制と冠詞
多くのロシア人にとって、英語の文法は非常な恐怖だ。例えば、英語では、何らかの時制の文が、特定のコンテキストを含んでいるのに、その説明が必要でないことがあるが、これはロシア人には分かりにくい(例えば、英語では、現在形がスケジュールを意味する場合がある)。
また、ロシア人はしばしば英語の冠詞を忘れたり、ごっちゃにしたりする。ロシア語には冠詞なんてものがないので、その必要が理解できないのだ。
最大の難物が聞き取りであることに、広告代理店のディレクター、セルゲイ・マスロフさんも賛成する。「でも結局のところ、これは訓練の問題で、聞くのに費やした時間によるけど」
“狡猾な”動詞句
グリゴリエワさんが言うには、ロシア人にとって、本当に発音が難しいような英語の語句はないが、読解上のすべての規則を覚えるのは難題だという。しかも、規則よりも例外の数のほうが多いことがあるのだから、と。
「(いろんな意味がある)“set up”だけでも、えらくやっかいな動詞句が増えることになる」とグリゴリエワさん。「基本的な意味を学んでも、他にもたくさんの意味があるのを知るだけだから」
ロシアの学生にとって、もう一つの試練は、相手にとっても英語が外国語であるときだ。相手は、例えば、フランスなまり、ドイツなまりでしゃべる。おまけにたぶん、ロシアなまりまで入っているとすると、その英語は、フランケンシュタインみたいな、奇々怪々なものになるだろう。
もちろん、こういう場合も含めて、多くのロシア人はまだ次のルールに従っている。外国人の話し相手が理解してくれないときは、単に大声で話すか、叫ぶべし。なるほど、確かにそれはいつでも効き目がある。