オセチアのピローグ
オセチアパイはロシア人の間でも非常に人気があるので、どの街でも、このカフカス料理を作っている店を何百、いや何千と見つけることが出来る。
直径30〜40㌢の丸または三角形をした、中に様々なフィリングが入ったオセチアのピローグは、北オセチアで宗教的または国民の祝日に焼かれる。慶事があると、主婦たちは3つのピローグを用意する。それは神、太陽、そして大地を象徴している。一方、葬儀の食卓用では2種類しか焼かない。死者はもう太陽を見ることはないからである。
もっとも一般的なオセチアのピローグは、ひき肉の入ったフィジン、ビーツの入ったツァハラジン、チーズの入ったウァリバフ、ジャガイモの入ったカルトフジンである。
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魚パイ「チェリニャン」
家庭で簡単につくれるこの魚のパイは何百年も前から北の地に住む人々の栄養となっている。重要なのは、小骨が少ない魚を選ぶことだ。
コミ語で、「チェリ」とは「魚」の意味で、「ニャン」は「パン」を意味する。
コミ族は何百年もの間ロシア北方の地に居住しており、彼らの料理はその地方の気候や天然資源の影響を強く受けている。ロシア北方の大河は常に魚が豊富で、そのため魚のパイはここの地元料理の中で最上のものとされている。
チェリニャンの歴史は、コミ族がイースト菌を加えた生地を使って魚のパイを焼き始めた18世紀に遡る。この料理が広まったのはその独特のつくり方が理由だ。完全に内臓物を取り除いた魚を幾層にも重ねて丸めた生地の上にのせるのである。そして生地の端を持ち上げられ、軽くつままれ、中に詰められた魚の半分は姿を見えるようにする。こうすれば、見栄えが良くなるだけでなく、生地が一度にふたつの役割を果たすことになる-焼き皿としての役割と、副菜としての役割だ。
チェリニャン・パイ:極寒の北方ロシアでつくられる温かい美味しい魚のパイのつくり方(レシピ)
「クラヴェツ」:ロシアのマリ・エル共和国の心のこもったお祝いパイ
柔らかくてジューシーな肉を手間をかけずに楽しみたいなら、ヨーロッパ平原の最東部でお祝いの席でつくられるパイを試してみよう。
クラヴェツパイはヴォルガ川中流域にあるロシアのマリ・エル共和国の絶品パイである。
クラヴェツあるいはクィリャヴェツの名前の由来は、別のパイ、カラヴァエツだ。カラヴァイと同じように、円い形をしている。このパイは祝日、結婚式につくられ、親しい客人にふるまわれる。
中に入れられる餡は季節によって変わる。夏には子羊の肉、冬には豚肉か牛肉、秋には家禽肉が使われる。猟師はウサギの肉でクラヴェツを焼く。時には異なる種類の肉を混ぜ合わせて入れられることもある。家禽の骨付き肉が使われることもある。
クラヴェツの大きな特徴は、弱火で時間をかけて調理されること。オーブンで3〜4時間焼くと、肉、タマネギ、ひきわりは柔らかく、香り豊かになる。昔はキャベツの葉で生地を覆ったものだ。そうすれば、焦げるのを防ぐことができる。オーブンでパイを焼いているうちに生地はカリッとなるが、崩れることはない。
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フィチン
太陽の形をしたジューシーなパンは、カラチャイ・チェルケス、カバルダ・バルカル共和国の食事に欠かせないものである。バルカルのフィチンは薄くて平たく、カラチャイではたっぷりのフィリングを入れてふわふわに焼く。かつては宗教的な祝日に焼かれていたが、現在は家族の食卓にものぼる。
ロシアでは、結婚式には特別な料理を作る習慣がある。そんな料理の一つがクールニク。大きいドーム型をしたきれいな焼き色が艶やかな多層パイである。
伝統的なクールニクには、穀物(お米か蕎麦)、鶏肉、そしてマッシュルームという3つのフィリングがあるが、実際には多くのバリエーションがある。たとえば、穀物の代わりにジャガイモとマッシュルームとキャベツを入れたり、ときには鶏肉を入れずに作ることもある。ここではお米、マッシュルーム、卵をフィリングにした。鶏肉で作るよりも、柔らかく、少し軽く作ることができる。
タタールのパイ「ズール・ベリシュ」
タタール民族はロシアで2番目に人口が多い民族である。彼らはとてももてなし好きで、週末にはお互いの家を訪問し合い、さまざまな料理をふるまう。そこでしばしば登場するのが「大きなパイ」を意味するズール・ベリシュ。このパイは古来より伝わる伝統的な大きいパイで、パン種を入れていない生地もしくは、イースト生地に脂肪分の多い肉(羊肉、牛肉、ガチョウ肉、鴨肉など)と麦またはジャガイモを詰めて作られる。
近年、フィリングに使われるのは牛肉、ジャガイモ、玉ねぎだけである場合が多い。昔はいくつもの種類があり、ガチョウをつぶす機会があれば、親戚中が集まってガチョウのモツとジャガイモでズール・ベリシュを焼いた。フィリングには溶かしたバターとガチョウの脂肪が惜しみなく使われるので、お腹にはやや重いのだが、味はこの上なく良くなる。
今は、ズール・ベリシュは切り分けられてそれぞれの皿で食べるのであるが、昔は、真ん中に置かれたパイの周りを囲んで、スプーンですくって食べ、くつろいだ会話をのんびりと楽しんだ。
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カリンニク:古くから伝わるおばあちゃんお得意ロシアの田舎パイ
数百年前は、このベリーパイはキャベツの葉を使って焼かれたので独特の模様がついていた。今では、作り方も現代的になり、チョコレートとコンデンスミルクで覆われ、ナッツで飾られている。そしてそれは最高においしい!
このパイの名称「カリンニク」は、そのフィリング ―― ガマズミ(ロシア語でカリーナ)が由来だ。このベリーは、森林のあたりに生えており、誰でも摘みに行くことが出来る。時が移り、家庭の主婦たちはフィリングにリンゴを加えるようになっていった。
今では、リャザン州ノーヴォエ・ベレゾヴォ村の人々が先祖代々受け継いできたレシピが再発見されている。カリンニクはおばあちゃんやひいおばあちゃんが焼いたものだそうだ。今日、グルメ祭りなどのおかげで、この村に行かなくてもこのパイを味わうことができる。